星座の下で
あらすじをご確認ください。
よろしくお願いいたします。
m(_ _)m
僕は犬。
だけどこの家の末っ子だ。
僕にはお父さんとお母さんとお姉ちゃんとお兄ちゃんがいる。
でも今はお母さんと僕しかこの家にいない。
三人は遠い空のもっと先の『お星様』になって僕たちを見守っているんだって。
家にいればいいのに、人間のルールは不思議。
家に二人ぼっち。
お母さんは朝早く起きて僕のお世話をしてくれる。
僕は玄関のドアを開けられないし、ご飯も作れない。お母さんがいなきゃお腹がすいて大変なことになっちゃう。……お風呂は入らなくてもいいんだけどな。
朝、まだ星がキラキラしている時間にお母さんは僕を散歩に連れて行ってくれる。
「あれがお父さんかねぇ」
僕にはどの星か全然分からない。
最近、あんまり目が見えないんだ。
最初に星になったのはお父さん。
いつも散歩で僕と走っていたのに、段々走れなくなって、身体が細くなって、白い箱の前で黒い枠のお父さんは笑ったまま動かなくなった。
次はお兄ちゃん。
ある朝、僕を撫で回して「行ってきます!」と自転車に乗って行ったお兄ちゃんも、白い箱の前で笑って動かなくなった。
ぐしゃぐしゃになったお兄ちゃんの自転車は庭に置かれ、お母さんとお姉ちゃんは声をあげて泣いていた。
そしてお姉ちゃん。
コンコンと咳をして、お母さんに「暖かくして布団に入りなさい」と言われていた夜。お姉ちゃんは赤い光がチカチカする白い車に乗せられて、お母さんとどこかに行ってしまった。
僕は全力で追いかけたけど、追いつけなかった。
そしてお姉ちゃんも白い箱の前で笑って動かなくなった。
僕は白い箱も、お母さんが火をつける棒の匂いも嫌いだ。
「納骨……しようか。離れられなくてずっと家に置いていたけど、三人一緒なら寂しくないよね……」
ずっと泣いていたお母さんはそう呟いて、箱の中の白い壺を石の下にしまった。
お母さんは「良い顔の写真ね」と言って、毎日お水とご飯を笑顔で動かない三人の前に置いている。
「あなたも歳ね。あなたまで先にお星様になってしまったら、私……」
そう言って星を見上げて寂しそうに僕を撫でるお母さん。
ねえ、お母さん。
僕は星にはならないよ。僕は犬だから人間のルールじゃなくてもいいでしょ。
僕はお母さんが星になったら、皆の星を紡いだ僕だけの星座を見上げるんだ。
大好きな、家族の星たちを。
僕もヨボヨボだから、目が開けられなくなるのはもうすぐだろうけど、それまでは星座の下で皆を見上げるよ。
だからもう泣かないでね、お母さん。
読んでくださり、ありがとうございました。
お母さんの悲しみ、つぶらな瞳で見上げるワンちゃんの温かさ、冬の澄んだ星空の光景……それらが伝われば、と思います。
千文字以下でお話を作るのは、難しくもあり、楽しい挑戦でもありました。
短い文でどれだけ伝えたいことを文字に出来るか、こんなに考えたことはなかったかもしれません。
次のお話に生かせられたらなぁと思います。
年明け早々、お付き合いくださりありがとうございました。
今年一年が良い年となりますように。