表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

Re×vival(プロト版)

Re×vival(プロト版)

作者: きいろいの

短編作品です。

ティラノサウルスが喋る世界です。

レース題材だけどレースはしません。

登場キャラの出会いがメインです。

好評でしたら連載しようかな?

その時はレース描写入れるぞー!


晴天の日。学生達が大きなグラウンドで陸上競技をしていた。観客席の横にあるフェンスで人間より大きな観客が走る姿を見ていた。


「わぁ…速い…」


青い鱗を纏ったティラノサウルス。彼は近くのファームに生活している。レース用として育てられているがまだ小柄だ。名前はソラマメと呼ばれている。


「おいおい、そんなに人間観察が好きなのか?」


ファームの飼育員さんが声をかける。週に1回、ファームの中だけでなく外に出る事で人間との交流や生活を学べるので定期的に散歩をしている。


「だって、とっても楽しそうに走ってるんだもん」


ソラマメは鼻息を荒くして走っている選手を見ている。


「特にあの人!」


今戦闘に走っている選手にソラマメは夢中のようだ。余裕の笑顔を見せながら他の選手との差をつけゴールする。


「へぇ、学生さんの割にいいフォームをしてるんじゃねぇか」

「でしょでしょ?」


飼育員さんはソラマメの眼が普段より身輝いているのを見て笑う。と同時にアラームが鳴り響く。どうやら散歩の時間は終わりのようだ。


「そろそろ帰るぞー!散歩じゃなくて観戦だなこりゃ」


はーいと言いながらファームに帰るソラマメ。帰った後もファームの人たちや一緒に住んでいるティラノサウルスにも今日のことを楽しそうに話した。

中には「人間の陸上競技の実況に向いているんじゃないか?」と言われていた。





あれから約1年過ぎてもソラマメはグラウンドの陸上競技を見続けていた。彼が一推しの選手は渡海 勇人。楽しそうに走る姿に心を打たれたのだろう。勇人が走る400メートル競技は欠かさず観ている。周りの人間からは最初は珍しく思われたが、もう慣れてしまったようだ。飼育員さんも「観るだけなら1体だけでも大丈夫だろう」とソラマメだけで観ている事が増えた。

夏の大会が近い日、代表選手を決める為に集められた選手を見てソラマメは違和感を気づく。


「あれ……いない……」


渡海 勇人がいないのだ。前に見に来た時には彼はいたはずだ。なのにいない。憧れの人間らしき姿がグラウンド内には何処にもいないのだ。


「どうしたんだろう…あの人の走り好きなのに…?」


渡海 勇人を見に来たソラマメにとってはショックだ。今回は何か理由があって休んでいるのだろうと思いながらグラウンド内をまた見ようとすると


「やぁ、また観に来てくれたのかい?」


横の観客席から声がした。その声の方に目を向けると


「あっ!」


初めて聞いた声なので誰かと思ったが、間違いない。長袖長ズボンのジャージ姿であるが渡海 勇人だ。


「どうしたんだい?恐竜なのに鳥類のような顔をしてさ」


それはそうだ。憧れがこんなにも近くにいるんだから。…と見惚れている場合じゃない。聞きたいことがあるのだ。


「あの…どうしてグラウンドで走ってないんですか?」


渡海 勇人は少しため息をつきながら答えた。


「…走る必要はないからさ」


ソラマメにとっては予想外の答えに驚いてしまう。


「なんで?あなたの走り、僕は好きだったのに…だって楽しそうに走ってて…」


走る必要がない。この答えに納得のいくような理由が知りたかった。知るのは怖いが憧れが無くなるのがもっと怖かった。


「楽しそうに…見えてたのか…」


渡海 勇人は苦笑しながら話す。


「幻滅しちゃうかもしれないけどさ、俺は楽しそうに走ってなんかない。楽しそうに走ってたふりをしてたのさ」


楽しかったふり…?


