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二人で幸せになるために  作者: 新浜ナナ
第一章
39/88

第39話 コーヒーちゃん再び

評価&ブクマありがとうございます(*´▽`*)♡♡♡

完結してなくても評価頂けるの本当に嬉しいです♡

「あの辺席空いてるね。」

「じゃあそこ座ろ。」


 凛子・杏奈・優子の3人娘が道路に面したカフェテリアへ来ている。


 窓際の4人掛けのテーブルが空いていたので注文前に席を確保した。

 隣席に飲み物がまだ半分以上入ったドリンクとカバーされた文庫本が置いてある。きっとお手洗いか何かなんだろうと、誰も気に留めてなかった。



 窓際の席に杏奈、杏奈の向かいの通路側に凛子、その右隣りに優子、という配置で並び、おしゃべりを開始した。


 優子があれ以来目ぼしい好きな人も出来ていないのでその辺の話しをしていて夢中だった。

 その為通路から隣の席へ向かって女性が歩いてくる事に全然気付かない。




 女性が背を向けて「失礼します。」とテーブル間の狭い所を通った。

(良い匂いがするな~)

 と凛子がぼんやりしていた所で、右にいた優子が「あっ!」と声を出す。


 女性が席に座り、声の方へ顔を向けると、女性は暫く考えた後、

「あー!コーヒーの子!」

 と言った。




 優子が熱いコーヒーをかけた片山課長の彼女だった。

 杏奈も凛子も彼女の顔はうろ覚えだったので、気付けず、優子の反応で思い出した。


「あ、あの!!この前は本当に申し訳ありませんでした!!」

 テーブルに頭を付ける勢いで優子が頭を垂れる。


 対して、しずかの反応は意外なものだった。


「しー!コーヒーちゃんしー!周りの人びっくりしてるから。」

 人差し指を口に当てて静かに、と訴えている。

 その様子からは怒りを感じられない。


「あ、あの?」

「亮さんにすごい詰められたでしょ?怖くなかった?大丈夫だった?」

「え、え?」

 罵られると思っていたのに、優しい言葉に優子が驚いている。



「あの、私片山課長の部下で箱崎凛子と申します。課長から一部聞いておりまして、その、友人の事怒ってないんですか?」

 優子が戸惑っているので、しずかの斜め向かいの凛子が神妙な面持ちで問う。


「あ、これはご丁寧に。彼がいつもお世話になっております。土屋しずかと申します。」

「いや、お世話になっているのはこちらの方で、ではなくててですね。」

 座ったままお辞儀をされてつられて凛子もお辞儀をしてしまったが、論点はそこではない。


「怒ってないですよ。」

 きょとんとした表情でしずかは言う。


「でも、私ひどい事を・・・!」

 優子がまた謝罪の言葉を伝えた。


「彼が代わりに怒ってくれたので、私はそれほどでも。でも!ダメだよ、もうあんなことしちゃ。あれ暴力ですからね!」

「はい・・・」

 優子はしゅんとする。


 その様子を見てしずかは優しく問いかける。

「・・・・亮さんが大好きだったんだよね?やり方がちょっと間違っていたと思うけど、その好きを次の新しい人にはきちんと言葉で伝えてね。近くで転んでもアピールにならないかもよ?」


