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仕様把握の練習テスト集

( ..)φ練習用1シーンだけ読切集φ(.. )

作者: テストマン


「うわっちぃ!」


轟音をあげてせまる炎が魔術師の前髪を撫でた。


どうやら髪先が焼けてしまったようで焦げたにおいがしている。


だが、今ここはそれ以上にガス臭い。


原因は目の前にいる――(ドラゴン)だ。


こいつが炎のブレスで吐き出した可燃性ガスの燃え残りが辺りに漂っている。



魔術師(マスター)さまっ!大丈夫ですかあっ!」


そう言って、魔術師の元へ小さな従者が駆け付ける。


ドラゴンブレスの予備動作を見て魔術師が彼女を突き飛ばしたのだ。

自分も前髪を焼かれてしまうくらいにはギリギリのタイミングだったので

彼女も心配したのだろう。

かなりの慌てようだ。


「大丈夫だ。気を付けろ、いつ次が来るかわからない。」


そう言って魔術師は(ドラゴン)を睨む。


竜の体長は7(メートル)ほど。中型の火を吐く竜種(フレイムドラゴン)だ。

前足後ろ足の両方に鋭いかぎづめを持ち、空を優美に舞う姿は不死鳥(フェニックス)を思わせる。

だが、翼膜をのぞいた頭の先から足の指先までをびっしりと覆うウロコがこいつは(ドラゴン)だとはっきり伝えてくる。


魔術師(マスター)さま、先手を撃ちましょうっ!」


「あぁ、まずは(ヤツ)を空から叩きおとすッ!現れよ、命を食む凍土(コアギュレー)の息吹()


魔術師の一喝と同時に、空中に100以上の氷塊が現れた。

氷塊はそのすべてが槍の穂先のような鋭い刃になっており、その切っ先は(ドラゴン)へと照準されている。


しゅばあああああああっ!!


魔術師が手を振ると氷塊は目にもとまらぬ勢いで撃ち出された。

氷の嵐(ブリザード)となった氷塊達は正確に(ドラゴン)の翼膜だけを貫き、翼を破れたボロ雑巾のように変えていく。


数秒後、無数の氷塊に翼を食い破られた(ドラゴン)はあっけなく地面に落ちてきた。


「やったっ!やりました!さすがは魔術師(マスター)さま!」


従者はぴょんぴょん跳ねて喜んでいるが、まだ早い。

むしろ本番はこれからだ。


「グォ、グォォオオオオオオオッッ!!!」


「うぇッ!?うぇえええええっ!?まだ生きてるんですかっ!?」


当たり前だろう。たかだか十数メートルの高さからドラゴンが落ちて死ぬなら人類はそんなに苦労してないぞ。


「おい、従者(ラッセル)。出番だ。お前のすばしっこさで(ヤツ)の気を引いて足止めしろ。1分も持てば十分だ。竜の息吹(ドラゴンブレス)には気を付けろ、さっきみたいな油断は無しだ。できるな?」


「はっ、はいッ!?できます!大丈夫です!頑張りますッ!」


そう言うと彼女(ラッセル)は|剣(人間にとっては短剣)を取り出すと

落下のダメージが抜けてきたらしい(ドラゴン)に一直線に向かっていった。


ラッセルは優秀な従者だ。

時々抜けている時があるが、小柄ですばしっこい彼女は見切りの達人だ。

あの程度のドラゴン捕まることはない。

なのでこちらも安心して仕事に取り掛かれる。


魔術師は背負っていた大きな杖を取り出し、大地へと突き立てる。


開呪(リリース)粛清の分銅(オラシオ・リブラ)ッ!」


魔術師が短い詠唱を終えると

杖は淡く、そして強く、銀色の光を放つ。

突き立てた地面には杖を中心として同じ色の光が広がり

地面に巨大な文様を描き出していく。


出来上がったのは

幾何学模様(ジオメトリー)が入り混じる直径5メートルの魔法陣。

あとはこいつに魔力を流し込めば陣は起動する。


魔術師は、竜へと向かった従者にちらりと目をやった。


ラッセルは身体がとても小さい。

身長は1メートルかそこらというところで

大人が入れないような場所にも入れる。

彼女はそのメリットを生かして、

ドラゴンの足元に潜り込みヤツを翻弄していた。


「グォオオオオオオオッ!!」


ドラゴンはラッセルを追って大きな唸り声をあげるが、

魔術師と一緒に多くの修羅場をくぐってきた彼女が

その程度で怯むことはない。


さらに、彼女はドラゴンを少しづつ拘束しつつあった。

彼女の持つ短剣<縫い留め>は

その刃が通った場所と場所を魔法糸で結びつける。

相手の体を切り付けてから地面などに短剣を刺せば

相手はもう大きく動くことはできなくなる。


だが、ドラゴンのウロコには刃が通らなかったのだろう。

代わりに魔法糸の両端を地面に固定してしまい

逃げながらドラゴンの足に糸を絡ませて、

ドラゴンを地面に縛り付けている。

足止めとして十分な成果だ。


――これでこちらも本気を出せる。


魔術師は握った杖、そして展開した魔法陣へと魔力を流し込んだ。


巨大な陣に漲る程の魔力が行き渡ると、大気が歪んだ。


本来は雲のように触れることのできない魔力が

凝固して実体化することで空気が押しのけられているのだ。


杖の先につけられた大きな魔石は鈍く、まばゆく、光を放ち、

大きな大きな銀色の玉を作り出す。


「ハァァァアアアアッッ!!」


魔術師は小さい惑星(ほし)のような魔力塊を杖ごと高く掲げると

従者に向かって大声で激を飛ばす。


「いくぞおおおおおッッ!!!ラッセルッ!準備はいいなッ!?」


「はいッ!」


魔術師は魔力の塊を空高く撃ち上げた。

魔力は10メートルほど上空で静止すると、

今まで以上に存在感を増して

とあるモノへと変化する。


それは円柱形の硬質の塊。

上が少し細く、上部には丸い環がついている。

まるで教会に付けられた真鍮の鐘のようだが、

中に空洞などは一切なく、音は鳴らない。

純然たる破壊力を宿した重厚な塊、

巨大な魔力分銅(インゴット)


ラッセルが竜から飛びのく。

竜は足を縛られ身動きは取れない。


「落ちろ……粛清の分銅(オラシオ・リブラ)ァァアアアッッ!!」


魔術師が杖を振り下ろし、魔力分銅を墜とした。

分銅は流星のような勢いで竜に激突した。


ッバアアアアアン!!


分銅が竜の硬いウロコを打ち砕く。

頭の角は根本から折れ、

翼はグシャリと形を歪める。


派手な土埃が収まったあと、

そこには強烈な打撃でこときれた

竜の躯が横たわっていた。


(終)





















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