第8話 欲しい物は?
ブクマありがとうございます( ;∀;)徐々に読者さん増えてまじ嬉しいです(感動)
今俺は愕然としている。
X‘masまで後10日もない事実に!!!
付き合い始めて浮かれてしずかを求めてばかりいたのと、及川さんの一件ですっかり忘れていた。
街中X‘mas一色なのに何で忘れられるんだ?
付き合いたての恋人同士の一大イベントじゃないか!
てか、しずかも何で言ってこない?
俺と一緒で忘れてるとかないよな?!
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「あ~X‘masもうすぐだったね~」
風呂から出てソファで髪を拭きながらのしずかが、俺の「もうすぐX‘masなんですが?」にあっけらかんと答えた。
「まさかしずかも忘れてるとは・・・」
「何か色々とそれ所じゃなかったしね。」
ふふふ、と笑う。俺と一緒に忘れていたらしい。
普通女子ってX‘masとか気にするのでは?!
「しずかX‘masって気にならないの?」
「ん~当日特にチキンを食べたりとかもしないしねぇ。」
「俺と初めてのX‘masじゃんか。」
俺とのイベントを特に気にしてない風のしずかに思わず拗ねてしまった。
「え?やだー拗ねてるの?かわいい。」
ソファの隣で下を向く俺を覗き込んで頭を撫でた。
「忘れてたの一緒でしょー?拗ねないで?」
項垂れたままの頭、左側頭部辺りにキスが落とされた。
口ではないが、しずかから初めて素でキスをされたので気が昂ってしずかをソファに押し倒した。
今のでスイッチ入るの?!みたいな顔してるな。入るんだよ。
「す、ストップ!ストップ!!もうダメだよ!亮さん。」
「何でだよ。」
「何でだよ、じゃない!!今日もうしすぎ!!これ以上したらもう家に来ないからね!」
そう言われてしまったら止めるしかない。
確かに、しずかがラグビーの試合から帰ってきてから数回と、その後一緒に外食へ行って戻ってきてからと調子に乗った。
いや、しずかにも少なからずそうなった責任あるんだけどな・・・
「こんな事ばかりしてたら話し進まないよ?X‘masって私特に何したら良いかわからないんだけど。いつもどうしてたの?」
俺に抱き起こされ、体制を整えながらもしずかが言う。
いつもってつまり元カノとはどうしてたかを聞いてる事に気付いてるんだろうか。
「・・・いや、普通に外でデートして食事してプレゼント渡して、ホテル、」
「あ、その先は良いです。」
ホテルの先を制止されてしまった。
「うーん、大体そんなもんだよね。あれ?そう言えばいつ会うの?」
俺の話しを聞いてしずかが思案顔をした。
土日がX’masなら良いが、そう言えば今年のカレンダーではそうじゃなかった。
「まずは日程だな。25日は火曜で平日だから・・・22~24日の3連休のどこかだけど、まさかしずかラグビーの試合・・・」
「あ、22日試合ある。」
(またかよ!)と言いそうになりまた項垂れた。いや、24日試合とか言われなくて不幸中の幸いか。
「そっか・・・なら、25日も会いたいけど、さすがに3日連続だと長いからさ、23・24にしようか。」
俺の中では25日も会いたいけど。
「え、あのさ・・・X‘masってやっぱり泊まりなの?」
俺の問に戸惑いながら言ってきたので彼女の顔を良く見ると、困った様な顔をしているのに紅潮していて目があった瞬間何故かそっぽを向かれた。
「何その表情と態度!超かわいいんですけど!」
としずかの肩に手をかけ力を入れた所で思い直した。
ダメだ。押し倒したらまた怒られる。
でも、しずかにこんな顔されたら調子だって乗ってしまう。
だからそうなるのは俺だけの責任ではないはずだ!!
