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二人で幸せになるために  作者: 新浜ナナ
第二章
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第19話 本当のバースデープレゼント

 彼女がキラキラと笑う場面に色々と考えを巡らせていたら、俺の手料理を食べる時のしずかが思い浮かんだ。


 ラグビーの話しをする時と同じくらいのキラキラで俺の料理をおいしいと食べる彼女の笑顔を思い出し、頬に涙が伝った。


「はは・・・良く考えればわかる事なのに俺、バカだなぁ・・・しずかが詰めが甘いって言うのもわかった気がする・・・」


 今日初めて出したラテアートも喜んでたな・・・

 時間はないけど、うん、花束と手料理で決定だ。






 ********************


『亮さん私今日早退してもう家に帰って来てます~お腹痛い(×Д×)』


 ええ!まじか・・・正に俺も家に帰る途中だったんだけどな~

 サプライズ出来ないじゃないか、って・・・・・俺何でここまでサプライズにこだわってるんだ?


 目的はしずかが喜ぶ事だよな?

 ならサプライズにこだわる必要はない筈だ。



 わずかだけ迷ったが、思い切って彼女に電話をした。


「あ、しずか大丈夫か?電話少しだけしても平気かな?」

『大丈夫だよ~さっき帰って来たところだから後少ししたら休むけど』

「そっか、ご飯作るけど食べられる?今日誕生日だし、ケーキとか。無理なら後日買うけど」

『ケーキ!食べる!食べたい!!』

「フハっ!そっかわかった。リクエストは?」

『えっ・・・うーん・・・・・・・お酒入ってなければ何でも!!』

「りょーかい!ご飯のリクエストは?」

『ポタージュ飲みたい。あったかいの。あとお肉よりはお魚が良い』

「わかった・・・お腹温めて寝てるんだよ」

『うん、テディベアあっためる』

「ああ、そうだね。じゃあとで」

『うん、電話してくれてありがと~大好き』

「えっ?!」

 速攻で電話を切られてしまったが、電話して良かった。


 しずかに聞かなかったら、がっつりローストビーフを作る所だった。

 お腹が痛いなら冷たいスープよりポタージュだよな。

 良かった、俺ビシソワーズ作りそうだった。季節的に。

 ケーキも食べるって言ってるし、夜はちゃんと誕生日出来そうだな!




