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二人で幸せになるために  作者: 新浜ナナ
第二章
61/88

第7話 初めまして

ブクマ&評価ありがとうございます!! ヽ(*´▽`*)ノ

 平日と同じ位の時間に起きて、伸びをしながらリビングのカーテンを開けた。

 今日も快晴で、空が青々してる。所々浮かんでいる雲は真っ白で早くも太陽の眩しさを現していた。



「う、ん・・・」

 振り返ると寝室でまだ寝ぼけている彼がいる。


 目覚ましより早く目覚めてしまい、アラームは止めた。

 ここの所彼も忙しくしていたので、もう少し寝かせてあげようと、彼の腕から逃れ放っておく事にした。








「しずか、土曜にうちの実家行くんだから金曜俺ん()泊まったら?」

 亮さんのご家族に挨拶行く前日、彼の家に泊まる事を提案された。


「いや、忘れ物とかあったら困るし、挨拶に気を回したいからごめん。」

「ええ~・・・じゃぁ俺がしずかの家泊まる。」

「良いよ。」

「あ、ほんと?」

「うん、当日朝(うち)に迎えに来るのも大変でしょ。私が最寄り駅まで電車で行っても良いんだけど。」

「いや、泊まりじゃなくっても迎えに行くし。でもしずかの家泊まるのだと俺も確かに楽だな。」

「でしょ。あ、朝エッチはやめてね。」

「今から釘指す?」

「夜もしない、と言われたい?」

「いやいやいや!!すみません、朝はしません。」

「はい、そうして下さい。」


 苦笑いする彼が可愛くて愛おしかった。



「思いの外またしずかの家泊まる事になったね。」

「そうだね。引っ越し準備とかあるともう1回くらい(うち)泊まる事ありそうだね。」

「毎回最後と噛みしめながら泊まるわ。」

「やめてー。泣いちゃうかもしれないでしょ。」

「で、泣いたしずか慰める。」

「もう~」






 そんなやり取りをしていた通り、昨日の夜はそこそこで止めてもらえた。



 顔を洗いスキンケアを終え、朝食の支度をする。


 静かに行っていたつもりだが、それでも無音では済まないので彼が起きてしまった。

 欠伸をし、のろのろとリビングへ顔を出すのが見えた。


「おはよ・・・ふあ・・・」

「おはよ~起こしてごめんね。」

「ん~大丈夫・・・」

 冷蔵庫を閉じたらすぐ横に彼が立っていて、ハグをしてきた。

 まだ寝ぼけているのか私を抱き締めて体をゆらゆらとさせている。おでこのキス付きで。


「亮さん、ゴハン作れないから離してくれる?」

「しずかからチューしてくれたら離す。」

 また女子みたいな事を・・・


 ほっぺだと絶対納得しないでやり直しになると予想して、つま先を立て彼の唇に触れた。

 案の定、彼は私の後頭部を掴んでしっかりとしたキスを返してきた。


 掴んでいるのがベーコンで良かった。

 卵だったら潰してたかも。


 朝はしないよ、と宣言していたのでこれくらいは許してあげよう。






(この服装で大丈夫かな・・・)

 アイボリーのスタンドカラーのジョーゼットブラウスは襟元にギャザーがたっぷり入っていて、袖もふわんとしている。

 Aラインのドットのサテンジャガードのマキシスカートにネイビーのジャケットだと硬すぎるので、せめて素材を麻にした。

 多少、印象が和らぐだろう。

 白と紺で暗い為、ローヒールのパンプスはスエードのカナリヤイエローにした。



 鏡で全体を確認する為左右にくるくるしていたらリビングのソファで寛ぐ彼が視界に入った。


「亮さんは準備終わったの?」

「うん。」

「あ。」

「うん?」

「素敵なジャケット着てらっしゃいますねー」

 彼が着ているジャケットは、出会ったその日に作成を依頼された、付き合うきっかけにもなった物だった。


「あ、そうでしょ?これ俺の大好きな人が作ってくれたんです。」

「・・・・・」

「人に接客ごっこ付き合わせて照れないでくれる?」

 ふざけて接客風に接したら彼からの返しに照れてしまった。

 手で顔を覆って・・・メイクが落ちるからギリギリの所で覆った。


「も~・・・好き。」

「俺も・・・」

「ちょっ!ストップストップ!リップ落ちちゃう。」

 抱き着いてキスしようとしてきたので慌てて制止した。



「よし、じゃぁそろそろ行こうか?」

「はーい。」

 バカップル並にふざけていたけど、いよいよだ・・・!






