第9話 イヴイヴ 前編
当社比2倍の甘さ!
ブクマ&評価ありがとうございます!!(*´▽`*)ノシ
『ピンポーン』
「はーい。」
『お迎えに上がりました。』
「ふふっ。ちょっと待ってね。」
戸締りとガス等を再度確認し、荷物を持って玄関へ向かう。
重い鉄扉を開けると、ダークグレーのスーツの上からキャメルのチェスターコートを羽織り黒髪もピシっとセットした、キメキメの亮さんが待っていた。
「お待たせしました!」
「おは・・・・・綺麗だね。」
「ありがとう・・・」
いきなり褒められてびっくりした。
いつも髪を下ろしているけど、今日は首元がつまったドレスと言うかワンピースを着ているので、髪を巻いた後編み込みをしてアップにした。
メイクは逆にシンプルにしたけど、リップは赤だから目立ったのかもしれない。
て言うか。
「亮さんも・・・今日いつもより格好良いね・・・」
「え?!あ、ありがとう・・・」
お互い照れてしまって、玄関で突っ立ったままだ。ここに同じフロアの住人が居合わせたらバカップルに見えるかもしれない。
少しだけ俯いていたので、目の前に影が落ちた事に気付いて顔を上げたら軽くキスをされた。
「!!!」
フ、と不敵な笑みを浮かべた彼と目が合う。
「ここ玄関なんですけど!」
「知ってる。あとせっかくの口紅が落ちちゃうから軽くにしたんだよ。」
午前中からこんな甘々で良いのだろうか。
「荷物は?これだけ?」
彼が半身だけ玄関へ入り、廊下にあった大き目のバレンシアガのトートバッグを持ってくれた。
キャンバス地にバーガンディのハンドルのトートは以前ハワイへ行った時に購入した物だ。
1泊の出張時に使っていたけど、お泊りで使う事になるとは・・・
「う、うん。ありがとう。」
「どーいたしまして、しっかり戸締りしてね。」
「うん。」
ガチャガチャと鍵をかけ、ハンドバッグにしまってから二人で階段を降りて行った。
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びっくりした。
玄関開いたら美女が出てきたからすげーびっくりした。
内心ドキドキするのを抑えて、余裕見せるので精いっぱいだった。
助手席にいるしずかは自分で言った通りドレスアップしてきた。
いつもラフな格好が多いのに、コートで中はわからないが首元からレースが見えている、恐らくワンピースだろう、とても女性らしく綺麗な恰好だ。
髪をアップして、化粧も何かいつもと違う様に見える。
こんなに綺麗だったっけ・・・?
いや、元々美人の認識はあるけどさ、俺の欲目だけじゃなくてまじで綺麗だ。
だって、駐車場に向かうわずかな間の通行人の目さえ奪っていた。
俺たち二人の服装のせいかも、と思ったが、明らかにしずかしか見てなかったし、あれは見とれていた、の部類だ。
ちょっと心配になってきたな・・・
以前、俺の家の近所で外食した時、そこの店員がしずかに対してあらぬ妄想をしていた。
トイレ待ちをしていたら耳に入ってしまい、咳払いで諫めたが、二度とあの店にしずかは連れて行かん!と思ったくらいだ。
「・・うさん、亮さん?」
「え?」
「どうしたの?ボーっとして。行かないの?」
車に乗ったところでうっかり考え事をしてしまった。
「ううん、ごめん、道とかどうしようかなって思って。」
嘘です。
「道混んでるのかな?来る時どうだった?」
「え、あ、いや、混んでなかったかな。」
「そっか、じゃぁ大丈夫だね。」
「行こうか。」
俺の懸念なんか何もなかったかの様に車を走らせた。
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鎌倉にあるホテルでランチをする為、亮さんが車を走らせた。
鎌倉を提案されたのにびっくりしたけど、家までお迎えに上がる、なんて言われて更にびっくりした。
何か、すごく特別な日って感じがする。
今日は食事して、ドライブしてイルミネーション見に行って、最後は亮さんの家だ。
夕飯はまたも用意してくれるらしい。
明日は二人で一緒にお互いのプレゼントを買いに行く。
亮さんてば、私が欲しい物ないって言ったら怒ったのに、まさかの彼も欲しい物が浮かばなかったと言う・・・
いや、「欲しい物は?」て聞いて「しずか」って言うから即「私以外で!」と阻止したんだけども・・・
体にリボンでも巻けっていうのか!と内心思った。
彼の場合は、その後本気で欲しい物浮かばなかったので、『私の家に泊まりに来た時に着る部屋着』を提案したらめちゃめちゃ喜んでくれた。
付き合う前泊まりに来た時は、冬なのに半袖しかも選手のサイン入りTシャツしかなかったのですごく申し訳なくて。そして、今後・・・きっと泊まりに来るだろうし・・・(照れ)と思って部屋着を提案した。
明日は今日よりはラフなデートになるだろうから、ドレスアップはしない(きれい目のデート服にはしたけど)。靴も含めて着替えも一式用意してるから荷物がいつもよりかさばった。
いつもの着替えは冬だからという言い訳でインナーと下着の替えくらいだから、上下用意するとまじで荷物嵩張る!
