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二人で幸せになるために  作者: 新浜ナナ
第一章
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第11話 イヴ 前編

 鎌倉でのランチの後「しずかを早く食べたい。」なんてセクハラ言うから、

「明日プレゼント買いに行くんだから手加減してね。」

 とお願いした。


「善処します。」

「善処・・・」

 なんてやり取りが懐かしい。




 煽った私も悪かったけど、今日出かける事忘れてるんじゃないだろうか、と思うくらい激しかった。

 おかげで寝坊だ。


 でも、寝坊の張本人は割と早く起きていたらしい。


「声掛けたけど、疲れてたのか全然起きなかったから。」

 と放っておかれた様だ。

 いや、放っておかれた、は彼の印象が悪くなるか。

 そっ・・・とされてた?一緒だわ!!

 確かに日中動きまわってて疲れてたけど、それ以上の事があった訳で・・・




 シャワーを浴びて持って来ていた服に着替えた。お互いキメキメな恰好は昨日だけだ。

 バスルームの扉を閉める音やリビングへ戻る足音に気が付いたのかリビングの扉を開けた瞬間に声を掛けられた。


「俺さっき朝ゴハン食べたからしずかだけで悪いけど・・・ってそれで外行くの?」

「えっ?!!ダメ?似合ってない?」

 キッチンでコーヒーの準備をしていたらしい彼は、私の恰好を見るなりディスってきた。

 嫌そうな顔をしていたから『ディスって』と表現したんだけど。


 ニットではあるけど、鎖骨部分だけチュールレース仕立てになっているのでそこだけ透けて見える。

 試着してかわいい!と思ったんだけど他人から見たら違うのかな。

 因みにボトムスはアイスブルーのデニムマキシスカートだ。タイトに近いけど裾の方は少し広がっている。Aライン程は広がってないけど。


「似合ってるけど・・・それ昨日のドレスより肩丸見えじゃん。」

「丸見えって・・・ニットはネイビーだしインナーは黒だからわかりにくくない?それにこういうの亮さん好きかなって思ったけど。」

「下着今日も黒なんだ・・・じゃなくて!そういうのは俺の前でだけ着て欲しい。外出したらコート脱ぐ事あるだろ?」

 そういうの好きだけどさ、と付け加えられたけど・・・誰が下着が黒だと言った!インナーはキャソールの事だ!!


