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二人で幸せになるために  作者: 新浜ナナ
第二章
66/88

第12話 日常と、

ブクマありがとうございます(*´▽`*)♡

「あれ・・・やっぱり違う・・・」

「どうしたの?」


 ダイニングテーブルの向かいに座るしずかが、お茶碗を持ったまま止まった俺を見る。



 婚姻届けを提出したその日の夜、

「昼間、豪華にしたから夜は自炊しようね。」と言う事でしずかが夕飯を作ってくれたのだが・・・


「ご飯が美味い!!」

「なんだ、良かったね。」

「違う!何で?」

「さっきから何言ってるの?」



 不思議顔で俺を見つめるしずか・・・可愛い・・・

 じゃなくて!!



「前俺が炊いた時と味違うと思うんだ?お米変えた?」

「変えてないよ。亮さんも味違うのわかってたんだね。」


 家で米をあまり食べてこなかったので、俺の家には米はなかった。

 だから、しずかが引っ越し元から持って来た米を使っている筈だ。

「お米屋さんから直接買ってる」と言う実家からいつも分けてもらっている物なので、引っ越し数日後に食べた時「おお!米屋のご飯ってやっぱり違うんだな」と感想を持ったくらい美味かった。


 あまりに感動してその後自分で炊いたら美味しくなかった。

 気のせいかまたは体調が違うのかも、と気にしていなかったが、今食べたしずかが炊いたご飯はあの時の様に美味い。



「亮さん、お米洗う時最初から水道水使ったでしょ?」

「うん・・・何でわかった?」

「あーじ!違うのわかったでしょ?別に水道水でも美味しくないわけじゃないから言わなかったんだけど、」

「うん。」

「お米はね、最初と最後のお水を良く吸うの。だから洗い始めはミネラルウォーターで軽くすすいで一旦捨てるの。その後数回研いで、ミネラルウォーターのお水に浸してから炊いたんだよ。だから美味しいって感じるんだと思う。」

「へぇ~~~!!」

「ひとつ賢くなりましたね。」

 ふふん、と自慢げに言うしずかが可愛らしくて意地悪をしたくなった。


「先生!夜も指導お願いします!」

「ちょっ!!バカなんじゃないの?!」


「またセクハラして!」と顔を真っ赤にして頬を膨らませたしずかが食べる様を、ニヤニヤしながら眺めた。






「ん・・・緊張してきた・・・」

「っふ・・・何で?」

 ベッドの端に座ってキスをするのを止めてしずかの表情を窺う。


 灯りは消しているがうっすら見えるしずかは眉を寄せ戸惑っている様だった。


「だって・・・亮さん初夜とか言うから・・・」

「え?!」

 あれ真に受けたのか?!


 可愛すぎて震える・・・!!

「・・・全然慣れないしずかを愛おしく思うよ。」

「は?」

 バカにされたと思ったのかムッとしたしずかをそっとベッドに横たわらせた。



「怖い顔しないで?俺の奥さん。」

 おでこにキスをすると怒っている顔から照れた表情に変わった。

 は~困ったなぁ。


「初夜・・・はわかったけど、明日買い物行くんだからちゃんと手加減してよ?私の・・・愛しい旦那サマ。」

「!!!」

 無理無理!!

 反則だ~!こんなもん。

 伏し目がちで下からそんな顔見せられるのとか、まじ無理!!!