 彼の実家は横浜なので、車で向かうと大した時間かからずに着いた。



「ただいま~・・・っと、母さんと妹の萌。」

 チャイムを鳴らして彼が自分の鍵で玄関を開けたら、笑顔の女性二人が既に立っていて紹介をしてくれた。


「いらっしゃい。初めまして。」

「亮兄ちゃんお帰り!彼女さん初めまして!」

「初めまして、亮さんとお付き合いさせて頂いております、土屋しずかと申します。先日は温泉旅行を譲って頂きありがとうございました。こちらご家族で召し上がって下さい。」

 用意していた地元の有名なお菓子店の焼き菓子を手土産として渡した。

 ほんのりチーズ味のシュガーパウダーがかかったクッキーだ。紅茶と一緒だと何個でも食べられる。


「まぁ、ありがとう。先日の温泉のお土産も嬉しかったわ。ありがとうね。ささ、上がって!」

「そう!あれめちゃめちゃ可愛かった~」

「ふふ。良かったです。では、お邪魔致します。」

 玄関を上がらせて頂き、いつも通りしゃがんで靴を整える。


「母さん、先に父さんに挨拶して良いかな?」

「もちろんよ。」

「ん、しずかこっち。」

 彼に促され、リビング横の和室に入った。


 仏壇にお父さんの写真が飾ってある。

 笑顔が笑っている時の彼とそっくりだった。


「似てるね。」

「そお?兄の方がもっと似てるよ。」

「そうなんだ。」


 チーン・・・

 彼がお(すず)を鳴らし、手を合わせた。


「父さん、彼女連れて来たよ。」

 私もお鈴を鳴らせてもらう。


 チーン・・・

(初めまして、亮さんのお父さん。彼を幸せに、一緒に幸せになります。天国で見守って下さい。)


「また泣いてる。」

 フハっと彼が小さく笑い私の目元の涙を拭ってくれた。


「泣いてないし。」

「フハっ!嘘つき。」


 私達のやり取りを見て、亮さんのお母さんが涙ぐみながらも笑っていた。




 ********************


「プロポーズ、受けてくれたのよね?」

「はい。」

 母さんと萌の表情から反対はされて無さそうで安心した。まぁこの二人が反対したところで結婚するけどな!


「嬉しいわぁ。ね、二人はどこで出会ったの?」

「出会ったのはスポーツバーだけど付き合うきっかけになったのはこれ。」

 と着ているジャケットの片方の前端をめくりながら説明した。


「このジャケットの作成依頼して、完成した時に付き合い始めた。」

「しずかさん作ったの?これを?!」

 と萌が驚いた。目も口も大きく開けて、本当に?!と顔全体で表現する程驚いている様だ。

 驚く時はいっつもその顔するよな。


「はい。」

「しずか色々作れるんだよな。」

「はい。上手い下手はありますけどミシンで作れる物なら何でも。」

「へ~すごい!!」

「そうねぇ。」

 そういう学校出てるから作れるのは当たり前だ、と以前言っていたけど褒められるのはやっぱり嬉しいみたいだ。顔が綻んでいる。


「ウェディングドレスも作れるよな?」

「え、うん。」

「えー!!ますます何者!!」

「萌やめなさい、そう言う事言うの。」

「だって、気配り出来て、品が良くて、お裁縫も出来る美人が何で亮兄ちゃんと結婚するのか疑問だよ!」

「萌お前な・・・」

 失礼だろうが。


「亮兄ちゃん不誠実そうなのに。」

 おい、こら。


「身内が落としてどうするのよ、しずかさん気にしないでね。」

「はい、仲良し兄妹が見られて嬉しいです。」

 しずかを見ると、ふふっといつもの笑顔を浮かべていた。


「亮のどこを好きになってくれたの?」

 既に俺はしずかを見ていたから、彼女がこちらを向くとすぐに目が合った。瞬間顔を赤くした。


「時間の大切さを知っているのと、とても優しい所です・・・」

(時間?!あ・・・そうだ、最初にデートした時そんな事言ってたかもなぁ)