 いや、まぁ、黒なんだけどさ・・・



 私は着ている服に何かを言われるのがすごく嫌いだ。


 アパレルに勤めてる人間に文句を・・・?と思うが、これはきっと彼の嫉妬なので可愛く対応しておこうと思った。


「わかった・・・気を付ける。ごめんね?」

 近くまで寄って肘辺りの服を引っ張って上目遣いで謝った。

「か、かわ・・・いや、うん、わかってくれたなら良いよ。怒ってごめんね。」

 ちょろい・・・


 正直私はあまりこういう女の武器?みたいな事はしないし、したくない。

 けど、話しが長引きそうで生産性を感じない時、自分から折れる様にしている。


 さすがにこういう仕草はしないが、会社の上司であったり、スポーツバーのおじさんであったり、揉めそうな時大体先に折れてしまう。

 もちろん自分が悪くないと思った時は「私はこうだと思ってたんですけど、行き違いだったのかもしれませんね。」と存在しない誰か、のせいと主張する。

 大抵、行き違いではないよね、お前そう言ってただろ、と思うけど正しい事を主張しても良い事ばかりじゃないと知っているので折れるに限る。


 亮さんにも使うとは思わなかった。






 私が起きるのが遅かったから出かける頃には午後を過ぎてしまった。

 気にしなくて良いよ、とは言ってくれたけど、お寝坊が過ぎたから申し訳なく思う。


「俺のせいだしね。」

 とも言ってたけど、本当に。そう思う。



 明日は仕事なので荷物をまとめて車に積み込む。

 買い物も車で行く事になっている。


 まずは近場ではあるけど私のプレゼントからだ。


 欲しい物はないか?と聞かれて思い浮かばなかったけど、喧嘩の後に彼がしょぼくれたので一生懸命考えた。





「ボディオイル?」

「そう。それをね、亮さんの家に置いておいて欲しいんだ。スキンケア用品も含めるといつも持ってくるの大変で。」

「全然良いよ。それだけ?」

「うん。亮さん自分の家に他人の物置くの嫌そうだから、それ込みのお願いなんだけど・・・」

「しずかの私物だったら置いて構わないのに。」

「そう?ありがとう。香りは亮さんが選んでね。」

「えっ?」

「亮さん好きじゃん、そういうの。自分が選んだ香りを私が付けるんだよ?」

「あ、なるほど!了解!俄然楽しみになった!」





 という訳で現場に着いた。

 ジルスチュアートのフローラノーティスの店舗はジルに比べて少ない。

 都内にも数店舗あるが、亮さんの家から一番近いヒカリエに来た。


「おお~何がなんだか?」

 入口すぐの店舗の、白とベージュを基調とした什器に、所狭しと細々商品が並べられている。目的がなければ、特に亮さんの様な男性では言葉通り何が何だかわからないだろう。


「何かお探しですか?」

 まつげばさばさの目がくりっとした激カワな店員さんがかわいい笑顔で声を掛けてくれた。


「はい、ボディオイルの香りを試させて下さい。」

 かわいい女子大好きなので、こちらも良い笑顔で対応する。フローラノーティスの店員さんてみんな美女なんだよなぁ。眼福♡


「もちろんです。手に付けて試して頂く事も出来ますので。香りに依って質感が違うんですよ。」

「質感って何?」

 店員さんが説明終えると彼が真顔で私に聞いた。


「付け心地だよ。肌に付けた時サラっとしたり、もちっとしたり、色々違うの。」

「へぇ~」

「ご存じと言う事はもしかして、」

「はい、何種類か使ってます。」

「ありがとうございます!何かありましたらお声掛け下さいね!」

「はい、色々試させて下さい。」


「と言う訳で、はい、亮さん選んで?」

 店舗の端で店員さんがにこやかに見守っている。狭いから会話は聞こえているはずだ。

「えーどういうのが良いのよ?」

「あ、これだけは苦手なのでこれ以外ならどれでも大丈夫だよ。私に付けさせたい香り・・・選んでね?」

 後半は店員さんに聞こえない様、背を向けて小さく話した。


「やばい、俺が選んだ香りを付けるって、物質ではないのに興奮するね?」

 ・・・私の小声の気遣いが。


 ちらっと店員さんを見たら、一瞬驚いた顔をし、少し顔を赤くしてた。

 本当、申し訳ございません。


「亮さん、そういうのは声のボリューム落としてね。」

「あ、ごめん。家にいるのと同じ感じで話しちゃった。」

「うん、次からで良いから。」

 私もわざわざ人前で言っちゃったし。



「あ、これしずかの匂いするわ。あれ?これもだな。」

 言ったそばから・・・


「ごめんなさい。」

「いえ!色々ご利用頂いているみたいでありがとうございます。彼氏さんに選んで頂くなんて素敵だと思います。」

「そう言って頂けるなら、良かったです・・・」

 私は居たたまれないですけどね。



「迷うけど・・・これ!これはどう?」

「どれどれ?」

 何度か香りを試した所で、亮さんが選んだのは『リッチカメリア』だった。

 数種類ある中で一番肌がもちっとする質感の物だ。カメリアとは要は椿の事だが、花の香りは思い出せないのに、抽出するとこんな芳醇で深い香りがするものなの?と初めて嗅いだ時思った記憶がある。


 香りの説明は・・・難しい。まず、ローズ系ではないのでローズ特有の香りではない。若干フルーティさも感じるけど香りとしてはちょっと重めで官能的、と言うか・・・

 夏にこの香りだと少し甘ったるく感じるかもしれない。

 でも私はこの香りが好きで、実際持っている。


「うん、これ好きだよ。」

「でもこれしずか使ってるよね?同じ匂いする。」

「すごいよ、良く当てたね。」

 使ってるのはこれだけじゃないから香りが重なって、さらに私自身の体の香りと混ざって違う香りになっているはず。本当、すごい嗅覚。あ、怖いとかじゃなくて感動してるんだけど。


「使った事のない香りとかじゃなくて良いのか?」

「これが良い。」

「そ、そっか・・・」

 亮さんの目をしっかり見つめて答えたから珍しく照れてしまった様だ。


「じゃぁ、これにするとして、安すぎるんだよな。」

「え?」

「店員さん、こっちの白いボトルは?何ですか?」


「そちらはボディミルクです。クリームより軽い物になっております。基本同じ香りでご用意しておりますので、リッチカメリアの物もございますよ。」

「どう違います?」

「そうですね、肌に乗せた時の質感が全く違うのですが、冬はオイルで夏はミルク、と言う使い分けが多いと思います。乾燥する今の時期は重ね付けされる方もいらっしゃいますね。香りもより引き立ちますよ?」

「へ~じゃぁこれも。」

「亮さん?」


「ん?だってX’masプレゼントこれだけって寂しいじゃん。もう少し買ってあげる。」

「え、え、え、」


「あれ、これは?香水?」

「香水もございますが、これはヘアフレグランスで髪に付けるタイプの香水です。香水より軽いので、髪に付けても匂いがきつくなったりしません。」

「へ~、あ、これ良いじゃん。これもお願いします。」

「ちょ、ちょっと!」


「どうした?」

「多いよ!」

「多くないって。この香りは?好き?」

 今度はフレンチローズのオイルを私に試してくる。

「うん、好き。」

「店員さん、そしたら今の3つとこの香りのオイルとミルクでお願いします。」

 ああ!好きとか言ったらさらに選ばれてしまった!


「はい!畏まりました!」

 一気に5点も購入するもんだから店員さんがホクホクしてる。


「りょ、亮さん、そんないっぱい買ったら結構な額になるよ?」

「そんな事ないよ。」

「だって、昨日の食事全般全部支払ってくれてて、プレゼントもこんないっぱい・・・」

「ん?いつもより安いから苦じゃないよ、ってあっ!」

 しまった、って顔してる。


 いつもよりって言うのは元カノ達とのX’masデートの事を言っているのだろう。


「亮さんの元カノちゃん達って金食い虫なんじゃ・・・」

 これよりお金かかるってどういう事よ。

「ごめん、ごめん、比べた訳じゃないんだけど、しずかが多くを求めないからさ、ついね。」

 出た!『つい』



実名出しちゃってますけど、ジルさんの店員でもないですし、アフィリエイト?でもないです。

宣伝じゃないですよ。

ただ、香りめっちゃ良いのは事実♡


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