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部屋と宇宙ノミと私  作者: しいたけ零
10/11

(10)部屋と宇宙ノミと私

「これは一体、どういうことだ……っ!」


 ©*@«(ピンハネ)は呆然と呟いた。

 つい数時間前までは、地球におけるminiたちの覇権を信じて疑わなかったというのに……


 人間たちがバラ撒いた毒の霧は、予想以上に彼らを追い詰めた。


「……うう……」 「く、くるしい……」 「た、タスケテ……」

「ああ"……¤*≅¶(パンチラ)ざま……!」


 ©*@«(ピンハネ)の目の前で繰り広げられる、地獄絵図。


「おのれ、おのれ、おのれ……っ!」


 たまたま薬剤が届いていないカーペットの片隅に逃れ、©*@«(ピンハネ)はがっくりと両手をついた。


「人間とは、なんと悪辣なものを開発するのだ……っ!」


 もといた惑星≡<*£(マタンキ)のBIGどもは、確かに全身ツルッパゲで潜める場所もなく、なおかつminiたちから容赦なく居住空間を取り上げたが、殺そうとはしてこなかった。


 移住する前に調べておけば、対処のしようもあっただろうが……

 元いた星(マタンキ)の常識に染まっていた彼は、考えもしなかったのだ。


 生物が、食べるためでも生きるためでもなく、ただ殺すためだけに何かを開発することがある、とは……。


 そして、起居を共にし、敵対しながらもいつの間にか感情移入していた相手が、容赦なく自分たちを殺戮しにかかる、とは……。


「くっ……人間とコンタクトを取る方法も、開発しておけば良かった……!」


 きっと、甘チャンな元引きこもり女子高生・数珠土産(ずずみや)のことである。

『殺さないで』 などと涙ながらに頼みこめば、結局は許すであろうことは明白だった。


「…………」


 ふっ、とニヒルな笑みを脳内で浮かべる、©*@«(ピンハネ)

 彼はよく数珠土産(ずずみや)や和樹のことを知っていたが、人間たちの方は彼らのことを全く、知らないのだ。


(居住権を得るには、いきなり敵対するのではなく、知ってもらう努力も必要だった、ということか……!)


 やむを得まい。

 ©*@«(ピンハネ)は力を振りしぼって跳躍し、指令を出した。


「全 軍 撤 退 …… !」



 .:º*¿¤*§º*ゝ.:



 すっかり片付いて清潔になった部屋に入り、数珠土産(ずずみや)ハルミは大きく安堵の息を吐いて和樹(かずき)を振り返った。


「ノミ……いなくなったね」


「ああ……良かったな」


「これで安心して、受験勉強できるね……」


 しばらくモジモジとしてから、上目遣いに和樹を見る、数珠土産(ずずみや)


「ねえ、今度一緒に勉強会とか、しない……?」


「あ、ああ……」 和樹は照れくさそうな顔をする。

 本当は嬉しいのだが、まだまだ素直になれないお年頃、なのである。


「で、でもさ……付き合ってない男女が一つの部屋で勉強って…………」


「……何もないまま……一年も待てないょ……」


「えっ? ゴメン今良く聞こえなかった」


「……ばーか」


「えっ!?」


 ひっそりと肩を寄せ、もはや勉強モードではなくなった二人。


 ……もう付き合ってます、でいーじゃんそれ。



 .:º*¿¤*§º*ゝ.:



 どこまでも広く、光と暗黒に満ちた宇宙空間を、砂粒のようにも見えるちっちゃヤツらが大跳躍(ワープ)していた。


©*@«(ピンハネ)さま、これからどこに向かうのですか?」


 部下の質問に、©*@«(ピンハネ)は遠い眼差しで答える。


「そうだな……まずは、≡<*£(マタンキ)に還るか」


「ええ……カーペットの下でつつましく暮らすのが、我々には合っているのかもしれませんね……」


 やはり、miniはminiでしかないのだ……と、部下が諦めの言葉を紡ごうとした時。


「なにを言う」 ©*@«(ピンハネ)が、思いっきり不思議そうな顔をした。


≡<*£(マタンキ)にてしばし休養後、再び地球に向かうぞ!」


「ええっ……!?」


 まだ懲りてないのかコイツ。

 脳内の一部でつっこむ部下に、©*@«(ピンハネ)は解説をする。


「つまりだな、我々がブラックホール・ホワイトホールを使って地球~≡<*£(マタンキ)間を往復しても、地球時間でせいぜい……」


「1年半ってとこですよね」


「そうだ」


 行きは数ヶ月だったが、帰りはホールの位置関係で少々時間がかかる。


「往復するだけで1年半以上の時が稼げる。つまり」


「つまり……?」


「我々はまた、イチからやり直せるのだ!」


 人間は学習しない生き物だからな、とドヤる©*@«(ピンハネ)



「We'll  be  back  !」



 なぜか英語で宣言し、「だぁーっはっはっはっはっ!」 と宇宙中に悪役笑いの思念(テレパシー)を響かせながら、彼は0.1mmの脳ミソの片隅で、ちらりとこう考えたのだった。




 ――― 次に地球に戻った時には、アイツら大学かもな……。




THE END



 ~・~ Data File ~・~


『侵略者情報』


 ・地球基準で身長1~3mm

 ・派手なツンツン頭

 ・知能水準 高レベル

 ・会話はテレパシー

 ・跳ねる

 ・耐熱/耐寒/耐衝撃スーツ装着

 ・薬剤耐性 = 低 (本編終了時現在)

読んでくださりありがとうございます!


本編はこれにて終了、あと1話、コラボの経緯をご報告して完結です。

最後までお付き合いいただければ嬉しいです。宜しくお願い致しますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[良い点] 完結おめでとうございます! ピンハネ懲りないですねw
[良い点] 完結おめでとうございます! 末永く爆発しろ! 全滅エンドかと思いきやキレイに終わって一安心です。 なんだかんだ愛嬌のあるヤツラでしたからねw 今度は交流方法を得てから来訪して欲しいもので…
[良い点] ピンハネ様 (∩´∀`)∩ ばんざーい ☆彡 完結おめでとうございまっす!!
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