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二人で幸せになるために  作者: 新浜ナナ
第一章
52/88

第52話 彼女の偉大さ

ブクマありがとうございますぅ!(*´ω`*)♡♡

 一昨日しずかに会ったばかりだったが、全然泊まりに来ていなかったので『土曜も会える?』と聞いたら『オープン戦の後なら』と二つ返事でメッセージが返ってきた。

 オープン戦?と思ったらすぐに『ラグビーは練習試合の事そう言うみたい。』と教えてくれた。

 要は公開練習試合って事か。



『公開練習試合』なので、以前一緒に行った秩父宮のラグビー場ではなく、各チームのクラブハウスの、正に普段練習で使用しているグラウンドで練習試合をするそうだ。


 秩父宮でも選手が間近だった記憶なのに、『あれよりもっと近いの!迫力あるんだよ!』と興奮気味で教えてくれた。

 この前は気まずくなったけど、この様子なら問題無く過ごせそうだ。


 夕方前には来られると聞いているので、家でまったりするべく夕飯の仕込みに勤しんでいた。






 もう3週間近くしずかとエッチしていない。

 しずかが家に着いたらちょっと俺やばいかも、と思いつつ食後のデザートの準備をしていた。



 そうだ!バレンタインデーの時に買ったマイクロビキニ!!のらりくらりと交わされて着て貰えていなかったから甘えてねだってみよう。


「ずっとしてなかったし」って拗ねて言ったらきっとしずかは渋々ながらも着てくれる。

 何だかんだ俺に甘いから。




『プルルルル!!』

 俺の邪な気持ちに呼応するかの様にスマホが鳴った。

 タイミング良くなった着信音に驚きビクっと肩が跳ねる。


 絶対しずかだろうとキッチン前のカウンターに置いてあったスマホを見るとやはりしずかだった。



「試合が終わったから向かってる」って電話かな?と慌てて手を洗いスマホの通話ボタンを押した。



「もしもししずか?めっちゃ美味そうなローストビーフ出来たよ。」

『亮さんごめん!!』

「ん?」

 電話口から慌てたしずかの声が聞こえて、異常を察した。


『さっきお母さんからメッセージ入ってて折り返したらおばあちゃんが意識不明になったらしくて・・・』

「え?!」

『高齢だし、もしかしたらって事もあるから帰って来なさいって・・・』

「そ、それは、うん、すぐ帰ってあげてって、しずか今どこ?近いなら送るよ?」

『ううん、今乗り換え待ちであと30分で駅着くから、あっ!電車来た!!本当ごめんね、亮さん!落ち着いたら電話するから!!』

「う、うん・・・あ、しずか、」

『プツンっ!プープープー・・・』


 めちゃめちゃ慌てた様子で取り付く島もなく電話を切られてしまった・・・


 一瞬『嘘じゃないよな?』と疑ってしまったが、構内アナウンスと電車が入って来る音も聞こえたから本当の話しだろう。



 一度嘘を付かれた事があるので、もしかして俺に会いたくない?!なんて後ろ向きな考えが浮かんでしまった。


 ただ、あの嘘はしずか自身の体調についてだ。他人の、しかも生死に関わる様な嘘をしずかが付く筈無いだろう、と自分で納得させた。


 同棲する・しないで、そんな嘘付く必要無いしな!








 ********************


 コーヒー片手に窓の景色をカーテンの隙間から確認すると、朝なのに外はどんよりとして薄暗い。せっかく桜が咲き始めているのに雨でも降ったら散ってしまう。




 昨日は結局しずかから連絡がなかった。

 会った事もないおばあさんだが、連絡が無い事を他人ながらも心配になる。

 天気が余計に不安にさせているだろう。



 自分の母親であろう、しずかのご両親どちらかもさぞかし不安だろうな、とダイニングテーブルまで戻った所で傍、と気付く。


「俺・・・ご両親に挨拶行くの忘れてる・・・!」

 出張のごたごたで、同棲する・しないのごたごたで、すっかり忘れていた。


 て言うか、同棲するならさすがに親に言うべきだよな?!



 ・・・・・だからしずか同棲に乗り気じゃなかったのか。

 挨拶もしてないのに『何でいきなり同棲?!』ってきっと思ったよなぁ。


 それなのに浮かれて『マイクロビキニ』なんて思って・・・

 自分の事ばっかりじゃないか。

 峻兄ちゃんに言われた通りだな、自分優先って・・・




 がっくりとテーブルで項垂れて最近の自分の言動を反省していたらすぐ傍に置いてあったスマホが鳴った。

 絶対しずかだ。


「もしもし!」

『お、おはよう。元気だね。』

 スマホを取った勢いでそのまま電話に出たらしずかがその気迫にやや引いた。


「え、いや絶対しずかだと思って。」

『うん、昨日電話出来なくてごめんね。結果から言うとおばあちゃん、大丈夫でした。』

「そっか、良かった~・・・」

 と安堵したが、無事だった事に俺の中に嘘説がまた浮上する。



『昨日・・・今日か、深夜に意識戻って、施設に来たお医者さんももう大丈夫ですって言ってくれたんだけど、』

「うん。」

『今度はほっとしたのか母親が熱出しちゃって、一旦家戻って来たんだけど今から実家行くの。』

「うん?」

『父親も夜通し起きて運転してたから、お昼とか夕飯とか作ってあげようかなって思って・・・』

「そっか・・・」

 それはつまり今日も会えない、と言う知らせだった。

 今日は会えるかな、とわずかには期待していたので自分でも気付かないくらい声が尻すぼみになっていた。



『ごめんね。』

「え?」

『しばらく亮さんと・・・その、してないでしょ?絶対気落ちしてるだろうなって・・・』

「!!!」

 おばあさんや、ご両親の心配をして、その上俺の事まで考えてくれていたしずかが『嘘付いてる』なんて疑って俺最低だ!!



