表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二人で幸せになるために  作者: 新浜ナナ
第二章
81/88

第26話 通じない人

 仕事の帰り道にかかってきた、知らない番号からの電話に応答したら、まさかの先日再会したまー君だった。



「まー君だったんだ、ごめんね。私ケータイ買い替えのタイミングで連絡取ってなかった人の番号消しちゃうから」


 平均2~3年でスマホを買い替える際、私はその間に連絡を取っていない人の番号を消す習慣がある。


 経験上、2年の間に連絡を取らない人はその先も連絡を取り合う事はない。

 支障も一度だってなかった。

 当然、数年前に別れた彼の電話番号だってとっくに残っていない。



『え?!そうなんだ、良かった、出てくれて』

「荷物の受け取りかと思って。で、どうしたの?」

『あ・・・話があるんだ。どこかで会えないかな、と思って』

「今聞くけど」

『いや、会って話したくて』


 何だ、何だ?

 壺でも買わされるのか?


「ごめんね、夫が心配しちゃうから男性と、しかも元カレと二人きりでは会えないの。彼も一緒でも良いなら会うよ?」


 洗脳されて壺を買わされそうになってもきっと亮さんが止めてくれるだろう。



『っ!!そんな!あ、あのさ、俺、東京来てからすごく頑張ったんだ』

「そうなんだ」

『そしたら暫くして、鮎子が離婚届置いて家出てったんだ』


 ・・・うわお、ディープな話し。

 あゆことは奥さんね、きっと。


「そ、そうなんだ。大変だったね」


 どうやら壺じゃなかったぽい。

 でもそんな話し聞いちゃって良かったのかな。

 そして何故その話しをわざわざ私に?



『何か、東京が楽しかったらしくて浮かれてて・・・おかしいなとは少し前から気付いてたんだけど』

「・・・」


 この身の上話はいつまで続くんだろうと、歩きながら聞いていた。

 でも知っている人に会えて、話しを聞いて欲しくてかけてきたのかも、と思って少しだけ付き合う事にした。



「そっか~」

『この前しずかに会って、昔を思い出してさ。しずかは最初派手な見た目してるなって思ってたけど、今思えば別にこっちじゃ普通だったし、良く考えたら実は家庭的だったし。』


 ・・・ん?

 何言ってるんだ、こいつ。顔が派手で悪かったな!


『しずかは東京の女だから、群馬には馴染めないよ』とか、わけわかんない事言って人のせいにして、自分は浮気してただろうが!

 入社したての新人と!


『しずかはあの男と結婚して幸せ?』

「すっっっごい幸せ」

『えっ・・・』


 むしろ、お前が浮気する様な男って結婚前にわかって良かったよ。


『そ、そんな、あんなイケメン、浮気するだろ?女にモテモテで大変だろ?寂しいんじゃないのか?』

「イケメンだけど、一切浮気しないし、とても大切にしてくれてます。イケメンじゃなくても浮気する人いるよね。」

『は?!俺がブサイクだって言うのか?!!』


 え~・・・キレる?ここで。


「そこまで言ってないでしょ。話しをすり替えないで。で、結局私に何の用?」


 可哀そうな人なのかと思って話しを聞いていたけど、これは聞かなくて良いやつだ。



『しずか・・・あいつと別れて俺と再婚しよう!しずかならきっと二人の子供とうまくやっていけるよ!』

「は??」


 まじで何言ってるのこいつ、と思い、今まで出した事の無い様なドスの利いた声で返した。

 新婚だって、言っただろうが!


「・・・まー君、奥さん出て行っちゃって、お子さん二人面倒みなきゃいけないから大変なのはわかるけど、それに私を巻き込まないで。もう私達は終わってるの。あなたが浮気した時に」

『・・・・・』

「一応聞くけど、あの子達の母親って当時の浮気相手では?」

『・・・・・』

 沈黙は肯定とも言うのよ。


「子供に罪はないけど、良くそんな状況で私に再婚しようだなんて言えるね?」

『いや、しずかなら子供達と上手くやっていけそうだと思って・・・』

「とにかく!私は無関係なので、子供の世話が大変ならシッターさんとか、シングルマザー、シングルファーザーの何か頼れる所があるだろうからそこに頼りなよ。」

『いや、俺はしずかとやり直したくて、』

 ブチンっ!!


