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目覚めた少年の怪我の理由

「はい、どうぞ」


「あ、ありがとうございます…」


目覚めた少年に、飲み物を差し出すティリア。

彼女は、黙々とその飲み物を飲み続ける少年を見て、どこか陰りを感じていた。


「それで…ここは一体どこですか?」


飲み終わった少年は、警戒を強めながら彼の周りにいる者達にここはどこかと尋ねた。

それに対する答えを言ったのは、町長だ。


「ここはゼラゲイト王国領内にある『ルーズベルク』の町。 その町内にある孤児院さ」


「孤児院…」


「ここにいる者や今部屋で眠っている多数の子らは…みんな孤児でね。 寄り添って生活しているのさ」


「そう…なんですね」


少年は絶望しながら町長の話を聞いていた。

これが夢なら…と思っていたのだろうが、町長の言葉でそれが現実だったと思い知らされたのだから。


「えっと…、あなたの名前…教えてくれる?」


今度はルキアが少年の名前を聞いてくる。

少年は、ワンテンポ間を置いたのち…震え声ながらも名乗った。


「カズキ…、一条(いちじょう) 和樹(かずき)…17歳…」


「カズキ君か…」


少年…和樹の名前を聞いて安堵する町長。

そこにセイが和樹に聞いてきた。


「あんた、何であんな所で倒れてたの。 俺が見つけた時はボロボロだったんだ」


「ええ、私が回復魔法を掛けてなんとか回復はできたけど…骨折までしてたから…」


ティリアも便乗し聞いてくる。

その瞬間、和樹が震えているのが分かった。


「カズ兄…辛いなら…無理して答えなくていい…」


ルキアは和樹の手に自分の手を添えて彼を案じる。


(トラウマになる程の事をされたのか…)


セイは、彼の震えがトラウマによるものと考え、そうなるレベルの事をされたのでは…と推測していた。


「僕は…クラスのみんなとゼラゲイト王国に召喚され…、能力判定で…僕だけ勇者の力がないと判明された瞬間…王族や兵士、クラスメイトに殴られたり…蹴られたり、手足を斬られたり…」


「「「…っ!!」」」


和樹の口から発せられた衝撃的な内容に、セイ達はショックを受けていた。

彼がゼラゲイド王国に召喚された直後に、勇者の力がないというだけで、酷い暴力を受けていたからだ。

しかも、集団で…。

それを聞いたセイ達は、言葉が出ない位に固まっていたのだ。

そして、和樹は話を続けた。


「友達だったと思っていた人まで…一緒になって…僕を…ううっ」


「カズ兄…!!」


「なんという事だ…!」


一通り言うと、トラウマを呼び起こしたのか苦しむ和樹を心配するルキア。

彼が話した内容で、怒りと悲しみを感じた町長。

それは、セイやティリアも同じだった。


「あいつら…、そこまでクズだったとは…!」


「そうね…。 私もますます許せなくなったわ。 勇者の力がないという理由だけでそこまでするなんて…!」


「今はそうはしないだろうが、明日以降、取り立てやこの町への攻撃もその勇者を使って行われる可能性も出て来たな」


町長はその後、今後のゼラゲイド王国の動向を予測していた。

反王族が集う『ルーズベルク』の町にも勇者を使って攻めてくる可能性も出て来たからだ。


「訓練ついでに…?」


ルキアが町長に尋ねる。


「ああ。 勇者の力をモノにするための訓練として王城内の地下ダンジョンや訓練場だけでなく、この町を攻め込ませる事で実戦経験を積ませるのだろうな」


「そんな理由で…この町を攻め込もうと…」


ティリアがさらに怒りに震えあがる。

その時…。


「…そうは、させない」


「セイ…」


みんなが怒気を込めた声を出したセイの方に振り向く。


「この町も…この孤児院を…『家族』をあいつらにやらせはしない」


「…そうね。 私も同じよ」


「ああ、私は他の町にいる反王族の貴族たちと連絡を取っておこう。 緊急性が高いからすぐに応じてくれるはずさ」


セイの決意に、ティリアも…言葉は発していないがルキアもオレグも同じ決意を固めていた。

町長は、同じ反王族の貴族たちと連絡をするため、部屋を去ろうとしていた。


「ああ、そうそう。 カズキ君はそのまま身体を休めてくれ。 色々とダメージは残ってるだろうからな」


「…ありがとうございます」


「ルキア、もう少しだけカズキ兄さんをお願いね」


「うん」


和樹の事をルキアに任せて、ティリアは仮眠の続きを…セイとオレグは戦いの準備をしに部屋を去った。

皆が去り、ルキアと和樹の二人だけになった直後…。


「んしょ…」


「へ…!?」


ルキアが和樹のベッドに潜り込んだ。

突然の彼女の行動に、リアクションに困ったのか目を見開く和樹。


「私が…一緒に寝てあげる…」


「あ…」


ルキアがそう言いながら和樹の身体を優しく抱く。

和樹も彼女の優しさと温もりを感じたのか、安らいでいくのを感じた。


そして二人はそのまま翌朝まで眠った。

和樹自身もその日は悪夢を見ることはなかったそうだ。



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