「時間?顔じゃなく?」

 萌が口を挟む。明らかな疑問の顔を浮かべて。


「亮さんは、私にはもったいないくらいのイケメンさんだと思ってますよ。」

「顔じゃないんだ~、良かったね、亮兄ちゃん。」

「顔じゃないのは最初から知ってた・・・」

 彫りの深い外人みたいな人好きだよな。主にラグビー選手だけど・・・


「まぁ、じゃぁこの子の内面を見て選んでくれたのねぇ。」

「はい・・・」

 母さんの言葉でしずかはさらに顔を真っ赤にさせた。


「嬉しいわぁ。昔から外見で選ばれている所あったし、そのせいなのかわからないけど長続きしている様子もなくって・・・この子結婚出来るのかしら、って思ってたのよ~」

 ちょっ・・・元カノの話しとか持ちだすって本気か?!


「・・・・・」

「・・・・・」

 気まずそうにしずかの顔を見たが、少し無言の後、


「ふふっ。」

 と可笑しくなった様で声が漏れた。

 良かった。呆れられなくて。






「この後(しゅん)の所行くのよね?」

「うん。」

 馴れ初めや温泉旅館の話しをし、今後の話しを母さん達にも説明した。この後はしずかの時と同じく兄に会いに行くのでそろそろお暇しなきゃだ。


「そう、しずかさんまたね、今度一緒に食事しましょう?」

「はい、ぜひ。お邪魔しました。」

「じゃ、また来るね。」

 玄関で良いよ、と言って俺達は近くのコインパーキングへ向かった。




「・・・亮兄ちゃんにはもったいない感じの人だったね。」

「うふふ、おめでたい事続きで嬉しいわねぇ。」

「おめでたい事続き?」

「実はね・・・」






 ********************


「いらっしゃい!待ってたよ。」

「初めまして、土屋しずかと申します。」

「うんうん、どうぞ入って!」

 兄ちゃんに出迎えられ兄宅に上がる。

 リビングに入るとソファに兄の嫁の里衣子さんが笑顔で座っていた。



 お互いの簡単な自己紹介と今後の予定を話し、珍しく兄が淹れてくれたお茶を口にした所で、

「実はさ、俺達も報告があって。」

「え?」

 兄ちゃんが里衣子さんと顔を見合わせ俺達の方へ向いた。


「里衣子が妊娠5か月で。」

「ええ~?!!」

「わぁ!おめでとうございます!!」

 しずかも手を合わせて喜んでいる。


「安定期に入るまで伝えられなくてさ。お前の婚約と重なる報告で悪かったね。」

「悪い事なんてないって!あれ?もしかして墓参りの時って・・・」

 風邪かな?と兄は言っていたがあの時既に妊娠は発覚していたのだろう。そして多分・・・


「亮君ごめんね、つわりひどくって車の匂い嗅ぐのも嫌で行けなかったの。」

 案の定、つわりで不参加だったか。墓参り後の俺との食事の時も兄ちゃん、里衣子さんとのやり取りスムーズだったもんな。


「そっかぁ・・・改めておめでとう!!」

「ありがとう・・・」

 結婚して5年経ってからの妊娠だ。俺と同い年の里衣子さんとしてはきっと念願の妊娠なんだろう、俺達の祝福で目元が潤んでいた。


「今頃萌も聞かされてると思う。」

「そっかぁ。」

「おめでたい事続きで片山家が賑わうね。」

 里衣子さんが兄ちゃんに笑顔で目線を送った。


「そうだな~」


 ふふっとしずかが小さく笑った気がした。

「「ん?」」

「仕草が一緒で兄弟だなって。」

「あ、ほんとね。」


 お互いを見合わせたら二人共腕を組んでいた。頷くタイミングもきっと一緒だったんだろうな。






 家族への挨拶を無事終えた帰り道。お互いの家族全員に報告が終わりほっとしている所へしずかが俺の袖を引っ張った。


「ね、亮さん。」

「ん~?」

「今度お墓に連れて行ってね。」

「・・・ありがとう。父さんもきっと喜ぶよ。」


 生きていたらどんな反応を見せてくれただろうか。

 中学生の時は反抗期で父とも良く反発していたが、その後の関係は良好だった。

 きっと笑顔でしずかを受け入れてくれただろう。





お鈴ってあれです、実家の仏壇の横にある小さい茶碗みたいな形のやつです。

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