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二人で幸せになるために  作者: 新浜ナナ
第二章
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第8話 ダイヤである意味

ブクマありがとうございます(*´ω`*)♡

 俺の家族へ挨拶をする1週間前。

 新居の下見をし、翌日不動産会社へ契約した後、近くのピザ店へランチをしに来た。




 店内の窯で焼いた本格的な熱々のピザがテラス席の俺達の元に運ばれた。


「あちっ!はふ・・・うまいな!」

「おいし~」

 定番のマルゲリータとしずかの希望のゴルゴンゾーラチーズのピザを交互に食べ、着実に結婚へ向かっている事を実感しつつ、重要なアイテムの話しをしていない事に今更ながら気付いた。



「そうだ、しずか婚約指輪と結婚指輪どうしようか?」

「あ、そうだよね。うーん。」

 しずかが自分の指に着いている3つの指輪を眺める。


「どこが良い?ハリーウィンストン?カルティエ?あ、ブルガリもあるね。」

 値は張るが、まぁ俺の貯蓄的に問題無いだろう。


「おお、錚々たるメンツ・・・」

「意外とティファニー好きだったりする?」

 ティファニーはしずかのイメージでは無いんだけども。

 挙げた3つのブランドには好反応ではなかったからな。



「いや、あの・・・・・」

「ん?」

「ハリーウィンストンなんて指輪付けたら分不相応で私の指がもげます。」

「フハっ!何言ってるの?」

 重いって事?そんな大きな指輪なイメージかな~ハリーウィンストンって。


「全然しっくり来ないんだよね・・・縁もゆかりも無さ過ぎて。」

「婚約指輪に縁もゆかりもとかある?」

「ハワイが好きな二人ならハワイアンジュエリーの婚約指輪とかしている人結構いるよ。」

「あーそういう事。うーん俺達の場合は?」

 しずかはハワイ好きだし何回も行った事あるって言ってたけど、俺は行った事ないしな~



「あのね・・・これ見て。」

 しずかがピザで汚れた手を慌てて拭いてスマホをいじり始めた。


「うん?へ~可愛いね。あ、これ結婚指輪だね。ちょっと海っぽいんだけどこれどこ?」

 見せられた画像は指輪やピアスの画像だった。写真の構図や全体的なイメージが本当に海っぽい。


 えへへ、と嬉しそうにしずかが笑った。








 ********************


「こんにちは~・・・」

 両家への挨拶をそれぞれ済ませ、ゴールデンウイークに突入して早々、先日しずかと話した婚約指輪と結婚指輪の下見の為、珍しく電車それも江ノ電に乗って出掛けていた。



「いらっしゃいませ!あら・・・あ、中指の指輪・・・」

「はい、こちらで購入しました。お友達に評判良くて。」

「確かお子さんのいるお友達といらっしゃいましたよね?」

「え?!覚えてるんですか?すごい!」



 しずかに連れられてきたのは鎌倉の海のすぐ傍にある小さなジュエリーショップだった。

 俺としずか、あと一人でも来店したらぎゅうぎゅうになるくらい小さい店だ。



 50代くらいの女性の、恐らく店主に出迎えられた。

 しずかの指輪を見て何やら当時の事を話している。

 そうか、右手のスクエアカットのターコイズのシルバーリングはここで買ったのか。



「あのご相談がありまして・・・」

「婚約指輪と結婚指輪をオーダーしたいのですが。」

 しずかに割り込んで俺が店主にお願いをした。


「まぁ!ご結婚ですか。おめでとうございます。」

「ありがとうございます。婚約指輪はダイヤでお願いします。」

「えっ?亮さん、ダイヤで決定なの?」

「うん、それはしずか承諾して。譲れない。」

「わかった・・・」


 チラチラとカラーリングを盗み見しながらも渋々承諾してくれた様だ。

 うん、しずかがこの辺りのカラーリング好きなのは店に入ってすぐわかったよ。


「その辺りの指輪は今日普通に買ってあげるから。」

「へっ?!!」

「まぁまぁ。優しいご主人ですねぇ。・・・ダイヤにする理由を伺っても宜しいですか?」

「え、いや・・・一番硬い宝石で、二人の間を壊す事の無い様にって、ベタですけど・・・」


 言ってて恥ずかしくなってきたぞ!!