「・・・俺を煽るのがうまくなったね。」

「は?!煽ってないし!」

「はいはい、かわいいかわいい。」

「なっ!むぐっ!・・・んん・・・」

「ちゃんと手加減しますよ・・・」


 力が抜けて行くしずかを抱きしめて、転がされない様に気を付けよう、そう思った。




 ********************


「あれっ?」

「どうかした?」

 浴室からしずかの声が聞こえた。

 何だろうと思い俺も浴室へ向かう。


「シーツ乾いたかな?って思って洗濯機見に来たんだけど、そもそも洗濯してなかったみたい・・・」

「そうなの?」

 朝方しずかが洗濯するね、と言ってた筈だが・・・


「スイッチ押し忘れたのかも・・・ごめんね。」

 と言って俺の袖を掴み上目遣いで眉を寄せた顔を向ける。


「んっ?!・・・・・何でキスしたの・・・?」

「えっ?かわいかったからだけど?」


 すっごい睨んでくるけど、それもただ可愛いだけなんだよな~

 ほんわかしていたら、


「全くもう・・・」

 と呆れた様子で改めて洗濯機を眺めた。


「でも、どうしよっか?シーツ他にある?」

「もう1枚は・・・」

 と、床に洗濯待ちのもう1枚のシーツを指差した。


「これは・・・今朝のだね。」

「うん。」

「他には?」

「ない。」

「うむうう・・・」


 ん~シーツ2枚だと足りないのか。

 付き合ってた時は週末しか会ってなかったからそこまで気が回らなかったな。


「仕方ない。今日は私が持って来たお布団で寝ようか?」

「まぁ夜も遅いし、それしかないね。」

 シングルだからちょい狭いけど、それだけしずかとくっつけるからまぁ、良いか。



「これまで汚れたら大変だから今日はエッチなしね。」

「ええっ?!!」

「何よ?」

「いや、だって、洗濯機のシーツ洗えば明日には乾くでしょ?」

「また何か不手際あって乾いてないとか嫌だし、そんな毎日しなくたって・・・」

「いや、でもさ!」

「も~!とにかく!今日はなしね!」


 そんな・・・・・





 ・・・と、引っ越し当初の出来事があり、今日やっとシーツを買いに来る事が出来た。


 引っ越ししてすぐはお互いに都合が悪くしばらく買いに行けなかったので、それはそれは慎重に、絶対不備が無い様に2枚しかないシーツを洗濯して何とか過ごしていた。




「へ~、確かに良いね。」

「でしょう?!前から気になってて。これから夏になるしリネンのシーツ涼しいよ?」



『シーツなら・・・!』としずかの強い希望で無印に来ていた。


 確かに触った瞬間の手触りが涼しい。こう言うの何て言うんだっけな?



「乾燥機も良いけどさ、光熱費かかるし、天日干しも気持ち良いよ?夏の前に梅雨があるし、今日何枚か買って行こう?」

「あ~それもそうだな。」


 と、寝具売り場のシーツ類を眺める。

 どれもシンプルで手頃な価格だが、ちょっとだけ高級感を感じるのは気のせいだろうか。



「無地も良いけど、ストライプのリネンも良いね。」

「私もストライプの方が好き。これなら亮さんの部屋にも違和感ないでしょう?」

「俺の部屋って言うか二人の寝室な?」

「あ、うん・・・」


 まぁ、二人の寝室とは言え、パソコンデスク等前俺が寝室に入れていた物はそのまま新居の寝室に入れたから『俺の部屋』と言われればそうなんだけども。


 確かにこのサックスブルーのストライプは男性の部屋にあっても違和感がない。


 新居が角部屋になった事で、リビングの窓が広くなり自動的にカーテンの枚数が不足した。

 しずかが前住んでいた部屋のカーテンがなんと、枚数と丈も偶然にもぴったりで、「無駄に買い替える必要もない」「俺が嫌じゃないなら」とグレーからサックスブルーのカーテンに変わった。


