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防衛戦 人類最前線要塞ゴウルにて

処女作です。


自分好みな作品が少なく、なら自分で書こうと思い立ち挑戦しました。


何とかエタらないように頑張ります。


今回は世界観だけでも伝わればと思っております。


主人公の過去や、恋愛要素・ハーレム要素などは後程。

 

「来るぞ!しっかり構えろおおおおお!!」


「おい!矢がもう無えぞ!補給はどうなってやがる!?」


「前線に穴を空けるな馬鹿者!隊列構え直せ!」



 数キロに及ぶ戦線にて指揮官が檄を飛ばし、前線の戦士達の悲鳴にも似た怒号が飛び交うここはガルド帝国南方の辺境であり、最も死に近く、しかし最も命の輝く場所、ガルド帝国南部ゴウルロッサ領、人類最前線要塞ゴウル。

 全人類の盾であり矛であるこの場所では日夜魔獣達の波が押し寄せる。


「押せえええ!!」


 指揮官の叫びと共に僅かに前線が押し上がる。しかし、そこから前線は動かずに膠着状態に陥っていた。


「これではジリ貧ではないか!伝令!」


「ハッ!」


「後方部隊に支援要請を!弓兵だ!これでは埒が明かん!ありったけ連れて来い!」


 指揮官から命を受けた伝令は、胸当てに拳を叩きつけて走り出す。その伝令とすれ違うように別の前線からの伝令が指揮官の下へ駆け寄る。


「報告!こちら第3前線指揮官バリ・ヘリー殿より伝令!此方は前線の前進に成功!このまま敵を分断するので協力願うとの事です!」


「何!?この状態で前進だぁ!?貴様ぁ!俺の部下に無駄死にしろとでもいうのか!」


 伝令は怒鳴る司令官へ向け必死に指さす。つられるように目を向けた指揮官は思わず目を見開いた。

 確かに。確かに直線に続く前線にて一か所のみ突出している箇所があったのだ。何事かと見つめている間にも蟻の行軍並の速度ではあるが確実に前進を繰り返している。


「何だあれは!?伝令!あそこには何があるのだ!」


「あそこは招集された傭兵達が数多く配置されている場所です!彼らの戦果目覚ましく、この好機を逃すことなく大至急呼応されたしとの事です!」


「傭兵だと・・・」


 指揮官はここが戦場の真っ只中だというのに、ふと思考にとらわれる。別に傭兵という生業に何か思う所がある訳ではない。しかし、傭兵とは主への忠義を胸に戦うのでは無く、雇われた金の分だけの仕事しかしない連中である。敗戦の色が濃くなると、ここらが潮時とばかりに何時の間にか居なくなってる。そんな輩だ。その傭兵が前線を押し上げていると言うのだ。自分達では抑えるのが精一杯なこの戦場で。


 しかし、それは数秒の事であった。幸い優秀な指揮官であった彼はすぐさま自分の成すべき事を思い出した。彼の成すべき事、それは如何にして一人でも多くの部下を生かして返すかである。気が付けば部隊全体に響く大声で檄を飛ばしていた。


「貴様ら聞いたか!傭兵共が俺達以上に出張っておるらしいぞ!これでは俺も貴様らもお払い箱だなぁ!?オイ!貴様らぁ!帝国の兵とはこの程度のものかぁ!ああ!?」


「「「いいえ!指揮官殿!!」」」


「ジョーンズ!貴様の嫁も傭兵共に金で守って貰えばいいのではないか?どうだ!」


「いいえ!指揮官殿!」


「コンチ!貴様も故郷へ帰って家業でも継いだらどうだ!ここで死ぬよりは孝行息子だろうが!」


「いいえ!指揮官殿!」


「阿呆共が!!帝国の兵ならば行動で答えろ!それが貴様らの答えか!」


「「「いいえ!指揮官殿!」」」


「宜しい!ならば奴らに出来たのだ!俺達に出来ない訳なぞないな!どうだ!!」


「「「はい!!指揮官殿!」」」


「奴らが一歩進めば我らは二歩!十歩進めば二十歩進む!!貴様らの中身が昨日食った物の糞だけではないという事を証明して見せろ!!押せええええええ!!」


分かっている。皆疲れ切っている。しかし、これを逃せば好機は二度とない。自分に出来る事は檄を飛ばし、士気を高め、そして最後には一緒に死んでやる事くらいである。そんな最悪な可能性を少しでも減らす為、指揮官自らも盾を構えて隊列に加わるのであった。


