アルカロイドの導因。
目を開ける。
ああ、やっぱり変わらない景色。
ふかふかのベッドに天井にはシャンデリア。
天幕付きのベッドじゃないだけましか……。
こんな豪華な部屋。やっぱりさっきのは夢じゃなかったってことなのかなぁ。
さっき一度起きた時、執事さんが言った言葉が耳に残ってる。
「お加減はいかがでしょうか、アルカ様」って。すっごくゾクゾクっとするような声で囁かれ、ボクはパニックになりそのままもう一回意識を失ったのだった。
そして。
うん。
何が間違ったのか現在ボクは魔王アルカ様の身体の中にいるらしい。
そこらじゅう痛くって、なかなか体を動かせないけれどそれでもいまになってみれば解る。
この肉体が子供のボクじゃないってことだけは。
って、アルカ様の意識はどこにいっちゃったんだろう?
なんとか上半身を起こして周りを見渡すと、鏡台があった。そこに映る姿はやっぱり間違いなくアルカ様の。
ウインクしてみたり口を開けてみたりしてもやっぱり同じように動くその顔は愛嬌があってかわいい。
アルカさまー、どこですかー?
心の中で、精一杯の大声のつもりで叫ぶ。
うう。
半分諦めかけたその時だった。
……おーい、
……おーい聞こえるかー
……おーい!
最初は小さくしか聞こえてなかったその声が、だんだん大きくなって。
アルカさまーー。何処にいらっしゃいますかー?
……ああ、お前はあの時の少年か。あたしを庇ってくれた。
はい。そうですその少年ですロイドと言います。
……ロイド、か。先ずはお礼を言わせてもらうぞ。助かった。ありがとう。
いえいえ、もったいないです。それよりもこれってどう言う事なんでしょう?
……うーん。あたしは今真っ白な空間に漂ってる。此処は、ひょっとしたらあたしのインナースペースかもしれん。
え?
……あの時、あたしは咄嗟にお前を自分のインナースペースに引き込んで、そのまま城へ転移した筈だったのだがな。
ああ、そうか。
ああ、ボクも同じ事してました……。
……なんと? 転移などできる人間は世界でも数人しかおらぬのだぞ? お前、たしか純粋な人族に見えたが……。もしかしてハーフかクオーターか?
いえ、純粋に人族、だと、思います。といっても赤子の時に捨てられたので先祖はわかりませんが……。
……に、しても、だ。 そもそもインナースペースを自在に操れぬ事には転移もできぬ筈。その年でどうやって……。ああ、それよりも。
……事故、か。インナースペース同士がぶつかって混ざったらしい。たぶん、あたしの方が大きかったんだろう。お前のインナースペースがそっくりそのままあたしの中に入って融合してる感じ、だな……。
ああ、インナースペース同士の事故……。破れて溢れたわけじゃなかったのは幸いなのかなぁ……。
……インナースペースが破れたとかはまだ聞いた事がないなぁ。何処からそんな発想になったのだ?
あ、ごめんなさいアルカ様。ボクの前世で読んだ物語にそんなお話があったんです。
……そうか。お前、転生者か。それも、もしかしたら異世界からの? 時々見えてくるイメージが尋常じゃないしな。
……なるほど。お前の人族らしくない能力も其処に原因があるのかもな。