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二人で幸せになるために  作者: 新浜ナナ
第二章
68/88

第14話 プレゼントは・・・わ・・・わ・・・わた・・・(無理ぃ!)

ブクマありがとうございます(*´▽`*)♡

 底に向かって白くなっていく青いグラデーションのフラワーベースに、イエローとホワイトの花々が映える。


「うん!綺麗!!」



 角柱型のガラスのこのフラワーベースは、プロポーズされた翌日、箱根で亮さんが買ってくれた物だ。


 衝動買いするには少々お高めなこのフラワーベースをしばし見つめていたら、「気に入ったなら買うよ?」とさらっと言う彼に、(イケメン!!)と内心思ったものだ。



 一瞬遠慮をしかけたが、その前に新居で使うお揃いのグラスを私が買うとゴリ押しで通したのと、断った場合の彼の悲しそうな顔が浮かんだので、素直に買ってもらう事にした。




 自分で買える物は自分でいつも買っちゃうからな~

 おねだり自体滅多にしないし、せいぜい帰り道に寄るコンビニで「アイス買って?♡」て言うくらいだから、奢りがいが無い、と今も思われてるかも。



 この前聞いちゃったし、聞く前からお金に余裕のある人だとは思ってたけど、どうも買ってもらってばかりは性に合わない。



 彼の自尊心を満たせて、私が罪悪感を感じない適度なプライスのおねだり品、考えておくべきかもしれないなぁ。






『ガチャガチャン!』

 リビングで考え事していたら玄関から鍵を開ける音が聞こえた。



「ただいま~」

 休日出勤していた彼が帰ってきた。


「おかえりなさい。」

 ソファから立ち上がり玄関へ向かおうとしたが、ちょうど彼が廊下からリビングへ入ってきた。



「玄関の花、すごい良い香りしたよ。」

「あ、良かった~それね、シャクヤクだよ。亮さん疲れて帰ってくるかも、って思って昼間買ったの。」



 花びらを幾重にも重ねて咲くこの花の姿や色合い、香りが大好きで独身の頃も良く買っていた。

 ただ、花持ちが良くないので、コスパ的に以前は一輪で買っていたのを、彼のおかげで余裕がある今はドーン、と、いや、そんな多くはないけど、束で購入した。

 だから、余計に香りが際立ったのだと思う。



「俺の為に?」

「うん。お休みの日にお疲れ様でした。」


 私に近付いてきた少しお疲れな彼が、お花の香りで癒されたら良いな、と思った。



「・・・あとちょっとで充電完了する。」

「充電?」


 モバイルバッテリーで充電でもしてるのか、何故それをわざわざ言うのか?と一瞬思った隙に視界が暗くなった。


「しずかも良い香りする・・・」

「・・・!」


 めちゃめちゃ嗅いでる!


「亮さん・・・お風呂まだ入ってないからあまり匂い嗅がないで?」

「あれ、そうなんだ。じゃぁ・・・一緒に入る?」

「なっ!入るわけないでしょ!」

わけない(・・・・)とか言うなよ~悲しいじゃん。」

「明るい所で裸見せるの恥ずかしいって何度も言ってるでしょ?!」

「いや~それ以上に恥ずかしい事してるのに、何でそこは(かたく)なかね?」

「おい!!」

「フハっ!!ごめんって。じゃぁ俺先お風呂入って良い?」

「うん・・・」



 休日出勤で絶対疲れて帰ってくると思ったのに、元気じゃん!!






「お風呂あがりました~」

「おーじゃぁ作り始めるけど?」

「うん、ドライヤーしてそっち行く~」


 浴室から出て声をかけ、自室へドライヤーをかけに行く。



 お風呂上りに亮さんの作ったカフェラテが飲みたくて、彼がお風呂から上がってきた時にお願いしていた。



「どうでしょう?お姫様。」

「何それ~ふふっおいしゅうございます。」



 昼間に自分で作ったのはおいしくなかった。

 自分の腕をあげようと一瞬思ったが、彼の悲しい顔が浮かんだので、カフェラテを作るのは彼の専売特許にしなきゃかもと思った。



「やっぱり自分で作るより亮さんが淹れるカフェラテの方が美味しいなぁ。何でだろ?」


 作り方はもちろん、分量や温度までちゃんと教えてもらった通りにしているのに。


「愛情の差じゃない?」

「!!」


 全くもうこの人は・・・

 何で照れずに言えるんだろう。



 こちらが照れてしまって、しばらくマグカップと睨めっこをしていたが、聞きたい事があったので視線を戻した。


 ずっと私の事見てたのかしら?と思うくらいすぐに彼と目が合い、柔らかい笑顔を向けられた。



「ねぇ、亮さん誕生日何欲しい?」

「しずか。」

 即答。

 しかも、またそれか・・・


 予想はしていたが、以前も聞いた事ある様な答えが返ってきてしまった。



「一応聞くけど、それは嬉しいの?」

「めちゃくちゃ嬉しいに決まってる。」

「そ、そうですか。・・・検討します。」

「え?!まじで?!!」


 すごく驚いた表情をしている。怒られると思ってたのかも。


 まぁ、誕生日くらいは良いかな。

 そう思案していると、


「リボン巻いて『プレゼントはワタシ♡』ってやってね。」


 と調子に乗ってふざけた事を言うので、脛を蹴ってやった。








(う~ん・・・ネクタイとかタイピンはこだわりありそうだから、無理かな~・・・)


