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二人で幸せになるために  作者: 新浜ナナ
第二章
71/88

第16話 羽田離婚危機 前編

気になる点があったので15話の前に幕間を挟み込みました(*'▽')

 7月の末にしずかの誕生日がある。

 夏だし、しずかに水着を着せたい、けど他の男には見せたくない、どうする?



 が、深く考えるまでもなく、『完全プライベートビーチのリゾート行けば解決!』と言う答えが出た。


 そしてサプライズでしずかを驚かせよう!と意気込み、内緒にしていた。

 ただ、誕生日当日は平日なのでさすがにサプライズは難しいと考え、その前の土日でこっそり計画していた。






 ********************


「しずか出かけるよ。」

「はーい、どこ行くの?」

「ん~内緒。」

「え~何~?」

 としずかが笑って俺を見る。



 今日はとうとうサプライズを実行する日だ。

 きっと驚いてくれるだろうな、と心の中でニヤつきながら運転する車で羽田に着いた。



「羽田だね。ここに何が?」

「まぁまぁ、着いてきて。」

「うん。」


 手を繋ぎ、一緒にチェックインカウンターへ行き用意していたチケットでチェックインを済ませる。



「えーと、どこ行くのかな?」


 さすがにしずかも困惑顔になってきたので、

「沖縄。」

 とだけ告げた。


「ええ?!急だね。」

「驚かせたくて。」

「うん、もう充分驚いたけどね。」


 と笑うしずかを見て、

(もっとサプライズあるんだけどな)

 と内心でほくそ笑んでいた。






 昼過ぎの沖縄に着くと、やはりと言うか東京より暑かった。そして空が青い!



 若干戸惑いの笑顔を見せるしずかとソーキ蕎麦を楽しんだ後、最終目的地へと向かった。




「こちらがお部屋です。」


 ボーイに案内された部屋に入ると、大きなガラス窓の向こうの景観が目に入った。


「おーさすがのオーシャンビュー!」


 目の前がビーチになっていて、近くに他のコテージも見当たらない。

 完全プライベートビーチだ。



「・・・亮さん、一応聞くけど、今日はここに泊まるのかな?」

 ボーイがいなくなるのを見計らってしずかが問うた。


 テラスへ出ていたので、問いに振り返るとしずかの表情は、『嬉しい』の感情ではなかった。



「うん。あれ・・・?嬉しくない?」

「・・・・・」


 大きく深呼吸する彼女を見て、サプライズが失敗した事を悟った。

 乱れた感情を抑える為の仕草だったからだ。



「嬉しいけど、困る。」

「何で?」


 すごく良い所予約したのに。

 しかも俺の誕生日より前に予約したんだ。

 嬉しいならもっと喜んでくれても良くないか?



 そう思ったら俺も不服顔になっていた様だ。

 一瞬呆れた顔を見せたしずかだったが、俺の両手を握って困った笑顔を見せた。



「多分だけど、誕生日で用意してくれたんだよね?」

「そうだよ。こういう所しずか好きだろ?」


 ハワイが好きなしずかだから絶対喜ぶと思ったのに。


「好きだけど、そういう問題じゃないの。」

「じゃぁ何が問題なんだよ!」


 全然喜んでくれない彼女にイライラして、迂闊にも声を荒げてしまった。


 びっくりした後すごく悲しい顔をしたしずかを見て罪悪感が沸く。



「あのね、せめて地域と泊まりって事を教えて欲しかった。」

「は?」

 ふう、とまた深呼吸をするしずかを見て、彼女が感情を一生懸命抑えていることがわかる。



「沖縄なら日差しが強いからいつもと違うスキンケアをしなきゃいけないし、泊まりなら着替えも必要だよね?」

「どこかで買えば良いじゃん。」

 コンビニである程度の物は手に入る時代だ。



「亮さんいつもそう言うけど、コンビニの物って普段使わないから肌が荒れる事多いの。その後使わなくなるのももったいないし、捨てるのだって環境にも良くないでしょ?事前に教えてくれたらいつも使ってる物用意出来たし、着替えだって、私が胸大きい事忘れてる?そう簡単にこのサイズの下着や服は見つからないんだよ?」

「・・・・・」


 次次言われて、最もだ、と思った。



「水着、着て欲しかったんだよね?だからプライベートビーチのあるここを予約してくれたんでしょ?私が他の人に見られたくないからって。」

「う、うん・・・」


 しずかが見られたく(・・・・・)ないよりも、俺が見せたく(・・・・)ないの方が大きい。

 自分の願望を優先した事を悟られない様にごまかした。



「水着は尚更このサイズを現地で探すの大変なんだよ?」

「あ~・・・水着は用意してあります・・・」

「・・・は?」



 諭す様な優しい声色が急に乾いた冷たい声に変わった。



「見せてみようか?」

「は、はい・・・」



 自分が持っている荷物からハンカチに包んだ面積少なめの白い水着を出して渡した。



「・・・す~、はぁ~・・・・・」


 大きく深呼吸を繰り返すしずかを恐々見守る事しか出来ない。

 多分、じゃなくても怒りMAXだ。



 次の瞬間。


 持っていた水着を大きく振り上げて床に叩きつけた。



「え?え?え?」

「エロじじい!!!」



 困惑していると暴言を吐いたしずかがドアの外へ出た。

 茫然としている場合じゃない、慌てて俺も外へ出た。




「しずか!ごめんって!どこ行くの?」

「帰る。」

「え?!いや、ちょっと待ってよ。黙ってたのは悪かった、って・・・」


 腕を掴みこちらへと振り向かせたしずかが目にいっぱい涙を溜めていた。



 デジャブ!!