「いや、大丈夫・・・ではないな。うん、正直話しちゃうと今日も会えないのか、って思ったけど、俺よりおばあさんやご両親についてあげて。で・・・・・挨拶行く話し伸びててごめんね。」

『忘れていた』とは言えない。何でも正直である必要はない、多分・・・



『・・・うん、覚えてくれててありがとう。それだけでも嬉しいよ。』

「しずか・・・」

 しずかの寛大な心に胸打たれているとかすかにチャイムの音が聞こえた。


『あ、ごめん、いち君迎えに来た。また連絡するね。』

「うん、あ!お兄さんに『絶対挨拶行きますから!!』って言っておいて。」

『ふふっ、わかった。またね。』




「ふぅ・・・」

 しずかが家族の事で大変な中、俺の事まで忘れず気遣ってくれていたのに対して、俺はしずかを疑ったり自分の事ばっかりで・・・

 改めて、俺の彼女は本当に気遣いの出来る良い女だ、としずかの偉大さに感動していた。




 だけど・・・また作ったご馳走が余るな~

 あ、話し2回も聞いてくれたお礼に隼人でも呼ぶか!



 とだらりと下げた腕をもう一度掲げた所でまたスマホが鳴った。



『プルルルル!!』

 あまりにもタイミング良くまた電話が鳴ったものだから、まさか隼人か?!と思ったが、全然そんな事はなく母だった。




「もしもし?」

『おはよう、亮。良かったわ電話出てくれて。』

「おはよー。うん?」

『ねぇ、萌と温泉行こうと思ったんだけど、あの子仕事入っちゃってね。何だか断れないらしくて、キャンセル料ももったいないから亮行かない?再来週の土日なんだけど。ほら、お正月の時に言ってた彼女と行ってらっしゃい。』

 温泉?!ホワイトデーで温泉デートしたかったんだよ!

 母さんナイスタイミング!!


「俺達も最近行こうとしてて行けてなかったんだよ。ありがたくお受けします!」

 ありがた過ぎてハハーって言いそうになる。


「・・・母さん。」

『うん?』

「彼女、今度紹介するね。」

『!!まぁ!!!うんうん、いつでもいらっしゃい、都合着けるわ。』

「ありがとう。」



 旅行代金を払う、と言ったが「たまには息子に何かしてあげたいから」と押し切られ渋っていたら、「じゃぁお土産買って来て」と話しが付いてしまった。

 お土産はもちろんだが、しずかを実家に連れて行く時にまた何か母さんが喜びそうな物でも買って帰ろう。


 しかし・・・ちょっと母さん泣いてたかな?

 紹介するってだけなのに、大袈裟だな。何て思ったけど、兄ちゃんの言う通り、碌に実家に帰って来ない独身息子を心配してくれているのだろう。



 まずはしずかのご両親に会って、その後母さんに紹介しよう。あ、父さん亡くなってる事しずか知らないんだよな。

 知ったら泣いちゃったりして。泣き虫だからなーしずか。



 一緒に住む話しはまた今度ゆっくりしずかと話し合おう。

 上手く言葉に出来るかわからないけど、隼人に相談した時に思った事を。








 ********************


 週明けの月曜日、まだ先の話しとは言え温泉旅行を思うと仕事も捗るな!とデスクで作業に没頭していた。




 しずかにも昨日の夜電話をして伝えたら、『おばあちゃんの一件ですごく疲れたからめちゃめちゃ嬉しい!』と喜んでくれた。


 因みに、ご両親共午後には復活したらしく、今度はしずかがゆっくりしなさいと夕方には自宅に戻って来れたそうだ。

 風呂上り後に、ちょうど俺へ電話をしようとしてたタイミングだったらしく『びっくりしたよ』と電話の向こうでふふっと笑っていた。

 以心伝心ってやつだな!




 浮かれていたら、疲れた表情をした平田部長が定例会議から戻って来た。

 何だ、何か面倒な議題でもあったのだろうか。


「片山君・・・」

 おお、案の定か。


「はい。」

「副社長室に行ってくれるかな?」

「私がですか?まさか、出張時に何か不手際が?」

 ん?それにしても今さらだよな。


「そうではなくて・・・・・君にお見合いの話しが来てる。」

「は?!!」

 突拍子も無い話しに思わず大きな声が出てしまった。

 俺の声に部下が全員一斉にこちらを振り返る。

 何なら近くの部署の数名の注目も浴びてしまった。



「まさか、副社長のお嬢さんですか?」

「そう・・・今週の土曜日お見合いだって・・・」

 部長が「頭痛い」とでも言っている様に額を抑えて溜息を付く。


「何を勝手に・・・」

 あの我儘お嬢さんだよな?俺10歳くらい上な気がするんだけど!

 あとこっちの都合とかお構いなしか?!親子揃って!



「とりあえず、呼ぶ様言われたから副社長室行ってくれる?伝えはするけど、と僕も言っただけなので。どうするかは君がもちろん決めて良いよ。今の君の交友関係知らなかったし。」

「俺・・・僕、真剣にお付き合いしている女性いるのでお断りしてきます!!」



 いつも気を付けているのに「俺」と素で言ってしまう程、怒り過ぎている様だ。





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