第14話 彼女の懸念
確信した。
せ、せ、・・・・・セックス依存症 (言えた!!) かと心配したけど違う。
ただ、やりたいだけだ。
最初の方は付き合い始めたばかりだからこんなものなのかな?と思った。私も他を知らないし。
でも段々とあまりにも頻度がおかしいと感じ始めた。
会うと絶対、泊まりだし。
夜だけじゃない。翌日の朝や午後にもする事がある。
会ってる日全部そういう事しなくても良いと思う。
もっとX‘masの時みたいに外へ出て色々な事を共有したい。
外でおいしい物を食べて感動して、イルミネーション綺麗だねって、また感動して。
亮さんの作るご飯はおいしいけど、家にこもりきって思い出が作れるのかな?
ここ3日間だって、イヴイヴの日は仕方ないにしても、結局毎日した。
私の家に着いた時のは完全に余計だったと思うし、X‘masの朝!!
朝方、体に纏わりつく感触で目覚めたけど、夢だと思ってた。
気付いた時には、寝ている女性に何を・・・?
と一瞬激しく怒りそうになったけど、彼は『付き合って1か月』にこだわっていた。
「今日25日なんだけど?」と言われてしまっては、忘れていた負い目もあって受け入れるしかなかった。て言うかあそこまで進んでて彼が止まるはずもない!
だから、『意外と記念日を大事にしたい人なんだろう』と朝の出来事は自分なりに納得する事にした。
けれど、冬休み中どこかで絶対私を亮さん家へ泊まらそう、泊まらそうと言う下心が駄々洩れだった。
「二人きりでいたい」だなんて、多くの女性が聞いたらきっとうっとりしちゃう様なセリフも、裏を返せば、ただ「エッチしたいから」になる。
最後まで言わせなかったけど、案の定あれは「しずかとセックスしたいから」と言っていたのだろう。
もう呆れるしかなかった。
私の事情で亮さんのお家デートが多くなってしまうのは仕方ないけど・・・いや、本当に仕方ないのか?
そもそも一緒にラグビー観に行けば朝から会えるのに。
ラグビー観て、『面白かった』って言ってくれてたのに。
彼が待ってる家へ行って抱かれるだけなんて、まるで私・・・
所謂・・・そういう職業の人みたいじゃないか?!
X‘masのデートは本当に楽しかった。
ああ幸せ。愛されてるって思った。
でもその感動が今は少し揺らいでいる。
毎回家まで送ってくれる事を考えると、状況的にセフレだとは考えにくい。
だけど、全てはエッチの為に甘やかしているんじゃないかと疑ってしまう。
セフレではないにしても、私にはエッチする事しか興味が湧かないのかもしれない。
だから、元旦の日、私の実家へ顔出しをしない事を聞いた時には落胆してしまった。
なにも『結婚を前提にお付き合いしてます』なんて言葉は望んでいない。
私だってまだ、亮さんとの結婚は想像していない。
ただ、『あ、近くに実家あるんだ。じゃぁお正月だし挨拶だけでもしておこう』という気遣いを見たかった。
はっきり挨拶に来て?とは言わず、試す様な言い方をした私も悪い。
付き合ってまだ1か月だし、両親に挨拶とか浮かばないのは仕方ない事なんだと思う。
男性と女性で考え方違うし、『お正月に挨拶を』なんて考え方、重いのかもしれない。
だけど、だからこそ、X‘masであんなに幸せだったのに、『言われなかった言葉』でその幸せが揺らいでしまう。
もっと普通に外でデートしてたらこう思ってなかったのかもしれない。
私だって、彼との行為自体は・・・その、嫌いじゃない。
だけど、状況が、彼から『言われなかった言葉』が、私を不安にさせる。
『そしたら玄関で挨拶だけして帰ろうかな?』
なんて言葉を言ってくれていたら、私の憂いなんか吹き飛んだのに。
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「しずか!!」
時間通りに待ち合わせ場所へ向かうと、既に待っていた満面の笑みの亮さんが手を振っていた。
今日で仕事納めの人が多いだろう、マークシティの大エスカレーター横の歩道を、多くの人が行きかっていた。
今日はダークブラウンのピンストライプスーツか。ピンストライプの何本かの1本がミントグリーンに見える。またおしゃれな生地だな!