 て言うか、婚約指輪って普通ダイヤモンドだよな?!



「畏まりました。何となくダイヤとおっしゃっている様でしたらもう少しご相談しようと思いましたが、素敵な理由でしたのでダイヤでお作り致します。」


 おお、客が決定するものじゃないんだな・・・試されたのか、今。


 先程の自分の発言に顔を真っ赤にしていたら、

「亮さん・・・」

 としずかが感動して目を潤ませていた。




「デザインもご主人がお決めになりますか?」

「えっ、いやそれは良くわからないのでお任せしたくて・・・」

 それは俺の分野じゃないんだよな。プロに任せたい。


「あの・・・今着けている指輪と組み合わせられる様にしたいです。いくつか提案頂けますか?」

「もちろんです。ではいくつか既存のデザインお見せしますので、その中から後日ご提案でも宜しいですか?」

「はい!」

「ご主人はお仕事での服装は?」

「スーツです。」

「ではスーツに違和感の無い結婚指輪に致しましょうね。」


 おお、ここまで気配りしてくれるのか。個人店ってすごいな。






 その後しずかは、海のきらめきの様に見える青い石の指輪と淡水パールのピアスと指輪、濃いピンクのピアスで悩んでいたので全部まとめて買った。


 だって、ここのアクセサリー安い!!

