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二人で幸せになるために  作者: 新浜ナナ
第一章
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第3話 やっと手に入れた 後編

「しずかー、まだ怒ってるの?」

 俺の欲望が過ぎて、昨日の夜と今日の午後まで少し、いや、かなり無理をさせてしまった。


 腰が痛い、とプリプリしている。

 今は彼女を自宅まで送り届ける為に車で湘南へ向かっている。



 自分は山手線沿線の恵比寿駅付近に住んでいる為、彼女との家まで物理的に距離があるが、明日からはまた暫く会えない。

 出来るだけ長く一緒にいたい為自宅まで送り届ける事を買って出た。



「あ、あんなにいっぱいするなんて・・・」

 運転中なので表情をしっかり見る事は出来ないが、恐らく動揺をしている。


「うーん、しずかがかわいかったからね~」

「わ、私のせいなの?!」

「ごめんって。調子に乗りました。」



 回数もそうだが、ある事でとてもしずかを怒らせた。



 エロい目的で俺がしずかの下着を買いたい(・・・・)という、突然な申し出には渋々ながら了承をしたが、普段使いする下着も買ってあげる(・・・)、と言ったところで「は?」と乾いた声で言われた。


 俺としては自分が買った物をしずかが身に着ける、という事に興奮したかった為だが、何でか生活必需品を購入されるのは『生活能力がない』と思われているんじゃないか、と思ったそうだ。普段使いする下着は生活必需品に入るもんな。



 しずかの家へ行った事があるので断言出来る。部屋は広いし家具も良さそうな物が置かれていた。

 ルームフレグランスの人工的な香りではなく、生花の香りが心地良かった。

 花をきちんと手入れ出来る人間が生活能力ないわけない。



 食事へ行くと俺がいつも払い、しずかが半分出すと行っても受け取らない。

 しずかが(うち)に来れば食事を作ったりしている。食材費を払うと言うがそれも受け取らない。

 俺としてはしずかを甘やかしたいだけなのだが、それがしずかには負い目だったらしい。



 住んでる地域から察するに俺の方が収入は高い。

 普段使いの下着を買ってあげる(・・・)、と言うのは「俺の方が金持ってるから買ってやるよ!」なんていけ好かない理由ではなく、単純に俺の趣味で、と伝えたら理解してくれたが、

「変態。」

 と言われてしまった。俺もそうだな、と思ったので反論出来なかった。



「しずかさ、食事代の件なんだけど。」

「うん?」


「俺はしずかを甘やかしたいのでほとんど奢ると思います。」

「はぁ・・・あまり払わせないならデートしたくないんだけど。」

「それは困る。ちゃんと聞いて?妥協案として、」

「うん。」


「カフェとかのさ、軽い食事の時にじゃんけんしようよ。」

「じゃんけん?」

「で、勝った方が支払う。」

「亮さんが勝ったら?」

「もちろん俺が払う。」

「なんだそりゃ。」

 私が払えば良くないか?と言いたげだ。


「しずかが勝てば問題ないじゃん。」

「でも、負けたら結局亮さんが払うんでしょ?」

「しずか、じゃんけん自信無いの?」

 わざとニヤニヤして言った。


「なっ!そんな事ないよ!絶対勝つから良いもん!!」

「でしょ?じゃぁそういう事で。」

「はっ!」

 乗せられた!と言う顔をしているのが見なくてもわかる。

 言質は取った。


 時々単純なので、乗せやすい。


 家に来る時お土産を持ってきてくれるからそこまで気にしなくて良いのだが、そういう性格なんだろう、カフェ代を払う(俺が勝つから払わせないけど)事で妥協してくれた。



 つくづく、今までの女性と違うと思った。

 ほぼ、全員、奢ってもらって当たり前だった。

 最初は遠慮するが、数回だともう「ごちそうさま」すら言わないのもいた。


 時間の大切さを知っている俺は待ち合わせに遅刻してくるやつは好きじゃない。

 これと合わさるともう興味が失せていく。


 俺が女性と長続きしない理由がここにあった。



 会社の一部後輩に『彼女をとっかえひっかえしている』という噂があるのは知っている。実際そうなので、否定出来ない。

 だが、理由までは知らないので恐らく俺が悪い様に言われているだろう。

 勝手に言ってれば良いと思っているので気にしてないが、うっかりしずかの耳に入らない様にはしないとな、とは思っている。

 多分、もう、とっかえひっかえはしない、と予感している。


 見た目のタイプなんてどうでも良いという事にしずかに出会って思った。(もちろんしずかの見た目を否定するものではない。本人は体型を気にしているが俺は最初から好意的だ)

 一緒にいて安らげる、心地良い、というのはとても重要だったんだな。




 海岸線沿いの県道に入ると日が沈みかけていて青とオレンジが混じる色合いの景色になっていた。

「今日も夕焼けきれい。」

「ほんとだな、都内だとこういうのは感じにくいな。」


(うち)のベランダから見える夕焼けもきれいだよ。」

「今度またしずかの(うち)泊まらせてね。」

「うん・・・」

 しずかの家に泊まったのはつい先週だが、近いうちにまた行ければ良いな、と思った。


「来週は?またラグビーでしょ?」

「あ、うん。土曜日。」

「その後って、」

「来週は飲みは多分ないからもう少し早めに会えるかも。」

「そっか、じゃぁ今回よりはもう少し長くいられるね。」


「あ、あの・・・」

「ん?」

「来週も泊まり?」

「そうだよ。」

「決定事項なんですね・・・」

「ほんとはもっと一緒にいたいんだよ。」


「亮さんて・・・」

「ん?」

「女子みたい。」

「なんだとぉぉ。」

 左手を伸ばして脇腹をくすぐる。


「ひゃっ!ふふっ・・・ちょっと!危ないから止めなよ!」

「はい、止めます。」

 悪ふざけが過ぎた。





 程なくして、しずかの自宅へ着いた。

 もう来るのは3回目なので一方通行の多い道もすんなりだ。


「じゃぁまた来週・・・・」

「うん・・・」

 そう言って長めのキスをしていてお互い離れない。


「やっぱ、しずかん()泊まろうかな。」

「明日仕事でしょ!!」

 ぴしゃりと叱られた。

 そうなんだよな~、明日は月曜だ。


「わかってるよ。」

 頭ではわかっているが離れがたいものだ。


「送ってくれてありがとう。亮さん帰ったらもう夜だね。時間取らせちゃってごめんね。」

 そういう所!!


「俺が送りたくて送ってるんだから気にしなくて良いよ。」

「うん、ありがとう。」

「じゃぁね、おやすみ。」

「おやすみなさい。」

 再度軽くキスをして今度こそ車を走らせた。



 角を曲がるまで彼女が見送ってくれていたのがバックミラーに見えてニヤついていたのを通行人に怪訝な顔で見られてしまった。


こ、今回もギリR15なハズ・・・!


※1日お休み頂きます。次話は明後日公開です。

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