名も知らぬ傭兵共と、可愛い出来損ないの部下達と一緒に帰る為に。






「いいぞ!もっと!もっとだ!お前らの力はそんなものかぁ!」


切る。へし折る。投げ飛ばす。叩き潰す。


凡そ人の戦い方とは思えない様子で荒々しく、苛烈に魔獣を殺し続ける傭兵がいた。


グラン。それが彼の名前だった。年の頃は30中頃。190cmを超える身長に短く刈られた黒髪。筋肉隆々な肢体には身長程の大剣が握られていた。いや、大剣だったと言うべきだろうか。彼の酷使について行けず、刃は潰れ所々折れ曲がった姿は最早鉄塊と呼ぶに相応しい代物に成り下がっていた。


「チィッ!コイツも潮時か!」


不機嫌そうに眉に皺を寄せたグランは、襲い来るオーガの口に大剣を突っ込み、そのまま手放した。そこそこの逸品だったが、所詮頑丈さだけが取り柄の数打ち品である。すぐさま腰元の片手剣を抜き、手当たり次第魔物を殺していく。そんな彼に一人の傭兵が駆け寄る。


「グラァァァン!!聞こえるかぁ!指揮官のあんちゃんからの伝令だ!!お前に何とかこのまま前進して欲しいってよ!魔獣共を分断して、それから一気に前線あげるんだと!帝国兵も可能な限り貸すと言ってるがどうするよ!?」


「何ともまあ・・・。決死隊であれば受け入れると伝えておけ!!命に未練がある奴なら要らん!」


何とも水を差された気分であった。実際、彼はこの度の戦場こそ自分の死に場所だと思っていた。だが、それには彼なりの矜持と言うか、条件がある。それは、彼自身の意思で死地に赴き、彼の思うまま闘い、自身のつま先から指の先まで持てる全て、使えるもの全てで抗い、その末の死を望んでいるのだ。そこに他者の思惑などが絡むと、自分の中に何か不純な物が混ざったような気がして、酷く冷めるのだ。


しかし彼自身、自分が狂気じみていると自覚していながらも、多少の良心も持ち合わせている。自分の勝手で他者が死ぬのは、それはそれで忍びない。だからなし崩し的にではあるが、毎度他人を助ける羽目になるのだった。


体の芯の熱が冷めていくのを感じながら、剣を振り続けていると、数分も経たぬうちに20人ほどの兵士達が肩を並べた。


「バリー指揮官殿の命により加勢に参った!!貴殿の要求通り我ら皆死兵なり!思うように使い潰せ!」


「ほう・・・。黒騎士を寄越すとは、本気なのだな指揮官は」


黒騎士とは皇帝直属の近衛兵の通称であり、今回特別に戦果に加わった者たちであった。騎士団の中でも指折りの精鋭のみで編成され、標準の白い鎧ではなく、その忠義の高さにより、どの色にも染まらない黒色の鎧を纏う者たちである。使い捨てにするには勿体ない事この上ないが、彼ら程の練度が無ければ役に立たないのも事実であった。


「名誉ある黒騎士殿と一緒に肩を並べるとは光栄だ。死力を尽くす事を誓おう。」


グランは己の拳で胸当てを叩きそう答えた。この動作は騎士の宣誓の礼であり、彼らが嘘偽りなく誓う時に使われる。グランは傭兵だが、彼らの思いに応える為、敢えて騎士の礼をとった。


それを見た黒騎士達はフッっと男くさい笑みを浮かべた後、魔獣達に飛びかかる様に突撃するのであった。


結果から言うと、今回も魔獣を跳ね除け、人類の防衛ラインを死守する事に成功した。皆抱き合い、拳を突き上げ、怪我をした友に肩を貸しながら要塞へ凱旋するのだった。






「勇者達の凱旋だ!!今回も我々の勝ちだ!!人間の勝利だぁ!」


数人の男達が町中を駆け回りながら、大声で叫ぶ。彼らは伝唱師と呼ばれる者達で、有事の際の速報を皆に伝えたり、文字の読めない者達へ時事などを伝える事を生業にしている。


伝唱師の速報を聞く度に町がワッと歓声で震えた。


今回も我々は生き残ったのだ。生き永らえたのだ。ここは命が一番輝く場所、要塞ゴウル。人々は生きる喜びに震えていた。しかし、この町は別の顔も持ち合わせている。歓声を上げる人々をかき分け、凱旋する戦士達に駆け寄る者達がいた。


