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二人で幸せになるために  作者: 新浜ナナ
第一章
26/88

第26話 お互いの懸念 中編

 家の近場の店だったからあっという間に家に着いてしまった。


 家に来てくれないかも、と思っていた事に気を取られていて、この後どうしたら良いのか決めていなかった。

 しずかもずっと無言だし、俺も何話して良いものか・・・

 この前の事をいきなり蒸し返して険悪になっても困ると思案した。



 ふと、しずかを見るとソファで気だるげにしている。

 もしかして、本当に具合悪かったりするのか?


「しずか。」

「ん、何?」

「具合、悪い?」

「えっ?そんな事ないよ。」

「そう?何かずっと元気ないから・・・」


(それは・・・もやもやしてるからとは言えない・・・)

「ごめんね。」

 笑って答えてくれたが、無理して作られた笑顔に見えた。


「何で謝る?」

「元気ない様に見えるから?」

「わからないなら謝らなくても良いのに・・・」

「・・・」

(亮さんこそどうしたんだろ。バレーの途中から様子がいつもと違う・・・)



 気だるげなしずかを視界に入れつつ、コーヒーの準備をした。

 俺はブラック、ブラックが飲めないしずかにはカフェラテだ。


「はい。」

「あ、りがとう・・・亮さんの作るカフェラテはいつもおいしいね。」

 ふう、と息を吐き一口だけ飲んで柔らかい笑顔で言った。

「!!!」

 やっと笑顔見れた・・・それだけでもう目が潤んだ気がした。



 やっぱりちゃんと話さなきゃな。でも俺が懸念してる事も伝えたいんだ。


「・・・あのさ、しずかは男からの好意って気付く?」

「何?突然・・・?ある程度は気付くけど。」

「前に俺の事好きって気付いたの、あの、及川さんの一件の後って言ってたけど。」

 しずかの目が一瞬だけピクンと見開いた。


「うん。」

「俺、その前から意識させようとしてたんだけど、それは全然気付かなかった?」

 反応した表情がすぐまた気だるげな表情に戻った。


「・・・何となく、そうかな?とは思ってたけど、亮さんみたいなイケメンが私を好きになるとは思ってなかったので、深くは考えなかった。」

「え?」

「ハグとか悪戯されてるんだろうなぁって。」

「い、いたずら?」

「もしくはからかわれてるかと。」

「からかわれてるって・・・」

 何となく冷たい表情をしている様に見える。ここで怯むわけにはいかないが、しずかが言葉を続ける。


「そういう事良くあったから。」

「え?」

「好意を寄せてもらえてるんだろうな~と思って、こちらも気になって好きになったら違った、とか良くあったのよ。」

「良くあったの?」

 やっぱりしずか好意を寄せられる事多々あったのか。


「そー。だからあんまり男性に対して期待しなくなったんだよね。」

 半ば呆れた様な表情で言った。


「俺にも?」

「当時はね。・・・何か怒ってる?」

「いや、過去の男の話しが出てきてちょっとイラっとした。」

 モテるだろう、とは思っていたが、いっぱいそういう話しがありそうだと、少しだけ言葉尻が苛ついてしまった。


「聞かれた事に答えてイラっとされる側の気持ち。あと、付き合ってないから過去の男じゃない。何なの?」

 俺の言動を受けて、しずかがイライラし始めた。明らかに怒ってる表情だ。

 ヤバい!軌道修正しなくては!


「ち、違ったってわかったのは何で?」

「・・・それとなく確かめたら彼女持ちか妻帯者だった。」

 ふと、付き合う前にしずかに言われた言葉を思い出した。


『男性って本命がいるのに平気で他の人と関係持とうとしますよね。』

 あれは自分の身に起きた事だったんだな・・・


 しずかを引き寄せ抱き締める。

「絶対浮気しない。」

「・・・」

「しずか?」

「何?」

 あれー?さらに不機嫌になった?すごく言葉がヒンヤリしてる気が。

「何で黙ってるのかなって・・・」


「・・・男女の間に永遠も絶対もないのよ。」

「しずか?!」

 たまらず抱いていた肩を掴んで離す。

 顔を背けこちらを見ないしずかは遠くを見つめていて、口は尖ったままだ。


(こ、これは強制的に仲直りするしかない!)

 顎を掴んでこちらへ無理やり向かせた。キスで落ち着かせようと思ったからだ。

 が、両手でガードされて拒否されてしまった。


「しずか・・・」

 キスを拒否されてダメージを受けた所に追い打ちをかけられる。


「私今日ソファで寝たい。」

「え?」

「ソファで寝る。」

「何で?」

「・・・今日・・・したくない。」

 ううっ!さらなるダメージが!!


「エッチしたくないからソファで寝たいって事?」

「うん。」

 全然こっち見てくれない・・・口は尖っていると言うか、キュっと閉じられていて震えている様にも見える。

 心なしか胸を上下する動きが速い。呼吸が荒くなっている様だ。


「わかった・・・・・絶対そういう事しないから、せめて一緒に寝よ?今の状況で一人寝させるのだけは容認出来ない。」

「絶対しない、なんて信用出来ない。」

「絶対しないって!約束する!!」

 しずかを納得させる為強く言った。本当にこんな状況で一人寝なんてさせられる訳がない。


「・・・朝もしないよ。」

「う・・・わかった。それも絶対しない。」

「本当に?」

「本当!!」

「・・・言ったね。」

「え?」

「絶対しないって言ったね?まずはそれを信じさせてよ。一晩我慢出来ない人の『浮気絶対しない』なんて信じない!」

「!!!」

 た、確かに!


