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二人で幸せになるために  作者: 新浜ナナ
第一章
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第10話 イヴイヴ 後編

「メリークリスマスは、まだ早いか、乾杯。」

「そうだね、乾杯。」

 食前酒のシャンパンを二人で乾杯した。

 しずかはロゼ、俺はノンアルコールのシャンパンだ。


「私だけお酒ですまないねぇ。」

「どこのおばあちゃんだ。」

 おどけてみせているが、しずかが少し緊張しているのがわかる。若干目が合わない。


「どうした?そんな緊張する程格式高いお店にしたつもりないんだけど。」

「えっ?!何でわかるの?」

「大体わかるよ。目が合わないし。」

「目が合わないのは・・・亮さん恰好良いなって・・・余計に見れないと言うか・・・」

「えっ・・・」

 今日はしずかがすごく褒めてくれる。いつもは照れちゃうのに・・・

 急にそんな素直になられると調子狂うな。


「ありがとう、でもしずかもいつもよりすごく綺麗だよ。さっきクロークで見とれちゃった。」

「嬉しい・・・ありがとう。今日のね、ドレスいつもより1サイズ下のなの。」

「すごいじゃん。あ、もしかして自分の会社の?」

「そうなの。大きいサイズの人のも作ってるブランドのなんだけど、通常サイズの方を着れたんだ!」

「そう言えば少し首回りすっきりしたね。痩せたんだ?」

「そうなの!」

 興奮気味でしずかが答えるが俺は少し心配だ。


「嬉しいなら良いけど、無理にダイエットしなくて良いからね。俺別にしずか太ってるだなんて思ってないんだから。」

 むしろ今のムチムチが最高と言うか・・・

「・・・そうやって身内が甘やかすと太るからダイエットは続けます。」

「うん、程々にね。」

 彼女が可愛くむくれた所に料理が運ばれてきた。



 どこの地方にも〇〇野菜があるとは知っているが、勉強不足で鎌倉野菜なる物があるとは、この機会まで知らなかった。


 具体的な品種ではなく、鎌倉市や隣接する藤沢市で栽培している野菜全体を指すらしい。

 しずかを何度か送り迎えしている時に気付いたが、湘南は意外と山坂が多い。山と海に囲まれている為か、土が肥沃で味の濃い野菜が仕上がるんだそうだ。


「このさつまいもすごくあまーい。ごぼうも何か味が濃いよ。」

 おいしい、おいしいと運ばれてきた鎌倉野菜を使った前菜をしずかが頬張る。


 ほぼ蒸し野菜で野菜毎に種類の違うソースがかかっている。カラフルで見た目も楽しい。

 ソース無しでもおいしいが、ソースが合わさるとまた格段に美味くなる。


 これはメインも期待出来そうだ。




 鎌倉野菜のミネストローネの後は、メインの葉山牛を使用したハンバーグだ。

 要は地産地消なのだから新鮮な肉だ。

 それだけで旨さはアップするだろう。


「!!!」

「!!!」

 ハンバーグを口にした瞬間、二人共目を見開いてお互いを見合った。


「おいしい・・・!」

「これは、想像以上・・・」

 肉汁が口の中で~云々、当たり障りのない言葉しか浮かばないがとにかくうまい!