 前挙げた店の1個分にもならないのでは?と思ったくらいだ。




 店を出て、

「すぐ近くに海あるからちょっとだけ行こう?」

 と言うしずかの後をついて行くと本当にすぐ海に着いた。



 俺が買ったアクセサリーの袋を大事そうに抱えている。

 ブランド物には見向きもしないから無欲かと思ったけど、しずかがこういう物でちゃんと喜んでくれると知って少し安心した。



「亮さん・・・ありがとう。こんなに買ってくれて・・・ダイヤの理由も嬉しかったよ・・・」

「ちょっと、恥ずかしいのでその話し止めて下さい。」

「何で~?ふふふ!!」

 とご機嫌で俺の腕に絡まって来る。


「乙女だねぇ。」

「言うと思ったんだよ!!」



「ね、開けても良い?」

「もちろん。」

 そう言うと即座に小さめの紙袋の中を物色し、箱から一つの指輪を取り出した。


「わぁ、綺麗・・・見て、()に透けて元のブルーがグリーンやパープルに見えるよ。」

 そう俺に体を寄せ頭上に上げたリングをクルクルと手で回転させている。



 店主は確か・・・バイカラータンザナイトと言っていたか。

 本当に角度によってブルーがグリーンやパープルに見える。すごく不思議な石だ。


 濃いピンクの石はウォーターメロントルマリンと言っていた。

 西瓜には見えないが・・・

 でもしずかが好きそうだし、しずかの耳に似合いそうな石だと思った。



 ふとしずかを見ると淡水パールの指輪も開けて見ていて静かに泣いていた。


「えっ?!どうした?!」

「ちょっと感動しちゃって。」

 えへへ、と俺に泣き笑いの表情を見せた。



「こんなにいっぱい買ってくれて、婚約指輪も考えてくれる旦那さんで幸せだなぁって。」


 本当にしずかは良く泣くな、と思ったらふいに頬に柔らかい感触がした。


「ありがとう。大好き。」

 一瞬の事で把握出来なかったが、きっと背伸びをしてキスをしてくれたのだろう。



 まばらとは言え、人もいるのに外でしずかからキスをしてくるのはとても珍しい。

 よほど感動してくれたのだろう。


「・・・俺もこんなに喜んでくれる奥さんで幸せだよ。」

 少しだけもらい泣きをしてしまった。




「あのさ、どっちでも良いんだけど、今日買った指輪を婚約指輪が出来上がるまで着けてくれないか?」

「うん、良いよ。」

「あれ?あっさり。」

「私が渋った時とはもう状況違うよ。ちゃんと亮さんのお嫁さんになるんだし、着けますよ。」


 ふふっと笑って俺に軽く抱き着いてくるので抱き締め返そうかと思った所で、


「ねぇ!」

 と体を離されてしまった。

 良い所だったのに・・・


「なに?」

 とは言えしずかの髪を撫でながら次の言葉を待った。



「指輪着けて?あ、本番まで取っておいた方が良いかな?」

「ああ。良いね、どっちにする?」


 真剣に悩んだ表情でしばし考え込むと、


「淡水パールの方!」

 とキラッキラの笑顔を俺に見せた。


「フハっ。了解。予行練習だね。」

「ふふ、ドキドキする。」




 しずかの左手を取り、スタンバっていた右手の指輪をゆっくりと薬指に滑らせた。


 ・・・結構緊張するな!今やれて良かった。

 実は指輪をプレゼントした事はあっても、実際に着ける事はしてこなかった。


 しずかは俺に初めてを色々くれるな、と思ったら、


「亮さん泣いてる~」

 と笑って言うしずかこそ、また目に涙をいっぱい溜めていた。




「そろそろ行こうか。あ、指輪しまう?」

「ううん、もう今日から着ける。」

「そう?俺は今すごく嬉しいです。」

「何言ってるの~?」

 二人の世界に浸っていると、


「あ、あの!すみません。」

 声の方へ二人して顔を向けると、肩にカメラを2台下げている40代後半くらいの男性に呼び止められた。


 若干警戒の顔を浮かべてしまったのだろう、

「怪しい者ではないです~」

 と気の抜ける様な声でポケットから何かを取り出した。


「ワタクシ、こういう者でして。」

「カメラマン・・・プロのですか?」

「ええ、主に風景の写真を撮っているのですが、お二人があまりにも良い雰囲気だったので思わずシャッターを切ってしまいまして・・・そしたらですね、」


 そう言って、カメラの一つの画面を見せてくれた。


「わぁ・・・素敵。」

 しずかも画面を覗き込み思わず感想が漏れてしまった様だ。


「確かに良い写真ですね。」



 画面には先程の指輪を着けている俺達が写っていた。

 逆光気味で俺達の顔は良く見えていない。だが、バックに写っている海が太陽の光を反射し、それが余計に指輪を着けている場面を強調していた。

 その後の泣き笑いの二人も撮っていたらしく、それらも何だが良い表情をしていた。


「無断で撮って申し訳ないと思ってます。ただ、自分で言うのも何ですが、思いの外とても良い写真が撮れたのでこれは自分の中でだけで完結してはいけないと思い、思い切って声をかけた次第です!」

「と言うのは?」

「写真を送りたいのでご連絡先を伺えないかな、と思いまして。」

「・・・フェイスブックの連絡先で良ければ。」

「ああ!もちろん!それで構いません!」

 写真は素晴らしいが、いきなり会った人物に電話番号等教えられる筈も無い。


「それと、商業利用やインターネット上で使う前に必ず私に連絡下さい。私達は一般人ですので無断で使用しない様お願い致します。」


 芸能人の無断使用はもっとダメだと思うが。


「もちろんですよ~こう見えてもワタクシ、プロですからね~そういうのはわきまえてます!」

 ドン!と自分の胸を叩きむせる目の前の人物を見て、そこまで警戒しなくても良いか、と思ってしまった。



「では後程送りますね~!!」

 ヒラヒラと大きく手を振るおじさん、敢えてそう呼ぶ方がしっくりくる人に見送られ海を去った。



「何かびっくりしたけど、鎌倉散策続けようか。」

 俺の腕に手を添えてしずかが顔を覗き込んでくる。



 鎌倉か・・・

 クリスマスのデートで鎌倉をチョイスしたもんな。あれしずかすごい感動してたし。

 縁もゆかりも、ってそういう事か。


「しずか、結婚式場ってさ・・・」

「うん、私もあそこしかないと思ってる。」

 二人で顔を見合わせて頷いた。





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