 ただいま、先に出勤した夫のクローゼットを物色中。


『プレゼントはワタシ♡』だけではダメだろう。

 物質的にちゃんとプレゼントを渡したい、と思い彼のスーツコレクションをしばし眺めていた。


 スーツだけではなく、ネクタイやタイピン、シャツ等も吟味して吟味して購入したと窺えるラインナップだったので、アパレルとは言え分野が少し違う私は、得意のカジュアルで推そうと考えた。








 ********************


「サコッシュ?」

「うん。亮さん私が引っ越しして荷物整理してる横で色々私の私物見てたでしょ?」

「あ~そう言えば。」

「スポーツっぽいアイテムって持ってない、って言ってたからそういう小物どうかな?って。」



 本当はマウンテンパーカーとか大物が良いんだけど、梅雨真っ只中で売ってるかなぁ。

 逆に梅雨だからこそ売ってたりして。

 まぁ両方買っても使えるし、問題ないでしょ。




 という訳で、新宿のスポーツ専門店へやって来た。

 あるある!マウンテンパーカーもサコッシュも!


「ノース・フェイスか~。大学生の時着てたな~。」

「あれ、そうなの?」

「就職して以降は、カジュアル着なくなったから。実家にはあるかも。いや、多分萌が勝手に着てそう。」


 と笑って言う彼を見て、少し思い留まった。


「しずか?」

「私ね、マウンテンパーカーとサコッシュとかどうかなって勝手に思ってたんだけど・・・」

「うん。」

「もしかして、押し付けじゃないかな?って今思ったの。」

「え?」



 ライフステージが変われば服の趣味が変わるのなんて当たり前だ。

 持ってないから、の理由だけでプレゼントして良いのだろうかと思い始めてしまった。



「もうこういうスポーツアイテム好きじゃない?」

「え?!そんな事はないよ。ただ、しばらく着てないからどう合わせるかはわからないけど。」

「難しくないとは思うけどな・・・」

「しずかはどうしてこれを俺にプレゼントしてくれようと思ったの?」

「似合うと思ったから。」

「え?」

「絶対似合う。いつも着ているのとちょっと変えたらもっとかっこいい。」

「へ、へぇ~・・・」


 目の前のマウンテンパーカーを見て、彼が着ている姿を想像した。

 絶対、めちゃめちゃかっこいい。


 と、ふと彼を見たら口元に手をやり目線をどこかに泳がせていた。



「どうしたの?」

「な、何でもないよ。しずかが似合うって太鼓判押してくれるなら・・・選んでくれますか?店員さん。」


 優しい笑顔を向けてくれた。


「うん!!」


 良かった。私の独りよがりのプレゼントじゃなくて。








 ********************


(うーん・・・思った以上に恥ずかしい!)

 会社で捨てられそうになっていた為譲ってもらったベビーピンクのサテン生地を、お風呂上りの自分の胸に巻いた。


 きゅっ、と正面でリボン結びにしながら、「何か作るの?」とにこやかに同僚から言われた事を思い出した。


(すみません、何も作りません。しかもちょっと邪な使い方します・・・!)



 下はショーツ、しかも彼が好きなあれ(・・)、を履いた上に巻いて後ろでリボン結びにした。



(ニヤニヤしながらリボンを解く彼の様子が手に取る様にわかる・・・!)



 鏡でバカみたいな自分の姿を確認し、この後を想像し赤面した。




「亮さんお待たせ・・・」

 事前に言っていた通り寝室を暗くして待っていた彼の目の前に恐る恐る現れた私を見て彼が絶句する。


「え、やっぱり変?」

「違う違う!想像以上に良い!!」

「あ、そう・・・」

「どうしよ、俺手加減出来るかな。」

「・・・・・」


 誕生日自体は明日だから、日を跨いで欲をぶつけてくるんだろうな、ともう覚悟を決めた。




 ********************


「んん・・・亮さん誕生日おめでとう・・・」

「え?あ~日付変わったのか、ありがとう。」


 俺の腕の間にいるしずかが俺を見上げて祝福してくれた。

 しずかの手が伸び左の頬に触れたので、そこに自分の左手も重ねた。



「今日さ、俺の誕生日じゃない?」

「うん?知ってるよ?」

「今日、しずかの時間全部もらって良い?」

「っ!!どういう意味・・・?」


 目を真ん丸に見開いて、まるで何かに驚いた猫の様だ。


「え、わかってて聞いてる?それとも言わせたい?」

「ちょっ!!!ねぇ、月曜仕事休まないからね!」

「わかってる、わかってる。休憩挟むから。」

「ちょっとそれって・・・・んっ!」

「ん、おしゃべり終わりね?」



 ちょっと小突かれたり蹴られたりするけど、最終的に俺の希望を叶えてくれるんだよな。



 素敵な奥さんを貰えてこれ以上ないくらいの幸せな誕生日を過ごした。





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