あまり寒くないのか、前を開けたコートはX‘masデートの時のキャメルのチェスターコートでスーツのブラウンとも相性ばっちりだ。
やっぱりこの人スーツ似合っててめっちゃ恰好良いわ。
「お待たせ!今日も素敵スーツだね。」
「スーツだけ?」
「・・・亮さんも恰好良いよ。」
「ありがと。」
チュッとこめかみにさりげなくキスをされた。ここ外、しかも人いっぱいいる・・・!
恨みがましい目線に気付いたのか
「誰も俺たち注目してないって。」
と悪戯っぽく笑って、私の手を掴み歩き始めた。
どこへ向かうのかと思ったら待ち合わせのすぐ上、マークシティの4階だった
このフロアはレストランであって、居酒屋の類のお店はなかったはずだ。
「珍しいね。居酒屋行くんじゃないんだ?」
「あ~・・・早めにご飯食べてさ、」
と私の耳元まで顔を寄せてきた。
「上のホテル行こう。泊まりにはしないから。」
「!!」
そういう事じゃない!
繋いだ手を思いっきり振りほどいて彼を睨んだ。
「え、しずか?」
「食事もゆっくり出来ないなら帰ります。」
「え、ちょ、ちょっと待って!」
彼の制止する言葉も無視して今来た道を戻る。
(やっぱりセフレだったかなぁ)
溢れそうになる涙を指で拭う。
「待てってば!!」
「痛っ。」
腕を強く掴まれてしまい、思わず身を捩った。
「あ!ごめん!強く掴み過ぎ・・た。あれ?」
私の少し潤んでいる目を見て違和感を感じたのだろう。
「何で泣いたの・・・?」
「泣いてません。」
「・・・ごめん、ちゃんとご飯食べに行こう。もうホテル行こうなんて言わないからさ。」
「わかった・・・」
差し伸べられた手を握る事を躊躇ったらすごく悲しそうな顔をし、手を引っ込めた。
それを見てすごく私も悲しくなってしまい、自分で何をしたいのかわからなくなった。
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絶対泣いてた。
強がりなのか、意地なのかわからないけど、しずかは時々わかりやすい噓をつく。
「はぁ・・・」
理由を答えたくないんだろうな。
腕を組み盛大なため息をついてしまった。
しずかがあんな態度を取った理由は明確だ。
仕事納めの今日、食事をしたら帰る、と言う話しだった。
いつも何だかんだ受け入れてくれるから、きっと今日も平気だろうと高を括っていた。
だからって、泣く必要あるか?!
セックスしたくないなら、『したくない』って言えば良くないか?!
いや、待てよ・・・実は泣くほどするのが嫌だったとか?
え、そうだったらマズい。
焦り始めたらトイレから出てきたしずかが目に入った。
「しず、」
「亮さん・・・」
腕組みしていた俺の左腕にそっと手を乗せ、上目遣いで訴えてくる。
「どうした?」
「頭痛い。」
「え?!大丈夫?」
「なので、お酒じゃなくてスープ飲みたい。」
「スープ・・・」
視界のすぐ右横にスープストックトーキョーがある。
「そこ?」
「うん。」
「薬飲んだ?」
「お腹に何か入れてから飲みたい、からスープ。」
「あ、ああ、わかった。」
「席取っておくから先頼んで来て?」と言われ素直に応じたら、彼女の食べたい物を聞くのを忘れてしまった。
注文したスープを受け取り、彼女の待つ席へと向かう。
「頼んで来るよ。」と言ったのに、「まだ決まってないから。」と言われてしまい、自分でレジに向かってしまう。
つまり、しずかの自腹だ。
払わせて貰えなかった。いや、たまたまだとは思うが。
戻って来たが、「頭が痛い。」と言っている為さっきの涙の理由を聞けていない。
碌な会話もなく食事を終えた。
「家まで送るよ。」
「ことわ・・・・ううん、ありがとう。」
絶対、『断る』って単語だった。
それに気を取られた俺は彼女が薬を飲んでいない事に全く気付けなかった。
しずかちゃんのスキル!:仮病
しずかさん嫌いと思う読者さんが出てきそうだな(苦笑い)
今日の内容、引っ掛かるかちょい心配(*´Д`)