 買い出しを済ませ、こっそり家に入り、こっそり着替え、しずかが熟睡している所を少し眺めたところで、

 あ、俺危ない人になってる、と我に返り、食事の支度を始めた。




 極力静かに行ったつもりだったが無音とはいかず、やはりしずかは起きてきてしまった。


「んん・・・あれ、亮さんお帰り・・・早くない?」

「あ~、実は半休取ったんだ。しずかの誕生日だったし。」

「えっ?仕事は大丈夫なんだよね?」

「もちろんだよ。そこの詰めはきっちりしてるよ。」

 自虐で苦笑いするしかなかった。


「出来たら起こすから、まだ寝てて良いよ?」

「んーん、あまり寝すぎると夜寝られなくなるし、亮さんが料理作ってるところ見るの好きだから見てる。」

「そっか、あまり凝視されると照れるんだけどね。」

「じ~~~」

「フハっ何だそれ。」

「見てるの~!」

「はいはい。」



 ダイニングテーブルに頬杖を突き終始笑顔のしずかが見守る中、料理が全て完成した。

「はい、さつまいもとかぼちゃのポタージュと、スズキのポワレと・・・チーズリゾットは、食べる?」

「うん、少しだけ食べる。」

「ケーキは後で出すからね。」

「うん!」

 嬉しそうにテーブルの上の料理を眺めてる。

 このしずかを見たかったんだよな、俺。


「あ~しずか食べる前に、ごめん。」

「ん?」

「抱き締めさせて・・・」

「え?う、うん・・・」


 椅子に座っていたしずかの腕を掴むとそのまま俺の胸に納めた。

 顔にかかる彼女の髪がサラサラで冷たくて心地よかった。


「誕生日おめでとう・・・」

「ありがとう・・・すごく素敵な誕生日だよ。」

 一瞬戸惑いを見せて硬くなったしずかが俺の背中に手を回して抱き返してくれた。

 ああ・・・こういうのがしずかは喜ぶんだな。

 改めて、自己満足でしかなかった沖縄旅行を思い反省した。



「よし、冷めるから食べよう!」

「うん!頂きます!!」




「ほい、ケーキだよ。好きな物を選びたまえ。」

「ふふっ!いっぱいだぁ・・・じゃぁこれ!!」

 料理を平らげ、駅ビルの普段行列が出来るケーキ屋で購入したカットケーキをしずかに見せる。

 4種類買ったが俺は1個で充分なので、あとはしずかの分だ。

 王道のショートケーキを選んだので皿に盛るべくしずかから一旦回収した。


「ケーキ用の小さいお皿、(うち)にないよね?今度買いに行こっか?」

「あ~そうだな。」

 早々にケーキを大き目の皿に盛り、しずかの言葉を耳に入れつつカフェラテを作る。

 今日は・・・初挑戦だ。


「はい、お待たせ。ケーキと・・・カフェラテ。」

「ありが・・・ええ!!何これ!!え?え?ええ?!」


 めっちゃ驚いてるな。そりゃそーか。

「この前の猫のラテアートで感動したのに、今度は立体的な猫って!!」


 しずかがラテアートに夢中になっている隙にキッチンに隠していた物を後ろ手で持ち近づいた。


「可愛い~!ありがとう!!りょ・・さん?」

 キラキラの笑顔で写真を撮り、俺に向き直したしずかが視界に入るイエローとオレンジの花束に戸惑った。


「え・・・?これも・・・?」

「そうだよ。俺の中でしずかはピンクのイメージなんだけどさ、笑ってる時は眩しくて黄色とかオレンジなんだよね。」

「うう~・・・」

「えっ?ど、どうした?!嬉しくなかった?」

「違う、ぎゃくぅ~・・・グスン・・・すごく嬉しい。ありがとう。」

 涙を拭ったしずかが体からはみ出す程の大きな花束を受け取り、そっとテーブルに置き直すと、

「ありがとう、亮さん。大好き。」

 と強く抱き着いて来た。


「どう致しまして。俺も大好きだよ。」






「ごちそーさま!全部おいしかった~!!」

「そっか、良かったよ。」

 席を立ち、ケーキが乗っていた皿とマグカップをしずかの分まで重ねる。


「あ、食器洗うね。」

「あ、良いよ。今日は俺洗うから。」

「え、だって、ゴハン作ってない人が洗うって決めたし・・・」

「しずか誕生日だし、体本調子じゃないんだし。別にがちがちに決まり守る事ないんだよ?」

「でも・・・」

「いーから、しずかはソファ座ってな。」

 そう言って俺に上目遣いしてくるしずかのおでこにキスをしてキッチンへ食器を運んだ。


(ん?何か顔隠してるな。どうしたんだろ?)

 と思ったらしずかも席を立ち、ととと・・・と俺の傍までやってきた。



「えーと・・・しずかさん、何してるのかな?」

「甘えてます~」

 食器を洗っている体勢の俺に、後ろからハグをしてきて背中に顔をグリグリして来る。


 いや、ちょっとそれはまずいって。

 おっぱいの弾力が背中にダイレクトに伝わる。


「すきすき♡」

「!!!」

 まずい!()・・・こういう時は嫌いなやつの顔を浮かべるんだ!

 えーと・・・副社長!!

 ・・・・・

 ・・・うん、よし、落ち着いてきたぞ。




 平常心を保ち、食器を洗い終えたのでしずかをソファへ促した。

「今日ル・マンの特集やってたっぽいから見たいんだけど、良い?」

「良いよ~」


 腕にべったり絡まってきたり、床に直に座って、俺の膝に頭を預けたりしてきて、これは甘えん坊モード入ってるな・・・

 嫌な予感するぞ。



 しばし見てたら、しずかがあくびをし出した。そりゃそうだ。ただただ、車がコースをぐるぐる回っているのだから。

「しずか車飽きるだろ?別の見る?」

「ん~ん。亮さんの隣にいたいだけだから大丈夫~」


 ・・・何この可愛い生き物は?!


「・・・そっか、抱っこする?」

「うん!横向きがい~!」

「はいはい。」


 横向きでしずかを抱きしめていると、

「にゃぁ・・・」

 と俺の胸にすり寄り小さく呟いた。


(え?!)

 俺の奥さんやっぱり俺のいない所じゃ実は猫なのでは?!とバカみたいに思っていたら、とうとう、うつらうつらし始めた。



「しずかもう寝たら?」

「ん~・・・そうする・・・」

「風呂入ったら俺も寝るから。」

「わかった~ねぇ・・・」

 ギクっ・・・


「キスして?」

 やっぱり~!!

 あと、そのおねだり顔めっちゃ可愛いっす!!


