心に闇を飼っている
高校生なら誰もが、心に闇を飼っている。
いつ背中を指で突かれて落ちていってもおかしくないような深い闇が、心にとぐろを巻いている。
生きていたってしょうがない。
私は誰にも相手になんかされない。
誰も何も分かってくれない。
これほどに心が荒れているのに、誰も気づいてくれない。
悩みながら傷つきながら生きているのに、誰も気づいては、くれない。
それは底のない大きな闇で、もはや誰にも止めることなどできない。にっこりと笑顔を張り付けたその裏で、高校生なら誰しも、1人で闇を抱えて、ひっそりと奈落まで堕ちていく。
どうしてそうなるのか。何が不満なのか。何が足りないのか。
これほどに満ち足りた生活を与えているのに、これ以上何を望むのか。
大人たちはこぞってそう言う。
そんなのは贅沢だと。
だけど違うのだ。
私たちは何も、日常に対する不満があるわけじゃない。そんな軽々しいものではない。
それを分かろうとしているのかと、彼らには問いかけたい。考えたことはあるか。そもそも想像しようと思ったことはあるのか、と。
心に飼っている闇の正体はそれぞれによって違う。
それを誰かにさらけ出そうだなんてするわけがない。誰かを信じて、頼って、受け止めてもらおうだなんて、そんなことするわけがない。
「……そんなことしたって」
誰も何も、理解などしてくれないのだから。
共感など期待してはいけないのだから。
誰も私を守れない。
誰も私を受け入れられない。
何かあったら言ってね、いつでも力になるからね、遠慮せず何でも吐き出してね。
それが笑ってしまうほどに渇いた嘘であることは今さら言うことでもない。
そんなことできるはずもないのだ。
それくらいには、私たちの中にある闇は果てしなく深い。
私にだって、それはある。
思い切って人に打ち明ければ打ち明けるほどそれを後悔するような、大きな闇が。
その混沌の中に一縷の希望すらも期待しないような、複雑なしがらみが、私にも、ある。