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高コストの捨て駒

 イージーだと聞いてやってきたビバ異世界。

 しかしその実情はスポーンした段階でほぼ詰みの状態という絶望的なものでしたとさ。

 全然めでたくない。


「ため息すら出ねえよ…」


 しかし絶望していても何も始まらない。

 考えろ。

 何をすればいい?

 どうすれば勇者を撃退できる?

 この際殺害できなくてもいい。

 とにかく今はどうすれば生き延びられるかだけを考えろ。


 現在リッチーと勇者一行が交戦しているのは本城の3階、全5階建ての城だがその間には何もない。

 リッチーが抜かれればこの謁見の間まで一直線だ。

 トラップはない。

 迷路のように時間稼ぎができるものもない。

 今いるフロアの上にもフロアはある。

 が、そこは魔王の居住フロアであり、侵入を阻めるものはない。

 さらに言えば、こういった城にはありそうな脱出路の類も見当たらない。


 そして、誰が設計したのか知らないがこの城の通路は一本のみ。

 こっそり抜け出すこともできない。

 なによりダンジョンコアはダンジョン外に持ち出せないらしい。

 

 つまり、逃走は不可能。

 なんとかして勇者一行を撃退する必要がある。


 今まで前魔王はどう撃退していた?

 最後にあれだけDPを使い込んでいたんだ。

 おそらく何度か攻めてきた人間を潰していたのだろう。

 その際にはトラップも使ったはず。

 今確認できないというのは現状では使用できない、というものも含まれているのかもしれない。

 もしそうだとしたら…復旧できれば勝機は上がるだろう。


「前魔王は数々のモンスターを使い侵入者を撃退していたようです。その戦略はハイコストのモンスターを少数創造し力業でねじ伏せるというものでした。また、前魔王本人も高い戦闘力を持っていたため、自身も防衛にあたっていたようです。そのためこれまでにトラップの類を使用した形跡は見られません」


 あっちゃー、脳筋タイプでしたかぁ…。

 確かに圧倒的な戦力でねじ伏せる戦略は悪くない。

 だが、高い戦闘力を誇る個を戦略の中心に据えるのは悪手だ。


 ダンファンでもコストを節約して節約して、ハイコストの駒を召喚し防衛および侵略に当たらせるプレイヤーは少なからずいた。

 というより結構いた。

 だが、それは初心者に限った話である。

 

 この戦法は個と個のぶつかり合いでは機能する。

 より強い駒を所有する陣営に勝機があるからだ。

 しかし、相手が頭を使えば一瞬でその優位性は覆る。

 要するに脳筋戦法、戦略としては下の下なのだ。

 実際、ダンファンで勝負する相手がこの戦略だったとしたら、こちらが低コストのモンスターしか使えないとしても鼻歌交じりに勝利することができた。


「初心者かよ…」


 今まで負けていなかったということは、今まではその初心者脳筋戦法が機能していたのだろう。

 だが、それが機能しない相手、つまりこちらよりも優れた戦力を持つ相手が現れた。

 今回のように。


「トラップを作ろう」


 そんな個の戦力として優れた相手を前に低コストのモンスターを当てたところで焼け石に水にすらならない。

 ならば頭脳を用いてトラップを配置するのが最良。

 どんなトラップを配置すればいい…?

 自分の命が懸かっている現状、ダンファンの試合の時以上に頭を働かせる。


 毒の部屋。

 ダメだ、魔法がある以上解毒されると見た方がいい。

 どこかの部屋に閉じ込めて餓死するのを待つ?

 いや、これも魔法という存在の前では無意味か。

 壁を破壊されるかもしれない。 

 また、食料を持ち込んでいる、もしくは作り出すような手段があるかもしれない。

 矢、槍などを放つトラップ。

 壁や天井を落とし圧死させるトラップ。

 すべて同様だ。


「ダンジョンの壁を破壊することは可能か?」

「可能です」


 やはり駄目だ。

 おそらく突破される。


 一番勝機があるトラップはなんだ…?

 落とし穴に針山でも仕込んでみるか…?

 

「落とし穴の作成は可能です。しかし、針山を仕込むのはDPが不足しています」


 DPの壁…!

 質の悪い戦法に無駄なDPをつぎ込んだ前魔王にいっそ恨みすら湧いてくる。

 死んだらあの世で散々ディスってやる。

 

 くそ、それにしても魔法という概念の知識が不足しすぎている。

 可能な限り知識を詰め込みたいが、しかし今はいつリッチーが突破されるかわからない。

 

「現在交戦中のリッチーと連絡を取ることはできるか?」

「通常創造したモンスターには知性がなく、単純な命令しか出せません。命令の上書きは可能です」

「今はどんな命令で動いているんだ?」

「一秒でも長く持ちこたえろ、と」


 これもダメか。

 リッチーと連絡が取れるのならばあるいは時間の先延ばしが可能かもしれないが…。


「命令を更新しますか?」

「…いや、そのままでいい」


 おそらく個の力では押し勝てない。

 ならばここは今まで通り1秒でも長く時間を稼いでもらおう。

 

 いや待てよ、命令の更新は可能——?


 口元がニヤリと歪む。

 ようやく光が見えた。


「この方法ならいけるかもしれない」

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