【第一話】元皇家の少女、地下洞窟で異形に遭遇し“揺らぎ”の力に目覚める《七律詩篇・AI改変版》
──その場所は、世界の裏側にぽっかりと空いた、巨大な地下洞窟だった。
赤黒い岩がむき出しになった壁、どこまでも続く湿った空気。そこは常識の届かぬ場所で、異質で、不気味だった。
「カチン……ガチンッ!」
金属がぶつかる音が反響し、火花が闇を照らす。その合間に、魔術の炸裂音、叫び声、うめき声が飛び交い、空間がじわじわと歪んでいくのが分かる。
けれど、最も恐ろしいのは──不意に訪れる静寂だった。
携帯魔導灯の灯りがゆらめき、壁に張りついた蛍光虫が微かに光る。だが、それだけだ。この空間に、他の明かりは存在しなかった。
ぽた……ぽた……。
天井から滴る水音。足元で濁った水たまりを踏み抜く音。
──おかしい。
わたしの五感は、確かに“ズレ”を感じ取っていた。光の届き方、空気の流れ、肌を撫でる冷気、すべてがほんの少しだけ……違う。
この異常な感覚──“揺らぎ”と呼ばれる、わたしの体質によるもの。
だが今、ここで感じるそれは、これまでとは段違いだった。
そして、予感はすぐに現実になる。
「アグニス! お前たちは下がれ! 今すぐ逃げろ!」
兄──リュカの叫びが、洞窟全体に響き渡った。
その視線の先には、黒い靄をまとい、輪郭すら曖昧な巨大な“何か”がいた。
「兄様、あれは……っ!」
口に出すのもためらわれるその存在は、言葉にできぬ恐怖を放っていた。
「レオン、アグニスを連れて行け! 絶対に……無事に帰れ!」
「兄さん!? そんな──!」
わたしが声を上げるより早く、レオンが肩を引き、現実へと引き戻してくる。
──だが、身体は動かない。
足がすくむ。目の前にいる仲間たちは倒れ、魔力の枯渇で立ち上がることもできない。
「動け……わたし……!」
必死に願うけれど、恐怖が全身を支配していた。
そのときだった。兄が放った最後の魔術──《紅蓮爆炎》が、巨大な魔力の奔流となって闇を裂いた。
ドン、と空間が揺れる。
熱が走る。音が消え、視界が一瞬白く塗り潰された──。
……そして、走った。
ただ、無我夢中で、振り返ることすらできず。
背後では、誰かが泣いていた。誰かが、もう動かなくなっていた。
“揺らぎ”の感覚はあった。確かにあったのに、何もできなかった。誰も、止められなかった。
「もっと、自分を信じていたら──」
そう思ってしまうことは、きっと弱さではない。けれど、それは悔しさだった。
胸の奥が、軋むように痛んだ。
……やがて、微かな光が、まぶたをなぞる。
わたしは、ゆっくりと目を開けた。
そこは、見慣れた天井の下──私室のベッドの上だった。
夢……だった?
いや、違う。心臓の鼓動が速い。あの洞窟の記憶が、耳の奥に残っている。
──炎のあとに漂う、灰の匂いが鼻をかすめる。
わたしは無意識に、拳を握り締めていた。
「トントン」
ノックの音がして、重厚な扉の向こうから声がした。
「おはようございます、アグニス様」
ロルフだった。幼い頃から親代わりとして仕えてくれた、我が家の執事。
「本日はノルスティア家との会談がございます。二度寝など、なさいませんように──」
彼らしい忠告を残し、ロルフは去っていった。
(……まったく。いつまで子ども扱いしてるのかしら)
それでも、いつも通りの朝が来たという事実が、ほんの少しだけ心を安らげた。
窓の外から差し込む光。朝靄とともに立ち昇る湯煙。硫黄の匂い。
──今日は、政務に戻らなければ。
わたしは軽く伸びをして、気を引き締めた。
AIにただぶち込んで作成した物です。構造などは変えてません