「!!」

 優子が顔を赤くした。


「課長から聞いたんですか?」

「そういえば、近くで転んだり書類をぶちまけてる女性社員がいたかも、って言ってたの。書類拾ってたら顔あまり見ないのかもね。」


「ほら、優子、私達の言った通りじゃない。」

 今まで黙っていた杏奈が言う。


「うん・・・もうすごく反省してる。アピールの仕方も、彼女さんにコーヒーをかけてしまった事も。」

 優子は渋い顔をしていた。



「いつ頃亮さん好きになったの?あ、無理に答えなくても良いけど。」

「入社してすぐなので、2年・・・くらいだと思います。」

「私亮さんに告白したの出会って2か月ちょっとだよ。」

「「「え?!!!」」」

「ふふ、早いと思うよねぇ?でもその頃には関係性が出来てたので気持ちを伝えるのに早いとは思わなかったかなぁ。」

 優しい笑みで3人に伝えるが、3人はお互いを見合わせ意外だと言う表情をする。



「え、意外なんですけど。片山課長の方から告白してると思ってました。あ、ごめんなさい、私、松本杏奈です。彼女達の友人で同じビルの別会社の者です。」


「杏奈ちゃん、かわいい名前。私が先に告白したんだけど、彼が言い直したので結果、私が返事した形になってる。ふふっ。何かメンツなんだって。あ、これ言っちゃダメだったかな?」

 悪戯っぽい笑顔で言うしずかの表情に3人は釘付けだった。



「リンコちゃんはどういう字を書くの?」

「え、あ、凛々しいの凛です。」

「ふんふん、綺麗な名前だね。凛子ちゃんの雰囲気に合ってる。」

 二人の名前を褒めているのを見て優子は少し暗い表情をした。


「ゆうこちゃんの漢字は?」

「あ、普通に優しい子です。平凡ですよね・・・」

 優子は杏奈や、凛子の名前が羨ましかった。自分はごく平凡な名前なのだから。


「優しい子で優れてる子でしょ?良い名前じゃない。」

「っ!!」

 名前を褒められるなんて今までなかったので優子はとても驚いた。


「そんな風に言ってもらえたの初めてです・・・」

「そうなんだ?」

 しずかは特に気にする事もなく微笑みながら残りのカフェラテを両手で口に付けた。


「あ、あの!」

「うん?」

 優子がしずかに何かを聞こうとしているのを、二人は見守る。


「私、コーヒーかけてしまったのに、諭してくれたじゃないですか?ひどい事した直後なのに何でそんな優しい事が出来るんですか?」

 凛子と杏奈は何の事かわからない。疑問の表情を浮かべてしずかに向く。


「ああ。亮さんが代わりに怒ったから私が怒る必要ないし、何よりコーヒーかけた時『しまった!』て顔したでしょう?だから咄嗟にやってしまった感情的な行動なのはすぐわかったの。」

「はい・・・すみませんでした・・・」


「で、何やら亮さんの事が好きそうだ、と。しかも大分前から。同じ会社でチャンスもきっとあったろうに手段を間違えてしまった為に私に横から取られてしまった形になったでしょう?」

「う、は、はい・・・」


「人はね、生きてる事自体が奇跡なの。若いから気付けないんだと思うけど、自分も、自分の大事な人も明日も会えるとは限らないの。時間て無限じゃないんだよ、って事に気付いてくれたらな、と思いました。」