 今回のシーツといい、しずかが前住んでた家の色合いに似て来たな、と思い出し、少し笑ってしまった。


 それをしずかに見られたが、何の事かはわかっていないのか、しずかもにこっと笑ってサックスとブラウンのストライプのシーツを手に取った。


 おっと、自分で買いそうだな。

「しずか持つよ。」

「ありがとう~買い終わったらお茶しよう?」

「りょーかい!」




 ********************


 シーツやその他の買い出しを終えて、カフェに移動した俺達は、天気が良かった事もありテラスを選択した。

 間もなく運ばれて来た、それぞれのドリンクで一息だ。


「シーツ結構重かったな。」

「だよね。ありがとう。持ってくれて。」

「それくらいお安い御用だよ。」

 えへへ、とお互いを見つめてイチャイチャしていると、


 カツカツ!とヒールの音が聞こえてきた。


「ちょっと!!」

「うわっ!!」

 テーブルをバン!と急に叩かれた。

 びっくりしたなって、あれ?この女性は・・・


「仕事が忙しいってずっと私とのお見合い保留にして他の女とデートしてるってどういう事よ?!!」

「は?!人聞きの悪い事言うな!話し聞いてすぐ正式なお断りを君のお父さんにしたよ!」


 2度しか会っていないが、派手な外見だったので覚えている。

 秋葉副社長の娘だ。


「え?!」

「お父さんから聞いてないのか?」

「聞いてない・・・あなたが仕事で忙しいからって・・・」

 しばし茫然としていたが、すぐに切り替えたのか、キっ!!としずかを睨んだ。


「あなた誰なの?!」

「誰って・・・彼の妻ですけど。」

「はっ?!」

「!!」

 つ、妻!そっか、そうだよな。昨日入籍したもんな。


「どうしたの?」

 わずかにニヤついて顔を赤くしてたらしずかに見つかった。


「いや、妻、だよなぁ・・・って感動した。」

「も~・・・」

「何私の前でイチャイチャしてるのよ!!」

 苛ついた娘は再び俺達の机を叩いた。

 コーヒーこぼれるだろうが!


「え、だって夫婦だし。で、あなたはどちら様ですか?」

 しずかが冷ややかな声色と表情で副社長の娘に問う。その気迫に娘が少し後ずさる。


「だ、誰って・・・私はこの人の・・・」

「お見合いはすぐ断った、って夫は言いました。聞かされていないのはかわいそうだけど、私達に突っかかるのはお角違いですよ。お父さんに文句言いなさい。」

 夫!おお・・・聞いたの2回目だけど、やっぱり良いな!


「パ、パパに言ってあんたなんかクビにしてやるんだから!」

 ちょっと前ならともかく今の副社長にそんな権限あるかな?

 俺が疑問に思っていると、

「そんな事出来るの?」としずかも聞いてきた。

「いや~多分君がお父さんに言っても無理だと思うよ。」

「・・・ですって。」


 しずかは娘の方へ向かいはっきりと告げた。


「な・・・何よ!こんなおばさんより私の方が若くてかわいいんだから!!」

「はぁ?!」

 しずかをおばさんだと?ふざけんなよ、と文句を言おうとすると、

「そう、じゃぁそのおばさんにあなたは負けた訳だけど。」

 と冷静にしずかが反論した。


「うっ!」

「若くて可愛い、以外にあなたに何があるの?」

「うう!」

 しずかもしかしなくても激おこか・・・?


「ねぇ、婚姻している男性に手を出すとどうなるかわかってる?」

「え・・・」

「もし、しつこくする様ならストーカー被害も付け加えられるけど。」

「え・・・」

 娘が段々と泣きそうな顔になってきた。


「あなたのお父さん慰謝料払っちゃいそうだから示談には応じずに法定でるわね?」

「うう・・・」

 しずかに詰められ反論が出来ないと思ったのか半べそで去って行った。



「やりすぎちゃったかな?」

「しずか珍しくすごい怒ってた?」

「だって勝手に亮さん辞めさせるとか言うし、あと私立場を勘違いして偉そうにしてる人大嫌いなの。怖かった?」

「いや、いつもみたいに諭したりしないからどうしたのかと思って。」

 そうして相手が改心してしずかを気に入るのがいつものパターンだ。


「あの子は多分耳に入らない子だと思う。それより犯罪者になる可能性言った方が効果的かなと思って。ストーカーはともかく、不倫で法定にまで出るものなのか知らないけど、あの子頭悪そうだったし、大丈夫でしょ。」

 おおお辛辣・・・


「幻滅した?」

 いつもとは違う様子のしずかを驚いた表情で見ていたら、少し困った顔で俺を窺った。


「そんな事ないよ!解決したと思ってたのに解決してなくてごめんね。あとしずかも人間なんだって安心した。」

「人間だよ?!何言ってるの?」


 いつも正義感に溢れてて、誰にでも優しく対応するから、仙人みたいだなーって思ってたんだよな~






師走って本当に忙しいですよね・・・

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