「どういうこと…?」


陸上競技で汗を流していた彼の姿からかけ離れた答えに動揺する。


「どんな生き物にも限界がある。人間にもあって限界が来ると痛みがやめろと訴えかけてくるのさ。それを誤魔化すようにどんなに苦しくても楽しそうに走る…そうすればコーチやチームメイトも安心させられる。単純に俺の能力を試してトップを勝ち取りたかっただけさ」


流暢に話しながら長ズボンのジャージの裾を捲りシューズを脱ぎ出す。その脚は包帯や湿布を貼り付けて肌が見えないようになっていた。


「だけど…限界を超えてしまったんだ…身体がボロボロになり過ぎてコーチに叱られチームメイトにも迷惑をかけた。医者にもドクターストップを言い渡されて今じゃ雑用係さ」


さっきまで笑いながら話してたが、ソラマメには彼の表情が若干曇っていたように見えた。


「……うぅ」


小さい眼からうるうると涙が出てきた。


「なぜ泣いてるんだい?君は無関係だろう?」


突然の涙に渡海 勇人は驚く。


「だって…僕にとっては憧れだったのに…」

「幻滅させて悪かった」


渡海 勇人は申し訳なさそうに謝る。だが、ソラマメは


「違うよ!苦しくても努力してきたのは事実じゃないか!なのに…もう走れないと思うと…」


ソラマメの優しさからか渡海 勇人は優しく言葉を返す。


「別に二度と走れないわけではないさ。ただ、陸上界での評判は良くないだろうし、復帰はしないかな」


少し乾いた声で笑い出す。


「じゃあさ!」


突然大きな声で渡海 勇人に話し出す。


「僕のパートナーになってくれないか!」


渡海 勇人はキョトンとした顔をする。数秒固まった感覚だった。


「…は…ティラノサウルスのパートナー?」

「今からでも遅くないと思うよ!勉強は必要だけども、トレーナーとしての資格を取って僕のパートナーになってください!」


ティラノサウルスのレースにはパートナーの存在が絶対条件であり、トレーナーとして鍛えてあげたり、競技での作戦指示をしたり、レースのエントリーなど様々な仕事を行う。勿論認定試験やティラノサウルスとの信頼関係が必要になる。


「あなたに本当の走る楽しさを知って貰う上で王者になってみせるよ!」


我慢してまで楽しく走った彼の為に今度は僕が楽しく走る姿を見せる番だと思いをぶつける。


「何それ…ティラノサウルスでも面白い事を言うじゃないか!!」


両手で叩きながら爆笑し出す。


「……ダメですか?」


じーっと見つめるソラマメに渡海 勇人は自信満々に答える。


「いーや、やってやろうじゃないか!限界を越え過ぎない程度に鍛えさせて貰う覚悟があればの話だがね?」


ソラマメはその言葉に対して嬉しそうに返す


「君の走りが証明してる。努力して鍛えられるならそのつもりだよ!」

「ははっ」


渡海 勇人はベンチにあったスポーツバッグを持ちだす。


「じゃあとっとと退部届けを出して専門書でも買って来るかな」


背中を向けて観客席から立ち去り際にソラマメに言う。


「正式にパートナーになるまでに病気や故障なんてするんじゃないよ?」

「うん!」


ソラマメは渡海 勇人と大きな約束をした。



ファームに帰った後に飼育員さんに話すと「勝手に約束をするな」と怒られた。ファームマネージャーさんは「なかなか面白そうな子だね」と期待していた。

大きな約束をしたけど、僕はどちらかと言うとまだ脚が速いと自信はない。だけど、約束の日までにはある程度トレーニングして足腰には強くなろう。



そして数年後、僕らは王者の道のりへ進み出してみせる……



「…そういえば、僕の名前を教えてなかった…なってこったい……」

いかがだったでしょうか?

元ネタはティラノサウルスレースです。可愛い。

だけどもし本物のティラノサウルスでレースをしたら?という発想で生まれました。

本当はもっと熱血漢なキャラと無愛想なティラノのコンビも良いかなと思ってました。

前書きにも書きましたが、好評なら連載してもいいかもしれない。

または熱血漢×無愛想のコンビで始めても良いかも?

感想を下さいという高望みはしません。(本当は欲しいけど)

ちなみにタイトルの由来はRex(王者)、Re、×(かける→駆ける)、Revival(復活)です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