第18話 1969 7.20 へ
なんとも言えない気分で僕は予めとっておいた宿に帰った。
そこには屋根の修復を終えたクヒィが疲れて横たわっていた。
「お疲れさん。どうだった、大工ってのは」
僕に気付いたクヒィがベッドの上でだらけながらも少し身なりを整える。
「ヴァル様、お帰りなさいませ。大工ってのもいいですねぇ。なにぶん壊したことしかなかったもんですから」
そうかい、とだけ言ったものの実はクヒィの話なんて聞かずに僕はベッドに倒れこむ。
ちなみに今回のお部屋はベッド二つが付いたワンルーム。
決して広いわけではないが、困りもしないと言った広さになっております。
それから少しの静寂が流れ、その後最初に口を開いたのはクヒィだった。
「ところでヴァル様。”魔獣”の討伐に行かれるのですよね」
「んん?あぁ、そうだけども」
すると不思議といった表情で首をかしげながらクヒィはさらに問いかけてくる。
「あの店長とお話になっている時から気になっていたのですが、ヴァル様は色々と秘密になさっていることが多いと思います。あ、いえ、それ自体が悪いというのではなくて、他人にほぼ素性を明かさないのに依頼などの《《お願い》》をお引き受けになるのかな、と」
なるほどねぇ。まぁ確かに僕は秘密主義ではあるし、他人に多くを語らず、関わらない様にしてる節がある割に今回みたいなボランティア活動みたいな依頼も引き受けるのは疑問に思っても仕方ないか。
「それで、何が言いたいんだぃ」
「はい…」
スッ、とクヒィが一呼吸して続ける。
「どうしてヴァル様はこのような旅をされているのですか?」
きました核心、僕の本質、旅の目的。
聞かれたからには答えてあげるが世の情け。
「……長くなるよ?」
「是非」
迫る真実 廻る信条 懸ける人生
掲げた想いとは……‼?




