第40話 風邪の原因が 前編
ブクマありがとうございます♡(*´▽`*)♡
「・・・長。」
「・・・課長。」
「片山課長!」
俺を呼ぶ声にハッとした。
「ああ、ごめん。何?」
「ボーっとされてましたけど、大丈夫ですか?どこか具合でも?」
若干頭が回らない気がするけど、特に具合悪いとかじゃないんだよな。
「いや、大丈夫。ボーっとしてたよな。申し訳ない。」
「いえ、体調悪いとかでなければこちらも大丈夫です。資料の件でご相談があるのですが、」
宜しいですか、と箱崎が立ち上がり俺のデスク横へやってきた。
「うん、どれ?」
一部下の箱崎は、彼女の友人、木村さんが起こしたしずかへのコーヒーぶちまけ事件以来、何だか仕事に精力的だ。
俺への態度も今までは普通だったのだが、今では仕事で積極的にアドバイスを求めてきて、たまに一緒になるランチの席では、何だかしずかの事を聞きたがる。
最初は探られてるのかと警戒したのだが、どうやら違う。
これは既視感がある。
そう、及川さんの時の様な。
もしかしなくても、しずかまた女性に気に入られてるな・・・
この前一体何話したんだ・・・
男女問わず好かれるって、人として素晴らしい事だけど、俺としてはヒヤヒヤだ。
奪われない様にしないと。
背中にゾクっとした物を感じた。
「亮さん!」
いつもの待ち合わせ場所、マークシティの大エスカレーター横で待っていたら、満面の笑みのしずかがやって来た。
「お待たせ!」
会社から最寄りな上俺の方が定時が早いので、基本的には俺がいつも先に待つ形だ。
少しだけ残業をして待ち合わせ場所に向かうと、時間が狂ったのか割と早く待ち合わせ場所に着いてしまっていた。
(若干寒い気がする・・・まぁ風吹いてるから当然か。)
「ふふ。」
と、目の前に来たしずかが軽く俺に抱き着いて来た。
お、何だかご機嫌だな。俺も片手でしずかを軽く抱いた。
「行こうか。」
差し出した手を繋いだ所で、しずかの笑顔が消える。
「ん?何か手、熱いね。」
「え?そう?しずかに会えて興奮したかな?」
何ていつものセクハラを口にしたら軽い眩暈がした。
「亮さん?」
立ち止まって俺を心配そうに見つめる。
「ん?大丈夫だよ。」
何ともないと歩いたが、次の瞬間グラっと上半身が揺れた。
「亮さん!」
しずかに腕で支えられて、躓くのは回避出来た様だ。
次の瞬間、おでこにひんやりと柔らかい感触があった。しずかの手だ。
「ありがと、冷たくて気持ち良いよ。」
「えっ・・・・私手の温度高い方だよ。あとおでこ熱いね。これは・・・デート中止!家帰ろう?」
「え?!嫌だ!」
「もー・・・駄々っ子じゃないんだから。また別の日にデートすれば良いでしょ?」
「・・・・・」
デート中止と言われて回避したかったが、頭が上手く回らない。
「私も亮さんに着いて行って看病しようか?」
「え、大丈夫。」
何故ここで意地を張るのか。
何となく、病気で看病される、と言うのが情けなく思って断ってしまった。
「本当に?」
しずかが諫める様に俺を見つめる。
「言葉通りに受け止めるけど、本当に看病いらないのね?」
「えっと・・・」
もごもごしていたら、はぁ、としずかから溜息が零れた。
「甘えても良いのに。」
と言われた気がしたが、段々朦朧として来てしまう。
足元もおぼつかない。
しずかはそんな俺を一生懸命抱えて、すぐ近くの道路でタクシーを拾った。
「はい、亮さん先乗って。良いから!」
女性を奥に、と思っていたのだが、しずかに強く言われて、先に乗せられた。真ん中まで座った辺りでしずかがぎゅうと隣に座る。
思わぬ所で密着出来て何となく口元が緩む。
「住所言える?・・・ダメっぽいな・・・」
呼吸も荒くなり、頭痛までしてきてしまった。しずかが何か言っている気がするが反応出来ない。
「すみません、恵比寿の駅の方に向かって頂いて・・・」
しずかが運転手に道の案内をしている場面をぼんやりと聞いていたが、体が一気に寒くなり震えてきた。
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「亮さん、着いたよ。降りて?」
「・・・・・」
「お客さん大丈夫?家まで手伝いましょうか?」
「ん~酔っ払いではないので大丈夫だと思うんですけど・・・」
そう言っている間に彼がもぞもぞとしながら車から降りた。
フラフラはしているけど、自立しているから平気そうだ。