 これ以上は本気で聞く必要ないと思い話しの途中で切ってやった。

 多分あのまま会話を続けても収束しなかっただろう。


 疲れた・・・






 ********************


「ただいま~・・・」

 玄関を閉めると同時にキィとリビングの扉が開き、亮さんが出迎えてくれた。


「お帰り。何か疲れてる?」

「すっごい疲れてる~・・・抱き締めてキスして?」

「うお?!お、おお・・・」


 私の要望通り優しく抱き締めてくれて、キスも優しかった。


「・・・何かあった?」

「あったの・・・聞いて。」


 普通なら人の家庭の事情をペラペラと話すわけにはいかないが、今回は私も話しに含まれているので報告する事にした。






「・・・・・今度会ったら殴って良い?」

「暴力沙汰はやめて。」

「しずかと付き合えてるのに、浮気?!信じられないんだけど。」

「事実よ~そしてこの前いた女の子達の母親は当時のその浮気相手です。」

「身勝手過ぎるな、そいつ。」

「とりあえず、番号は着信拒否にしておく。」

「用が無いならそれが良いよ。」

「まじで疲れたんだけど!」

「フハっ!珍しく怒ってるね、誰にでも優しいしずかが。」

「怒るよ~!だって極端な話し、子供の世話してくれ!って事でしょ?!。それも母親が浮気相手って、私に良くそんな事言えるな!ってあー!もう!また腹立ってきた!!」

「よしよし。」


 亮さんは笑ってもう一度私を抱き締め頭を撫でてくれた。

 彼の体温と匂いに包まれて少しだけ安心し、彼の衣類をぎゅっ、と掴んだ。


「お風呂入って落ち着かせてくる。」

「俺も一緒に入ろうか?」


 少しだけニヤニヤしている彼をジトっと見つめ、

「・・・お風呂でエッチしないて約束出来るなら。」

 と伝えた。


「え?!ま、まじで良いの?」

「エッチしませんよ。」

「良いよ。湯舟入って抱きしめてあげるよ。」

「わかった・・・準備してくる。」


 正直、ずっと抱き締めて私の怒りを収めて欲しかったので、湯舟で抱っこはちょっと嬉しい。

 口元が緩むのを我慢して着替え等一式を準備すべく自室に戻った。






 ちゃぷん・・・

 さすがに湯舟に二人入ると狭いな。

 彼は足を前に投げ出し、その間に座らせてもらった。


「亮さん1回お風呂入ったでしょ?なのに付き合わせてごめんね。」

「しずかとお風呂入れる事なんて滅多にないから先風呂入ってたって関係ないよ。」


 そう言って、んーっと首筋にキスをしてくる。

 体がちょっとだけピクンと反応した。


「っと・・・ごめん。エッチしないって約束だったね。」

 と言いつつあちこち触ってくるな・・・


「亮さん・・・」

「ん?あ、やっぱ怒った?」

 背中をなぞる指がピタっと止まる。


「違う・・・やめないで・・・」

「!!良いの?」

「うん・・・」


 顔だけどうにか後ろへ振り返り、目を閉じた。






 ********************


(うふふ~♡♪)


 この前は流れでしちゃったけど、いつも以上に彼が優しくて溶けそうだった。

 未だに余韻に浸ったりして・・・

 プライベートが順調だと仕事も捗るなぁ、なんて今日も定時で家路に着こうとしている。



「しずか!」

「っ!どうしてここに・・・?」


 私の名を呼ぶ、亮さんではない声の方へ視線を向けると着信拒否をしたまー君が満面の笑みでこちらに近付いて来た。


「この前電話した後何回も電話したのに出てくれないから会って話そうと思って。しずか職場変わってなかったんだね。ここに来るの初めてなのにすぐ会えたのって・・・やっぱり運命だと思うんだ!」



 運命なわけないじゃん!!


「少し話そう?」

「私は話す事なんかないから!」


 怖い。


「っ!せっかくここまで来てあげたのに・・・!」


 怖い。


「良いから、ちょっとこっちへ・・・」

「痛い!」


 腕を強く掴まれ脇道へ引きずられそうになる。


(亮さん・・・!!)


「おい!何してるんだ!!」



 後ろから聞こえた声にすがる思いで振り向くと、声の主は亮さんではなく私の上司だった。


 そしてまー君はその声に怯んだのか私の腕を離して逃げた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