(9)ノミと宅配便と私
人類は掃除機と布団乾燥機を持っている。
だが、しかし。
「だぁーっはっはっはっはっ!」
人間の2次元創作を数珠土産ハルミと一緒に見ているうちに覚えた悪役笑いを全miniたちの脳内に響かせ、©*@«は宣言した。
「大量殺戮兵器など、恐るるに非ず! 我々のスーツの敵ではないわ……っ!」
「「「おーーーーっ!」」」
そこここで、勝利の跳躍を決めるminiたち。
彼らの大切な卵も掃除機で吸いとられてしまったが、もともと卵殻はスーツの素材になるほど、丈夫で耐熱性に優れたものである。
きっとゴミ処理場あたりで孵化し、立派な戦士に育つに違いない。
「我らに失うものなど無し!」
「「「 Y E S !!」」」
「さ あ 、 逆 襲 だ ……!」
「「「 Y E A A A A H !!」」」
テンション高く跳び上がり、数珠土産 × 和樹の隠れリア充カップルと、気の毒な猫に襲いかかる。
「あっ、痛いッ……」 「うっ、痒いいー!」 「ニャーッ!」
身体のあちこちをボリボリと掻くふたりと一匹を眺めつつ、©*@«は気分よくアクロバティック宙返りを披露した。
「はーっはっはっはっ! 苦しめ苦しめ……!」
「「ご立派です!」」 「「やりましたね!」」 各々0.1mmの脳内で、©*@«を誉め讃える部下たち。
「これで、¤*≅¶様も浮かばれますね……!」
「……ああ、そうだな!」
適当に調子を合わせつつ、©*@«は脳みその片隅でひっそりと思った。
――― すっかり、忘れていた。 ―――
.:º*¿¤*§º*ゝ.:
リア充寸前のカップル vs 新型ノミ ――― 人によってはどちらも撲滅対象にしかならないだろう2大勢力の戦いは、ついに、最終を迎えようとしていた。
「こんにちはー クロネコヤ○トでーす、あ、ハンコいりません!」
「こんにちはー 佐〇急便でーす、あ、ハンコいりません!」
「こんにちはー 〇帽でーす、あ、ハンコいりません!」
ってワケで、ついに、ネット通販で買った各種殺虫剤が数珠土産宅に届いたのである……!
「和樹ちゃん……!」 「ハルちゃん……!」
決意も新たに鼻と口をマスクで覆い、見つめあってうなずく、ふたり。
「「いざ、出陣……!」」
手に思い思いの化学兵器を持ち、散布していく。
「必殺! スミス○ン粉剤!」
「ノミがいなくなるスプレー! ソープの香り!」
「奥義! バイオケ○カル……っ!」
「合体奥義※! ノミコロリ……っ!」
※ 実は全然、合体していません。あくまで全年齢対象なので悪しからずご了承ください。 ※
「はぁ、はぁ、はぁ……こんなに燃えたの、久しぶり……」
「ああ……最後まで……やりきったな……」
殺虫剤を部屋中に散布し終え、はぁはぁと荒い息を吐きつつ、数珠土産と和樹。
汗ばんだ身体を抱きしめあい、お互いの健闘を讃える。
さて、次はいよいよ。
「最 終 兵 器 だ …… !」
汚部屋に置いて約3時間でノミ・ダニすっきり (当社調べ) 。
その名は 『バル○ン』 である。