「・・・ちゅっ。はい、おやすみ。」

「むう・・・」

 何とか平常心を保ちつつもちゃんと口にしたけど、その顔は不服ですね。そういう気はしましたよ、はい。


「そゆんじゃなくてちゃんとしたキスしてよぉ!」

「う~ん、ちゃんとしたキスだとさ、さの先お互い何も出来ないから止めとこ?あと2日くらいのガマンだよ?」

「やだー!!ちゃんとしたキスしてくれなきゃ死んじゃう!!」

「!!!」

 死ぬわけないだろ・・・いや、もう可愛すぎて逆に俺が死ぬわ。


「も~・・・わかったよ・・・」

「えへ♡」

 と言って目を閉じたしずかに観念して、そっと頭を抱えた。


「ちゅ・・・っ・・・ん・・・・」

 ちゃんとした(・・・・・・)キスから漏れるしずかの吐息に呼応して俺も熱が入ってくる。


「くちゅっ・・・・っは・・・ん・・・きもち・・い・・・」

「!!!」

 自然と漏れる言葉に全身の毛が逆立つ。

 まじ、しずか人の気も知らないで・・・!


 生理中俺だって我慢してるのに、っていや、これはそうだな、俺への罰だ。

 と戒めてしずかが満足するまで、深い、熱いキスをした。


「っふ・・・へへ♡ね、早くベッド来てね?」

「!!」

 俺の太ももに両手を乗せて少し背伸びしたしずかが頬にキスをし、ご機嫌で寝室へ向かった。


 煽られた・・・絶対そう言う意味じゃなく言ったってわかってるけど・・・




 ********************


 パチっ!


 急に目が覚めた。

 周りが真っ暗だからまだ夜中なのだろう。


 薬を飲んでお昼寝していたのもあって、きっと起きてしまったんだろうな、と思った所で夜目に慣れ、目の前に指が長くてきれいな手の平がある事に気付いた。


 そうか、後ろからハグしてくれてるんだな。

 背中に彼の体温を感じ、数時間前の誕生日を思い出す。


 時々的外れな事をするけれど、基本は『私が喜ぶだろう』の元で動いてくれているのは知っている。

 だから、沖縄で不機嫌を中々直せなかったのは反省している。

(他人からしたら贅沢な悩みだ、とか言われるよなぁ)


 エロが行動原理になっている事も多々あるから彼も良くなかったけどね・・・

 だって、マイクロビキニが出て来た時点で、(あ、私沖縄の豪華なラブホテルに連れて来られたんだ)、って思ったもん。


 ああ、誕生日の時の私の怒り通じてなかったんだな~ってすごく悲しくなったし。



 ・・・ご馳走作って、ケーキもきっと『しずかはどれが喜ぶかな?』って一生懸命お店で選んでくれたんだろうなぁ。


 あと、ラテアート!何あの立体的なにゃんこ!

 めちゃめちゃ可愛かったんですけど!

 そしてそれを練習してる亮さんの(さま)を想像すると可愛いんですけど!


 お花だって、私のイメージはピンクだけど笑ってる時はイエローやオレンジだなんて・・・そんな事言われたら泣いちゃうよ。

 しかも、あんなに大きな花束目立っただろうなぁ・・・

 うん?スーツに大きな花束?

 何その素敵コーデ!私も見たかった!!絶対格好良いじゃん!!


 くぅ、それを他の女性は見てるのか・・・ずるい!

 良いもん、今度仕事帰り待ち合わせてお花買ってもらうもん。

 それくらいねだっても買ってくれるよね?亮さんなら。


「・・・・・」

 いつも私を喜ばせようとするこの彼に私は何かを返せているだろうか。

 目の前の手の平を見つめて考える。

 人の事を『無欲』と言う割りに自分だって欲しい物少ないクセに・・・


「ふふっ。」

 そう思ったら『似た者夫婦だな』と思って思わず笑みが零れてしまった。


「ん・・・」

 っと・・・起きちゃう。


 この手に、指に、いつも翻弄されるんだよなぁ・・・

 ずるいなぁ、私も亮さん翻弄させてみたいなぁ、と思い自分の左手を少しずつ彼の手の平に滑らせた。


「!!」

 手を添えた瞬間、彼が私の左手を包み込む。

「亮さん起きちゃった?」

「・・・ん~・・・」

 ピッタリと体が寄せられているので振り向く事が出来ず彼が目を開けているのか確認出来ない。


 ただ、手を握っただけでそれ以上何もしてこないので寝ぼけての事なのかもしれない。


「無意識か!」

 寝てても人をドキっとさせる色気の持ち主に少しだけ戸惑い、私ももう一度目を閉じた。






温めるテディベアとは、お腹にチンするホッカイロが入ってるテディベアの事です~


立体的なラテアート、可愛いですよね。

しずかの為に作れちゃう亮さんはスーパーハズバンド。



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