 ふふっ、と言い終えたしずかが優しい笑顔を3人に向けた。



 杏奈と凛子はお互いを見合わせ驚きの表情を見せる。似た様な事を優子に言ったからだ。


「あの、しずかさん。それをコーヒー掛けられた直後に優子に言ったんですか?」

「そうだよ。」

 優しすぎる、と3人が感想を持ったところで、


「そんな嫌悪感は優子ちゃんから受けなかったんだよね~じゃなかったら私もお節介焼かないし。」

 カフェラテのカップを口に付けながら視線を上へ向けたしずかが3人の疑問を口にした。



「ねぇねぇ、優子ちゃんは何回くらい亮さんの前で書類を落としたの?」

 そんな事より、と悪戯っぽい笑みを浮かべて優子に問う。

 優子はからかわれているのにすぐ気づいた。


「やめて下さい、もう!反省してますから。」

 顔を赤らめ優子が俯く。

 それを見てあはは、としずかや凛子、杏奈が談笑していると、


「しずか!!」

 大声の亮が血相を変えてやって来た。



 優子に以前、『しずかに近づくな』と言ったのに目と鼻の先にいる為、警戒心むき出しになってしまったのだろう。


「亮さん!しー!!」

 しずかは人差し指を口に当てる仕草で咎める。


「何してるんだ!」

 あからさまに怒りの表情で優子へ詰める。

 優子もその剣幕に怯えてしまう。

 二人は突然の事で固まってしまっている。



「亮さん、亮さん。」

 しずかが手招きして自分の方へ来るように差し向ける。人差し指は口に当てたままだ。


「しずか、何かひどい事されたりと、か?!」

 しーっと自分の口にあった人差し指を亮の唇へ当てたら亮が黙った。

 亮は元より、3人も顔を赤らめる。



「亮さんうるさいよ。今女子トークしてただけなんだから。他の人にも迷惑かけるからもう行こう?」

「あ、ああ・・・」


「ごめんね、驚かせて。どこかで会ったらまたおしゃべりしようね。あっ優子ちゃん。」

 荷物を片付け席を立つと、しずかは優子に呼びかける。


「は、はい!」

「次、見つける恋はきっと大丈夫だから、頑張って。」

「え・・・・あ、ありがとうございました!!」

「杏奈ちゃんも凛子ちゃんもまたね~」

 ばいばいと手をヒラヒラさせて外へ出て行った。




「優子・・・完敗だね。」

 手を繋ぎながら遠ざかって行く二人を窓から見ていた杏奈が独り言の様に呟いた。


「うん、私もそう思う。何であの人に勝てると思ってたんだろう。」

「課長とずっと付き合ってて欲しいなぁ・・・」

「凛子もそう思う?すごくお似合いの二人だよね。」

「うん、それもそうだし、人としてまた話してみたい。課長つながりだったらまた会えるかなって。」

「課長バーター?」

 ニヤニヤして杏奈が言う。


「バーターだわ・・・!」

 二人でニヤニャしてたら優子が静かに泣いてた。


「ど、どうした?」

「・・・優しかったなぁって。次の恋はきっと大丈夫だなんて言ってくれて・・・」

「「そうだね・・・」」

 凛子も杏奈も、素敵な女性だったなと思い頷いた。






 ********************


 店を出て窓から3人が見えなくなるだろう位置まで移動した所で、亮がしずかに咎め始めた。


「危ない事にはなってないんだな?」

「大丈夫だってば。和気藹々としてたでしょ?」

「いや、ごめん。コーヒーかけた子の姿で、」

「優子ちゃん。」

「え?」

「優子ちゃんだよ。」

 名前をきちんと出されて亮は戸惑う。


「え?まぁその子の姿見てちょっと平常心じゃなかったから・・・」

「あの子はもう大丈夫。」

「何で断言出来るんだよ。」

 自分に被害をもたらした人間に大丈夫だ、と言うしずかが亮は不思議でたまらない。


「本人が反省してるのもあるんだけど、普通他人にコーヒーかけた人の友人続けないよ?一緒にいた子達、コーヒーかけた事知ってたみたいだったし、きっとちゃんと当時優子ちゃんに怒ったんだと思うよ。それで、彼女もそれを受け入れたのよ。じゃなかったら友達関係なんて破綻してるって。」


「そこまで読んだの?!」

 しずかの読みに亮は面食らう。


「うん。」

「しずかこそエスパーなんじゃ・・・」

「そんなわけないじゃん!」

 あはは、と笑う彼女を見て、自分は本当に素晴らしい女性と付き合っているんだな、と亮は誇らしげになった。






杏「しずかさん、私達の事「若いから気付けない」って言い方してたけど、いくつなんだろう。」

凛「課長と同じくらいなんじゃないの?優子課長いくつ?」

優「え、あれ?いくつだっけ?30歳くらい?」

杏・凛「「え、もう興味なくしたの?」」

優「そんな事ないよ!でもしずかさん20代にしか見えないよ?」

杏・凛「「27~8歳?え?私達と大して変わらないよね?あの人間性で20代・・・?」」


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