「ダーリン!帰ってくるって信じていたわ!今日は朝まで貴方の熱を冷ましてあげる!」


「そこの旦那!大活躍だったようでなりより!あら?その剣、筋が曲がっちまってますな。どうですこの剣。旦那程の戦士ならこれくらいの業物持ってないとねえ!」


「冷えたエールに串焼き!腸詰めもあるよ!らっしゃい!らっしゃい!」


戦士達が通る大通りに沿うように、いつの間にか出店が列を成していた。そう。彼ら彼女らにとっては、今ここからが戦場なのだ。日夜魔獣との闘いが繰り広げられるこの町では物資の消費が凄まじく、一夜で他では比べ物にならない程の金が動く。人類最前線のこの町で戦いを生業としている者達の給金も凄まじく。大きな戦いのあった後などは、皆懐が緩み大金を落としていくのである。


ここは人類最前線要塞ゴウル。娼婦・男娼の聖地。商人達の伏魔殿。なまめかしい程の熱が町全体を包むのであった。






「何ともまあ、今回もおめおめと生き残ったものだ」


長く続く凱旋の列最後尾にグランの姿はあった。


「お。血濡れの。今回もすげえ活躍だったな」


「おう赤鬼(オーガ)!おめえのお陰で助かったよ。一杯おごらせてくれや」


「紅鎧のグランとは貴殿か」


傭兵達や帝国兵などが通りすがりに声を掛ける。血濡れのグラン・赤鬼(オーガ)・紅鎧のグラン、これら全てグランの通り名であった。暗褐色の革鎧を魔獣の血で余すところなく真紅に染めて帰って来る事から、いつの間にかそう呼ばれる様になった。


グランは小さく頷くだけで、特に何かを語る訳でもなく、先を急ぐ。


「そこの傭兵!貴様がグランか!!」


一際大きい声で呼びかけられ、足を止める。


「何か用か」


そう言って振り返ると、百人ほどの兵士を従えた男が速足で近づいてきた。


「俺は、此度の戦で第一指揮官を務めておった。アーベル・イェルド・ゴウルロッサである」


そう。彼こそがグランに呼応した指揮官その人であった。ゴウルロッサの家名よりわかる通り、この地を収める辺境伯家に名を連ねる貴族である。その証拠に彼の鎧にはゴウルロッサ家の盾と槍が交差したエンブレムが施されていた。


「確か、前線で見た顔だと思ったが。ゴウルロッサとは・・・まさかの辺境伯家の者だったのか」


「傭兵!!指揮官殿に何たる言い草かっ!!」


「俺がいつ発言を許したかっ!!黙っておれ!!」


「はっ!申し訳ございません!」


「すまんが、貴族の礼儀は知らんのでな。しかし、戦士の礼儀は知っている。あの素晴らしい戦いぶりに敬意を」


そう言って、グランは胸当てに拳を叩きつけ、騎士の礼を取る。


「受け取ろう。それにそっちの方が俺好みだ。許す。此度、貴様の戦いに大いに感じ入る所があった。どうだ、この後酒でも酌み交わさんか」


「すまんが寄る所がある」


そう断りを入れつつ、脇に抱えた黒い兜と真新しい騎士勲章を見せた。


「ああ・・・それは黒騎士のか・・・」


「共に死地に向かった。聞けば黒騎士に任命されたばかりだったと。若かったが、彼は間違いなく勇者だった。傍で見届けた者として、これを届ける名誉を授かった。これからは英霊達の眠る霊廟に名を刻まれ、彼の地で戦神ドーガの軍団に加わる事だろう」


ドーガとは戦いを司る神とされていて、戦士や騎士に厚く信仰されている。ドーガは戦士に加護を与えると云われ、死後、戦場で散った者達の中でも特に勇敢な者を自分の軍団に迎え入れ、敵対する巨人族との闘いに備えていると云われている。


霊廟に名を刻むという行為は、数千年という歴史をもつガルド帝国の初期から存在しており、名を刻まれた者達は英霊となり、死してなおこの国を護るのだと。


「この黒騎士も貴様と共に戦えた事を誇りに思っておるだろう。この戦いで亡くなった英霊達に我が剣を捧げ、いずれ彼の地で出会う事を願わん」


ゴウルロッサが鞘から剣を抜き、胸当てに添え、そして天に掲げる。これは騎士における最上礼であった。それに習い、彼の部下や騎士の礼も知らぬ他の傭兵までが、彼を真似て剣を掲げた。グランもゆっくりと剣を抜き天に掲げた。


夕日が剣を黄金に染める。彼の地で待つ英霊に届かんとばかりに。





いかがだったでしょうか。


面白くない・ここがダメだとか批判大歓迎です。


是非、ご忌憚のない意見を頂ければ幸いです。


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