閑話:マヨネーズと近道
いつもの日常――。いつもの帰り道――。
――ふと、考えに耽る。
(かごめかごめ)
曰く、和合の道。
曰く、争うのではなく調和を目指すもの。
最も強い技は、襲いかかってきた相手と友達になることさ。
――なんて。
もちろん、倫理や道徳はなにより大切だ。
その“楔”がなければ、武術はただの暴力でしかない。現代社会において、その“楔”を抜くことは許されない。
――でも――。
やはり、武術の本質は――“人を壊す技術”。
この磨き上げた技術は、どれだけ使えるのだろう。
どこまで通用するのだろう。
そう考えたことがない武術家なんて、本当に存在するのだろうか――。
――。
「――ユウキ!」
自分を呼ぶ声に、はっと我に返る。
「どうしたのユウキ? 浮かない顔して」
いけないいけない。
意識的に体幹を崩し――普通の女の子っぽく、くるっとまわって友人のほうを向いてみせた。
「いやぁ――……。
今日はなに食べて帰ろっかなー? って」
「あはは! ユウキってほんと食いしん坊だよね!
たしかお爺さんがすごい武術家で、ユウキもその武術やってるんだっけ?
そういうのやってると、やっぱお腹が空きやすいのかな?」
「あ――……そうなのかも?」
(籠の中の鳥は)
ピロン♪
バスから降りたタイミングでスマホが鳴る。
母からのメッセージだ。
『ユウキへ。
マヨネーズが切れたので帰りにコンビニで買ってきてください』
はぁ……と肩を落とす。
こんな山間の町ではコンビニもまばらだ。近くのコンビニは、ここからだと遠回りになっちゃうんだよなー。
(いついつ出やる)
ふと、風が吹いた――。
その流れを追うと、脇にある林道の入り口が目に入る。
――確か、ここを通ると近道だったような。
いままでほとんど通ったことのない道だ。
スイ、スイ……とスマホの地図アプリを起動しながら、私は林道の入り口に向かって歩きはじめた。




