(1)未知の惑星と私
宇宙の彼方アンドロメダ銀河の端に、その惑星は、あるという。
もちろんそこの住人はアンドロメダなど知らず、その銀河を 『¤*≅∧∩∼¤*∀』 と呼んでいた。( 『偉大なる天の湖銀河』 といった意味である。)
また、彼らの住む星は 『≡<*£』 と呼ばれていた。( 『黄金の球』 程度の意味。どこでも生命の考えることは、あんがい似通っているようだ)
さて、 『≡<*£』 には二種類の知的生命体がいた。BIGなヤツとminiなヤツである。
BIGはまぁ、われわれ地球人と同じくらいのサイズ。で、miniは地球基準で1mm程度だ。
地球でも同様の慣わしはあるが、この星でもBIGな連中はminiたちに知性や感情があることを知らず、自覚せぬままに迫害を繰り返していた。
……まぁ、つまり、miniは害虫のノミ (ペットの毛皮の中に寄生し血を吸うアレ) 的なヤツらだったのだ。
病気を媒介する、とか言われるが、それは違う。
彼らは知性があったので病気を持ったペットには近寄らず、健康なペットの身体をホームや庭として、大人しく血を吸っていた、それだけである。
それでも、BIGたちは気にくわなかった。
ちょっと邪魔、目障り、気持ち悪い……そんな理由で、miniの生活圏を片っ端から奪っていった。
miniたちが寄生するペットは全て、aib◯的なロボペットにされた。
――― ちなみにBIGには、元から寄生できない。やつらは気温変化への対応を完璧に衣服調整で行えるよう進化したので……つまりは、体毛など身体のどこにも1mmも存在しない。 ―――
そして更には、ダ◯ソンを遥かに超える高性能な掃除機が出現。
mini達はカーペットの隙間で震えながら過ごす日々を送ることとなったのだった……。
ついに。
「もう耐えられん!」
たまりかねた彼らは、BIGの一般家庭である、〃〃¨*さんちの1階ゲストルームの柔らかカーペットの片隅で集会を開いた。
「そうだ、これ以上は我慢できない!」
「迫害を恐れ、自由に跳ねられない日々……!」
「掛け替えのない同志たちも皆、掃除機の犠牲に……!」
「(;;)……¢∀∀、ゝ∀∀、∩&∀……」
次々とあがる、嘆きと怒りの声。どうでもいい情報だが、彼らは発声器官を持たないためテレパシーで話す。
「そこで諸君、私は、宇宙への移住を提案する!」
miniたちのリーダー、¤*≅¶の発言に、声にならないざわめきが、彼らの大きさ約0.1ミリの脳内に広がった。
「なんだと!?」 「いや、それありかも……」 「BIGどもへの負けを認めるというのか?」 「だが、ここではもう……」
さまざまな思念が飛び交う中、「いいか!」 と宙返りをするリーダー・¤*≅¶。
「敗北と思うな! これは、戦略的撤退である! 他星で富と繁栄をつかみ、モフモフのカーペットの上でこの星のBIGどもを見返してやるのだ!!」
¤*≅¶は勢い良くアクロバティックな跳躍を披露し、仲間の士気を鼓舞する。
「繁栄と、富……!」 「ざまあ……!」 魅力的な言葉に、次第にその気になる仲間たち。
「そうだ! 我々は新たな星の新たな毛の中で、宇宙の最大勢力になるのだー!」
リーダーの力強い跳躍につられたひとりが、「その通りだ! 我らこそ最強だ!」 との思念を迸らせつつ、カーペットに頭がぶつかる程に跳ねた。
連られて、ほかの仲間たちも次々と同意の跳躍を決める。
「「力!」」 「「富!」」 「「繁栄!」」 「「復讐……!」」
口々に叫びつつ、盛り上がる仲間より、一際高く跳びはねながら、リーダー・¤*≅¶は胸の奥で苦い思いを噛み締めていた。
…… この星 は、miniを選ばなかったのだ。 ……




