表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/19

第11話 勇者ではなく兵士



 夜襲の勝利から二日。

 西部戦線の砦には活気が戻っていた。

 負傷者はいるが、士気は高い。兵士たちの顔には疲労よりも安堵が浮かんでいる。


 「灰原様!」「あの作戦は奇跡だ!」

 兵士たちは口々に衛士を称えた。

 だが、衛士は首を振る。

 「奇跡じゃない。準備と規律が勝たせた。……それを忘れるな」

 厳しい口調に、一瞬空気が固まったが、やがて兵士の一人が深く頷いた。

 「……はい!」


     ◇


 その夜、焚き火を囲んで小さな宴が開かれた。

 ライナスが酒瓶を掲げる。

 「衛士! お前は俺たちの命の恩人だ! 今日くらい飲め!」

 「戦場で酒は——」と言いかけた衛士に、イレーネが横から口を挟む。

 「まあまあ、乾杯の一口くらいなら許してあげたら? ね、隊長さん」

 からかうように笑う瞳は、どこか誇らしげでもあった。


 渋々杯を口に運ぶと、兵士たちの歓声が上がった。

 「飲んだぞ!」「勇者様万歳!」

 「勇者じゃない。兵士だ」

 そう訂正する声にも、兵士たちは笑って頷いた。

 「俺たちにとっては、兵士であろうが勇者であろうが関係ない。生き残らせてくれるのはあんただ」


 灰原は杯を置き、静かに火を見つめた。

 守るべきは肩書きではなく、人間だ。

 そう思えた瞬間だった。


     ◇


 翌朝。

 砦に王都からの伝令が到着した。

 「帝国の第二軍が北西の街に進軍中! 騎士団は増援として出陣せよ!」

 砦に緊張が走る。


 副団長レオニスが兵を集め、声を張り上げる。

 「次は正面からの戦だ! 我らの刃で帝国を退けるぞ!」

 兵士たちが鬨の声を上げる。その熱の中、視線が自然と灰原に集まった。

 「灰原殿! 次も共に!」

 「今度こそ俺たちが支える番だ!」


 衛士は短く頷いた。

 「……いいだろう。だが覚えておけ。勝利は血で買うものじゃない。頭で勝ち取るものだ」

 その言葉に、兵士たちは拳を握りしめた。


     ◇


 砦を出発する直前、イレーネが馬上で振り返る。

 「衛士。あんたがいると、不思議と勝てる気がする」

 「勝つんじゃない。生き残るんだ」

 そう言って前を見据える衛士の横顔を、イレーネは静かに見つめていた。


 陽光の下、西へ向かう騎士団の列。

 その背中には、確かな期待と希望が宿っていた。

 まだ、この戦場には光がある。


(第12話につづく)

非常にテンポが早いのでブックマーク推奨してます!

また初心者なため、感想やレビューなど頂けるととても励みになりますので何卒よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