 年末付き合いたてに喧嘩したあの光景が浮かんだ。



「ごめん、本当にごめん。配慮が足りなかった。だけど、帰るだなんて言わないでくれ・・・」

「・・・・・わかった。」



 しずかを落ち着かせ、ひとまず自分達の部屋へと戻った。




「先に言っておくけど、それは絶対着ない。」

「はい・・・」

「・・・・・」


 床のマイクロビキニを指差した後、腕を組んでソファに座るしずかは無言で何も言葉を発しなくなった。


(き、気まずい!!)


 こちらは何となく、向かいのソファには座れず床で正座状態だ。

 テラスのパラソルが風で揺らめいていて、さらに奥のビーチが太陽で煌めいているのが視界に入る。

 泳いだら気持ち良いだろうが、今そんな事絶っっ対言えない。



 と、一人掛けのソファに座っていたしずかが徐に立ち上がり、(また外行くのか?)と警戒したら逆側のプライベートビーチの方へ向かった。


 荷物も置いたままだし、裸足になったので、ひとまず帰る、という事態は避けられたかも、と安堵ししずかの後を追った。




 服のまま、波打ち際の少し手前にしゃがみ込むしずかの横へ立ち、

「汚れるよ?」

 と伝えると砂を掴み俺の方へ投げてきた。


「うわっと!いや、服だから良いけど、って、えーっとまだ怒ってるよね?」

「当たり前だ!」


 口調が変わる程、怒り心頭なのだろう。

 さっき謝ったんだけどな~・・・


「さっき謝ったのに何でまだ怒ってるのか?とか思ってるでしょ?!」


 え、エスパー!!


「何で、こんな素敵な所まで来て喧嘩しなきゃいけないの?!」

「えっと・・・」

「しずかが機嫌直せば良い、とか思ってないよね?!」

「!!さすがにそれは思ってないって!」

 嘘だ、ちょっと思った。


「部屋に戻っても何も言わないし、完全に私が許すの待ってる状態なのもムカつく!!」

「う!はい、その通りでした・・・」

 その間、ずっと俺の膝に砂をぶつけてくる。


 怒りが収まるならと、なすがまま俺も立ち尽くすしかなかった。


「場所が変わるだけで、亮さんがしたい事は変わってないの!それわかってる?!」

「う、はい、そうですね・・・」


 場所が変わるのも重要なんだけどな、と考えを巡らせると、

「場所が変わるのが楽しいかもしれないけど、私は楽しくないの!」

 またもエスパーしずかが発動した。


 いや、ちょっと待て。


「しずか、俺とセ、エッチするの嫌になったのか?」

「そういう事じゃない!!!」

 膝に集中していた砂が今度は顔をめがけて投げられた。


「うわっ!!ぺっぺっ!」


 立ち上がり、また目の前で深呼吸をする彼女を見つめた。


「亮さんが私を喜ばせようとしてくれたのは嬉しい。こんな素敵なコテ-ジを用意してくれたのも嬉しい。嬉しくなかったのは1点だけ。はい、考えて。」


 泣き止み、冷静、と言うか、スンっとした表情で俺に問いかける。


「え、え~っとサプライズがうざかった?」

「違う!アホ!!」

「ええっ?!」

 しずかからアホ何て言われるとは思ってもみなかった。


「サプライズ自体も嬉しいの。ただ、嬉しいサプライズとそうじゃないサプライズがあるの!ここまで遠出するなら事前に言って!!」

「え、えーっと確認だけど、答えは事前に言わなかったから?」

「そう!」

「それじゃサプライズにならなくない?」

「アホ!!」

「2回もアホ言わないで・・・」


 すげー悲しくなってきたんだけど。


「前日、ううん、出かける前に一言言ってくれただけで充分サプライズになった。水着は新しいのは用意出来なかったとしてもちゃんと自分のサイズを持って来られたし、他の着替えやスキンケア用品だって、準備出来た。」

「そ、そっか・・・」



「サプライズと言うなら・・・婚約指輪の時のサプライズは完璧でした。すっごく嬉しかった。」

「えーと、それはしずかが準備する事が何もなかったから?」

「準備と言うか、されて困る事が1こもなかった。」

「あ~・・・」

 何となくわかってきた。


 あの指輪を渡すサプライズが、フラッシュモブばりのサプライズだったらしずかは引いてたって事だな。絶対やらないけど。



 もう一度深く呼吸をした後、きつく俺を睨んで言葉を吐き出した。

「ちゃんと事前に言ってくれてた方が、来る途中ドキドキだけじゃなくワクワクも出来たし、ここへ来た時素直に感動出来たし、夜は絶対事前に言ってくれてた方が盛り上がった!」

「え?!!!」

「今日、て言うか、明日も絶っっっっっ対、エッチしない!!!!!」

「な!!!」

「当たり前だ!!」



 うわー!俺は何てミステイクを!!






年内投稿はこれで最後です~

不穏な所で終わりましたが、また新年投稿再開致します。


来年は明るい一年になると良いですね。


皆様に福が訪れます様に。

では、良いお年を(*´▽`*)ノ

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