「おいし~い。幸せ。亮さんここ選んでくれてありがとう!」

「どういたしまして。喜んでくれて探した甲斐があったよ。しかし・・・本当においしいね。」

 付け合わせの野菜含め、最後までおいしく頂いた。







「大丈夫?」

 お腹いっぱいで苦しいという表情をしずかがしている。

「大丈夫だけど、お腹パンパン。ね、ドレスはちきれそうじゃない?」

 そう言われたのでしずかが手を広げて見せるドレス姿を舐めまわす様に見たが、ウエストは別にはちきれそうではない。


「お腹周りは平気だけど、胸はちきれそうだよ。そこに栄養行った?」

「ちょっ!セクハラ?」

「今のセクハラになるの?」

「・・・亮さんまじで会社で気を付けてね。」

「いやいや、しずかにしか言わないし!」

「それもどうなの?!」


 フルコース程ではなかったが、他に外カリッ・中フワッなブールとデザートまで出たのでかなりのボリュームがあった。

 男の俺が満足しているのだから、女性には少し多かったのかもしれない。

 因みにデザートはミニケーキ3種にホテルオリジナルのバニラアイスだった。既に苦しいって言ってたはずのしずかは、何故かデザートもペロリと食べた。

 あれだ、女性特有の『デザートは別腹』ってやつだ。

 その後、案の定「苦しい」って言ってて笑ったけど。



 すぐに車に乗るのは辛い、という事で海まで散歩する事にした。ホテル横がすぐ県道なので、歩道もきちんと整備されている。

 しずかのヒールでも危なく歩けそうなので、手を繋ぎながら海へ向かい進む。

 砂浜まで行くつもりは全くないが、階段を降りないと砂浜にたどり着けない位、道路と砂浜との高低差がある。転落防止の柵に手をかけ海を眺めた。


「さすがにちょっと寒いね。しずか寒くない?」

「大丈夫!食べたから体温上がってる!」

「そっか。」

 お腹いっぱいと苦しそうにしていたのにもう元気になっていて、思わず顔が綻んだ。


「相変わらず冬でもサーファーはいるんだね。寒くないのかな?」

 海の沖合に黒い点がまばらにいくつも浮かんでいる。波待ちのサーファーだろう。

「海入っちゃえばそうでもないらしいよ。」

「へ~何で知ってる?」

 元カレがサーファーとか言うなよ。


「お兄ちゃんがサーファーなの。長く続けてるから結構上手らしくて、この辺りでは有名らしいよ。私は良く知らないけど。」

「あ、そうなんだ。」

 兄と言われてホッとした。


「ね、亮さん。」

 キョロキョロと辺りを見回した後、しずかが口元に手を添えて何やら言いたげだ。

 この仕草は内緒話しか?人気(ひとけ)無いし二人しかいなんだから内緒話しする必要ないのにと、顔、というか耳を近付けて行くと口元に暖かい感触があった。


「・・・へたくそか。」

「だって亮さん背高いし、不意だと難しい。」

 顔を真っ赤にしたしずかが言い訳している。

 口元に感触があったにはあったのだが、正確には口の端だ。


「・・・ほら、ちゃんとかがむからもう一度ちゃんと口にして?」

「・・・うん。」

 しずかが照れて出来なくなったら困ると思い目を瞑って待っていたら、


「さっきのお店連れてってくれてありがとう・・・」

 と軽く唇に触れすぐ離れそうだったので、抱き締めてこちらからキスを返した。


「んっ・・・」

 人気がないとは言えすぐ横が道路で車が通る。離れ難かったが程々にしずかを解放した。

「・・・早くしずかさんも食べたいんですが。」

「セクハラしないで。」

 今のは完全にアウトだと、自分でもわかった。




 ********************




「ん・・・亮さん、今日色々連れてってくれてありがとう。すごく楽しかったし、さっき食べた亮さんの手料理もやっぱりおいしかった。」


 鎌倉のホテルでのランチの後、横浜の方へドライブしたり都内のイルミネーションを3か所くらい見て回った。

 1か所だけ車から降りて少し散歩したけど、イルミネーションの中彼氏と二人で歩く、って言うのがすごくこそばゆかった。

 まるでドラマのワンシーンの様に、なんて言ったら大袈裟かな。

 でもそれくらい印象深い日になったと思う。


 付き合ってから日が浅かったし、私がいつもラグビー観に行ってしまっていて、ずっとお(うち)デートしかしてなかったから今日は本当に楽しかったし、嬉しかった。


 今日は特別な日だから、ここまででなくても良いからまたどこか行きたいな。


「そう?良かったよ・・・ふっ。最後に食べたシャーベットの香りするね?」

 ソファに座って上半身だけ向かい合っていた亮さんが私の唇から離れた。


「はっ!!歯を磨かせて下さい!」

「今さら。後ですれば良いよ。」

 そう言ってキスを再開してくる。

「だって亮さんがそんな食べる様なキスしてくるから・・・」

 今もだけど、家に着いてすぐ貪る様なキスをされた。


 私の頭を両手で優しく包むけど、キスは荒い。

 その様子がまるで必死に何かを食べている様に思えて、それが可愛く思えて、彼の頭をそっと撫でた。


 撫でられた事に驚いたのか彼の動きが止まる。

「ご、ごめん。がっつきすぎて。」

「ふふ。」

 謝る彼の様子を見て頭を撫で続けた。この後大変な目に合うのは自分だけど、今はとにかく彼が可愛らしく思える。


「今日、本当に綺麗だね・・・さっきも言ったけどさ。」

「ありがとう。何度も綺麗って言ってくれて本当に嬉しい。」



「しずか、あのさ、これ。」

 そう言ってソファの隙間から出した、文庫本程度のサイズの薄い紙袋を渡された。隠してたのかな。


「勝手に買っちゃったけど怒らないで受け取って欲しい。」

 X‘smasプレゼントは明日買いに行くので、何だろうと紙袋を開けた。

 袋に店名等の記載はなく、濃いブルーで、止めてあるのもシールではなく普通のテープだった。


 プレゼントにしては簡素なその袋の中身を見て唖然とした。


 さらに透明の袋に包まれていたが、何かわかる。これはひもパンだ。


「亮さん?」

「あー、やっぱり呆れた?いや!もういっそ変態と思ってくれたって良いさ!」

 清々しい程に開き直った。


「前履いてくれた時すごく興奮して良かったから、それはしずかへのプレゼントだけど、1周回って俺へのプレゼントと思って受け取って欲しいんだ。」


 ププっ

 すごくおかしくなった。

 購入したものの、むき出しのままで渡す事をためらったのだろう。入れる袋を探して、でもシールまでは頭が回らなくて事務的なテープになったんだと思われる。


 いつもスマートに努めようとしてるクセに、袋を買いに行ったり等の様子が頭に浮かんで思わず笑ってしまった。


「しずか、やっぱり勝手に買って、呆れた?」

 不安げな顔をして問いかける彼に少しだけいじわるをする。


「そうねぇ、どういう気分でこれを買ったの?買う時興奮したの?」

 ひもパンの入っている袋をひらひらと自分の顔の横で揺らして聞いた。


「ぐっ・・・それは・・・」

 困ってる顔をさせる事は少ないので今少し優越感が湧き出て私も更に調子に乗ってしまった。


 目を泳がせている彼の耳元に顔を寄せ囁く。

「私・・・今日の下着ひもパンだけど・・・これに履き替える?」

「!!!!!」




 男性を性的に煽ってはいけないと深夜に深く反省した。






長くなるな~と思ってデートの途中端折っちゃった。ラブラブを省略して亮さんごめんね。


実は下書き時点で冒頭、二人でシャンパンを頼んだ、と書いたんですけど、すぐに車で来てるわ!と思い出しましたw

飲酒運転にしてしまう所でした(;´∀`)

亮さんに頭の中で叱られた気分w


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