だからなのか何なのか、迎えに行くよ、と言われた時はとてもありがたかった。
「楽しそう?」
顔が綻んでいたのだろう。信号待ちで亮さんに話しかけられた。
「え?うん・・・既に楽しいし、亮さんが迎えに来てくれてすごく嬉しかった。」
「え?!!あ、そっか・・・」
「何か特別な日って感じがする。」
「うん、特別な日にしようね。」
と言ってすぐ、私の頬にキスをした。
瞬間、信号が変わり、すぐに彼の顔が離れてしまった。
しまったって・・・!そんな残念そうに!
どうしよう。今からこんな甘々で夜まで耐えられるかな、私。
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「コート、クロークで預かってもらおう。」
「うん。」
目的のホテルへ着き入り口へ向かう。
クロークの前まで来てしずかのブルーグレーのチェスタコートを脱がせた。もちろん、ただのエスコートだ。
形だけはお揃いだが、俺のとは違いすごく肌触りの良いコートだな。何だこれ、もしかしてカシミヤか?何て呑気な思考が一瞬で止まった。
「・・・・・」
「ありがとう。」
「・・・・・」
「亮さん?」
見とれた。見とれていた。
コートを脱がせた瞬間衿で隠れていた白いうなじが見えた。いつもここにキスをしている。
振り返った彼女のワンピース、いやこれはもうドレスか、ドレス姿がとても彼女に良く似合っていて、綺麗だ。
語彙力が足りないと自分でも思うくらい、綺麗だ、が頭の中で連呼している。
今日のしずかはいつものカジュアルな恰好とは真逆の女性らしい深いグリーンの総レースのワンピースドレスを着ていた。
胸上から下は裏地が付いているが、首元まであるレースの鎖骨部分と長袖部分はレース1枚なので肌が透けて見える。
ウエストで切り替えられたスカート部分の丈もふくらはぎ位の長め丈で裾に向かって自然と広がっている形だ。ドレスの形自体はオーソドックスで貞淑な物なのに、透ける肌が禁欲的で少なからず興奮した。
「すごく・・・綺麗だよ・・・」
「あ、ありがとう・・・」
しずかが照れた所でハッと我に返る。視界の端にクロークのお姉さんが生暖かい笑顔を浮かべている、様に見える。
努めて冷静に見える様にコートを預ける。
「コート2枚お願いします。」
「はい、お預かり致します。貴重品はポケット等に入っておりませんか?」
「大丈夫です。」
「畏まりました。ではこちらの番号札を忘れずにお持ち下さい。」
「はい、お願いします。」
「お預かり致しました。」
すぐに退散したい。褒めるだけなら良いが、その奥の邪な感情を読み取られる訳にはいかない、としずかの腰に手を当てエスコートし、レストランへ向かった。
セミがミンミン言ってる中、これを書いています。