と、心の中で主張した。
しずかは俺の言葉に「知らない!」とだけ呟き、耳まで真っ赤にしている。
多分だけど、きっとしずかも同じなんだろうけど、確認しなくてはならない。
「泊まりにしたいけど・・・嫌?」
「・・・・・嫌じゃないよ。」
そっぽを向かれたままなので表情は見えないが、濡れた髪の隙間から見える耳が真っ赤なままだ。
泊まるのOKって事は期待して良いんだよな。
あー、これ耳だけ食べても怒られるかな。
どんな反応するのか見てみたい気がするが、(いかんいかん、話しが進まなくなる)と思い話しを続けた。
「せっかくだから家じゃなくてホテルが良いけど・・・今からだと無理だろうな。外での食事も予約できるかどうか・・・」
「・・・わざわざホテルじゃなくても・・・亮さんの家で良いと思うけど・・・それに居酒屋とかも予約出来ないかな?」
居酒屋なら突発でも予約入れられそうだが、さすがにそれは避けたい。
一度も行った事のない店にX‘masに行って何か失敗しても困る。
乗り気じゃない俺を察知してしずかも一緒に考え始めた。
「あ、ホテル・・・ラウンジでランチかアフタヌーンティーはどう?それなら予約出来ないかな?」
「あーなら、行けるか、な。うん、そういうのも良いね。」
しずかが少し嬉しそうに微笑んでいた。
「ホテルのラウンジとかなら少しドレスアップしても良い?私X‘masにちゃんとしたデートした事ないから、居酒屋って言ったものの、ちょっと味気ないなって思って。」
「え?」
「え?」
「は?」
「何?」
「X‘masにちゃんとしたデートした事ないって・・・」
「・・・1泊とかした事ないだけだよ。」
せっかくこっちを向いてくれたのに、そう言うとむくれてまたそっぽ向いてしまった。
「俺、責任重大ですね。」
「えっ?!そんな身構えないで?」
心底驚いた顔でこちらに向き直してくれた。
「しずかが楽しんでくれる様なX‘masにするよ・・・キスもダメ?」
「それは大丈夫・・・」
俯いて紅潮した顔に手をかけ軽く、でも長いキスをした。
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「唐突だけど、何欲しい?もう事前に買うの難しいから当日一緒に買いに行こう。」
翌日朝食を食べながらしずかに聞いた。
昨日予定は何となく決めたのにプレゼントの事を話すのを忘れていた。
というか、キスの流れで1回だけお許しが出たから話す機会がなくなったと言うか・・・
言った通り事前に買うのはもう厳しいだろう。初めてのX’masなので本音は驚かせたかったが、こればかりはお互い忘れていたのだから仕方ない。
「唐突ですね・・・」
と言いながらも目線を上にし、スープをスプーンでかき混ぜつつ考えこみ始めた。
「何でも良いよ。」
「・・・・・・・・・・・」
しずかはずっと上を向いたままだ。
「しずかさん?」
「欲しい物ない。」
「え?」
「特に浮かばない。からいらない。」
正面、つまり俺に顔を向け、ニコっと微笑んだ。
・・・何だって?!!そんな事あり得るのか?
過去何度となく高価な物をねだられたぞ!!
いらない、とか衝撃的すぎる!!!
「いや、ちゃんと考えてよ。X‘masだよ?」
「でも・・・欲しいもの浮かばないんだもん。」
もん、かわいい・・・じゃなくて!
「ピアスとかネックレスとか・・・指輪とかさ。」
そう言うと、しずかが自分の両手を広げて眺めて言った。
「もう既に右に2つ、左に1つリングがあるからいらないな~この組み合わせで付ける為に探すの苦労したし、これがベストだから指輪は大丈夫!!」
・・・いやいやしずかさん。普通の女子は指輪を俺と言うか、彼氏に貰った、って喜ぶのよ?
しずかの右手には、大き目のスクエアカットのターコイズのリングと花のモチーフだろうか、模様が模られたリングがある。どちらも主材質はシルバーでターコイズは模様が施された台座に収まっている。
左手にはシルバーとゴールドの細い3連のスクエアのリングがある。
台座とモチーフ、ターコイズのスクエアと3連のスクエア、うまくリンクされていて、出会った当初、さすがアパレルに勤めてるだけあって、センス良いな。と思った記憶がある。
・・・確かにその組み合わせに無理にリングは追加出来ないかもしれない。なら。
「・・・ネックレスとかピアスは?」
「それも別に?」
「じゃぁ何が欲しいんだよ!」
強く言ったら大きい目を真ん丸にして驚いた。
普通ならアクセサリー等の身に着ける物系でねだられるのに、それどころか何もねだられない事にイライラし始めてしまった。
「え・・・いらないって言っちゃダメなの?」
「ダメじゃない・・・てかしずかがそういう女性だって好感持てるけど・・・彼氏に華を持たせてやってくれよ・・・・」
「え、もしかしてメンツとか?」
「・・・」
すごく不機嫌になってしまったんだろう、
「そんな怖い顔しないで・・・後、怒鳴られるのも怖いよ。」
としずかに悲しそうに言われてしまい、慌てて顔を取り繕った。
「ご、ごめん・・・」
「いらないって言って怒られるとは思わなかった。」
口を尖らせているので、しずかも少し怒ってる。
「ごめん。何でも買ってあげるのにしずかがいらないって言うのが少し虚しくて・・・」
「・・・」
「あ!ごめん、買ってあげるってあれだよ?その・・・」
「ップ!わかってるよ。いけ好かない野郎だなんて思ってないよ?私もいらないとか繰り返してごめんね。」
買ってあげるで前も揉めたから慌てて取り繕ったら思い出し笑いをしてしまった様だ。危ない危ない、喧嘩になりそうだった。
「ん~そうだなぁ。買って、と言うか一緒にお願いしても良い?」
「何なりと。」
今までの失態を覆すが如く、まるで騎士の様に振舞って聞いた。
真夏にX‘masの話しとかでスミマセヌ。
出会いがね、9月だったので流れでこうなってしまうのでした・・・