「大丈夫みたいです。ありがとうございます。」
「いえいえ、彼氏お大事にね~」
とても近い距離なのに、嫌な顔せず人の良い運転手さんはにこやかに対応してくれて去って行った。
「亮さん、家の鍵は?・・・・・鞄開けるよ?」
問いかけたけど、鍵を出す気配が無い。待つ時間が惜しいので勝手に鞄を開けさせてもらった。
この人のはもう、完全に風邪だ。
しかもちょっと重症。
咳はしてなかったけど、タクシーの中でマスクさせて正解だったかもしれない。
本人マスク着けられた事に気付かない位、何だか朦朧としてるし。
私は持っていた亮さんの鞄から、黒い革のキーケースを取り出し、マンションのオートロックを解除した。
車のキーがここに着いているので、このケースに家の鍵が入っているのも知っていた。
彼の右腕の隙間に入り、腰を支え、ゆっくりと進む。
「行くよ~」
と言うと、ゆっくり歩を進めてくれた。
ちゃんと歩けるから私も助かった。
マークシティで倒れてたら私でもどうしようもなかった。
エスカレーターで亮さんのフロアまで上がり、家の前に着いたので玄関の鍵を開ける。
病人抱えているとこんなに時間かかるのか!と思う位いつもより彼の家まで時間がかかった。
亮さんを先に玄関に入れると、彼がゆっくりと膝から崩れ落ちたのが目に入る。
「嫌だ!もうちょっと頑張って!」
ここで倒られても困る。
「ううう・・・」
辛いのだろうか、呻き声を上げた。
幸いフローリングなので、片腕を引っ張り寝室へ運んだ。重い。
「亮さん、頑張ってベッドに上がって!お願い!」
上半身をベッドに突っ伏す様には運べたけど、力の抜けた人をベッドに上げるのは私でもきっと無理だ。
「うん、そう、えらいえらい、頑張って!」
と子供を応援する様にベッドへ這い上がろうとする彼を応援した。
私も彼の腰を支えて、ベッドに上手く誘導する。
ドサっ!!
とベッドに乗った瞬間勢い良く彼が転がった。
「ふー・・・乗ってくれた。次は服脱がせないと、きゃっ!!」
思いのほか重労働だった所で一息付いていたら腕を引っ張られ押し倒された。
「しずか・・・」
私の頭を包んでキスをしてきた・・・マスク越しに!!
さっきまでベッドに上がるのも一苦労してたのに何で私を押し倒す元気はあるのか?!
ベッドにいるから本能でそういう状況だと勘違いでもしているのだろうか。
「このエロ脳が!」
とデコピンをし、左肩を両手で強く押した。
力の出ない彼はゴロンと簡単に私に跳ね除けられてしまう。
「はいはい、お洋服脱ぎましょうね。」
とコートとジャケットを脱がし、ベストの釦を外した所で、
「あ。」
と、呟く。
慌ててバスルームへ行き、お湯で絞ったタオルを持って亮さんの元へ向かう。
一度体拭いてからじゃないと寝る時気持ち悪いかな、と思ったからだ。
クローゼットから彼がいつも着ているスウェットの上下を出し用意した。
何故かベッドの上で胡坐で座っている彼のYシャツとインナーのTシャツを脱がし、体を拭いていく。やはり少し汗を掻いていた様だ。
(相変わらず素敵な胸筋だわ)
と邪な気持ちを抱きながら上半身を拭き終わり、
「はい、バンザーイ!」
とスウェットを着させた。
「ふう、次は下だ。亮さんゴロンしようか?」
と言ったら私に抱き着き一緒にゴロンされてしまった。
「・・・・・」
う~ん・・・こういう事にはもう無意識で動いているんだろうな、と呆れ半分、諦め半分な気持ちになった。
だが、現状亮さんに馬乗り状態になっていて、はしたない。後、何か硬いのが当たってる。
病気でもこういう状態になるのか、と生態的な興味を後回しにして、力を入れて動くと彼の腕から簡単に振りほどけた。
躊躇なく、スラックスのベルトに手を掛け、ファスナーも降ろす。
彼の腰とベッドの間に手を入れ一瞬だけ浮かし、その隙にスラックスを脱がす。
(何かこんもりしてるなぁ・・・)
脱がせた後の下着がこんもりしていた。本当はこれも着替えさせた方が良いのだろうけど、
下着は・・・・・(うん!明日元気になった本人に履き直してもらおう!)と見ない事にした。
靴下も脱がし、足の間もタオルで拭いたらスウェットパンツを履かせる。
履かせる方が大変だった。
世の介護業界の人は重労働なんだなぁと感想を持った所で、
「グーーー!」
と私のお腹が鳴った。
長くなったので前後編にしました(・∀・)