「わかった、耐えてみせる。しずかは俺の事好きだよね・・・?」

「・・・・・多分。」

「そ、そうなんだ・・・」

 多分?!俺、もう泣きそうなんだけど!


「しずか・・・俺に何か言いたい事ある?」

「・・・・・」

 これはあるな・・・


「明日、俺が耐えたら教えてくれる?」

「わかった・・・」




 ベッドに入り、抱き締める事も出来ず、その夜は寝入った。






 ********************


 チチチチ・・・

 鳥の囀りが聞こえる。

 朝が来た。

(っっしゃああああ!耐えた!耐えたぞ!俺頑張った!!)


 まじ地獄かと思った。しずかから風呂上りの良い匂いするし、不可抗力で時々触れる肌は柔らかいし、吐息も聞こえるのに、手出せないとかまじで地獄かと思った。



 体を起こして感動に震えていたら、しずかも起きた様だ。


「おはよ・・・俺ちゃんと我慢したよ?」

「おはよ・・・そうみたいだね。試す様な事してごめんなさい・・・」

「良いよ。俺に言いたい事あるんでしょ?」

「・・・・・」

「教えるって約束だよ?」

「うん・・・」

 しずかも体を起こし俺の斜め横に座った。



「・・・亮さんはいつも優しくて、奢ってくれたり、ゴハン作ってくれたり、家まで送ってくれるから、こんな風に思うのっておかしいのかなって思うんだけど、」

「うん?」


「あまりにエッチありきで・・・会えば絶対毎日するし、何か回数もおかしいし、外でデートしよって言っても聞き入れてくれないから、ああこの人は私とエッチする事しか興味ないんだなぁって思って。」

 隼人の予想的中!じゃなくてしずかが今にも泣きそうになってる!


「エッチしか興味ないなんて事ないよ!」

「でもX‘mas以外外でデートしてないし、外デート嫌がってはぐらかされたし、物で解決しようとするし、嫌いって言われたし何だこいつ、って思ったけど、私も亮さんとエッチするの吝かじゃないから別れる程の理由じゃなくて、困ってどうして良いのかわからなくって・・・・・なら亮さんが私の体に飽きるまでは、私も他に好きな人出来るまでは、今の関係を続けようって思い始めてた。」

 途中にさらっとすごい事言ったけど、最後のは聞き捨てならない。


「エッチだけなんて事ないし、しずかに飽きる事なんてきっとないし、後、他に好きなヤツなんか作らせないから別れない!!!」

 俺が強く言ったらすごく驚いた顔をし、涙を拭った後微笑んだ。


「・・・うん。約束守って私に何もしなかったから、浮気しないって信じるし、体だけが目的じゃないって信じる。信じる事にした。」

「・・・ごめん。」

「え?」

「俺、昨日お詫びの件話すつもりだったのに、何故だかどんどん論点ずれちゃって。」

「・・・うん、及川さんの一件て言うからお詫びの件かと思ったのに何が聞きたいんだろうって思った。」

「うっ、申し訳ない・・・」

 何か最近泣かせてばっかりだなぁ。しずかの頬を伝った涙を拭った。


「あ!しまった。触っちゃった!」

「・・・それくらい良いよ。」

「・・・抱き締めるのは?セーフ?」

「セーフ・・・」

 力いっぱい抱き締めてすぐ弱めた。



「俺が思ってた事も聞いてくれる?」

「うん。」

「俺さ、付き合う前も今もしずかに好かれてるか不安なんだよ。」

「え?」

 顔を上げ、驚いた表情を俺に見せる。

 俺はその表情を受け止める。


「・・・そう見せない様にはしてたからわからないよね。付き合う前は俺の気持ちが中々伝わらなくてもどかしくて。付き合ってからは俺以外の事考えられない様にって、俺なしじゃいられない様にしてやるって、普段の生活も夜も甘々に、グズグズに感じさせたくて、回数はまぁしずかがかわいくてつい、ってのもあるんだけどさ、そうやって何度抱いても甘やかしても、しずかが好きって言ってくれても、手に入れた感触がなくってさ。」

「手に入れたって・・・私、物じゃないよ。」

 伏し目がちに困った表情を見せる。


「それ!わかってる。しずかは物じゃない。そういう芯のある所もしずかの好きな所の一つなんだけど、時々遠く感じてたんだよ。」

「・・・」


「デートの誘いって全部俺からって気付いてる?」

「・・・あ」

「あと、俺の事何も聞いてこないよね?俺の仕事知ってる?家族の事とかさ。」

「知らない・・・」

 俺が話していないと言う事もあるだろうが、聞かれない、と言う事は興味を持たれていないも同然なんだろうと思っていた。


「ね、やっぱり。ラグビーとか色んな事が好きで興味あるのは構わないけどさ、もう少し俺にも興味や関心持ってくれないか?」

「え?!!」

 驚いた顔をしてどうしたんだろう?

 そう思ったら次の瞬間俺の頬に涙が伝った。

 もう泣き止んだしずかの頬にも涙が伝っている。これはきっと俺の涙なんだろう。


「あれ?ごめん。何でだろ?みっともないな男が。」

「亮さん・・・」

 彼女の両手が俺の頬を包む。次の瞬間唇に軽い感触があった。


「亮さん、愛してる・・・」

「っっ!!」

 涙が止まらなくなってしまった。しずかも涙を流し始めたが、その表情は穏やかだった。





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