16-1 金髪のSランク
よろしくお願いします。
入学式以来の金髪碧眼王子様登場です。(脇役です)
ジバンリン暦52年5月17日
朝の教室。
私は改めて昨日の失態を思い返して机に突っ伏していた。
(はぁ~。そーくん、呆れちゃったかな~。
オランジパイはそーくんと半分こしたとは言え、調子に乗ってりんこパイにパフェまで頼んで。
そーくん、後半は私の事をにこにこ見てたけど、内心は絶対に「うわ、まだ食べるの」って思ってたよね)
も~あそこのお店のパイが美味しすぎるのが悪いんだわ。
まぁ幸い運動はしっかりしてるから体形が変化する心配はないんだけど。
ん~よし。
くよくよするのはおしまい!
そーくんとはまたお昼に会えるんだし、その時に様子を伺えばいいよね。
そうと決まればサクッと午前の講義を済ませてしまおう。
と、気合を入れ直したところで、横合いから声が掛かった。
「御機嫌よう、リーン君」
横を見れば金髪を輝かせた男子生徒が居た。
こんな風に声を掛けてくるのは一人しか居ない。
東の王国の王子で同じSランクのエラーザ・ミスリニアだ。
「おはようございます、王子」
「おいおい、王子とはまたつれないな。
君ならエラーザと呼び捨てにしてくれても構わないんだよ」
「はぁ。そうですか、王子」
悪い人ではないんだけど、無駄にプライドが高いのが残念ね。
あと、シスコンだったことが先日判明したし。
「ところでリーン君。先日の話は考えてくれたかな」
「……何のことでしたっけ」
「かねてより言っているパートナーの件さ。
やはり僕のパートナーは君が最適だ」
「先日組んでいた方はどうしたのですか?」
「ああ、彼女か。彼女は悪くは無かったんだけどね。
ただ僕よりも1段能力が低くてね。
一緒にダンジョンに潜っても多少楽にはなるかなという程度で、より先に行くことは出来なさそうなんだ。
今、ようやく34階まで来たんだが、35階のボスを倒すのに彼女では役に立ちそうになくてね」
「はぁ」
先日まで私も31階層が最高だったことを考えると、大分頑張ったんだろう事が伺える。
まあ、だからどうだって話はあるんだけど。
「そうでしたか。
ただ、申し訳ないのですが、既に別の方とパートナーを組んでいます。
王子とはパートナーは組めません」
私がそう言うと、王子の顔がピクッと引きつった。
「おいおい、まさかあの冗談みたいな噂は本当だったというのかい?」
「どの噂かは知りませんが、私のパートナーはそーくん、ソージュ・ライオネル君です。
今は彼とダンジョンの46階を攻略中なんです」
王子の顔が更にピクピクッと反応した。
「ふ、ふふ。いやぁ、君も物好きだね。
そんな足手まといにしかならない人を連れて行くなんて」
「足手まとい?」
「だってそうだろう。
1年で、剣も魔法も碌に使えないEランク。
君に連れて行って貰えたから46階層なんて深層に行けてるが、本来なら5階層も突破できないんじゃないかな」
そう言って、そーくんを小馬鹿にする王子。
ちょっと前なら殴り飛ばしていたわ。
今はなんだろう。ランクに拘って真実が見えていないこの人が可哀相ね。
「その彼の為にも、大怪我をする前に、君とのパートナー契約を解除して、分相応な階層に行かせてあげるべきだね。
うん、そうだ。そうに違いない」
あー、勝手に自己完結して行っちゃった。
やっぱり、思い込みと無駄な正義感が強すぎるのも問題ね。
困ったな。ちょっと面倒な事になりそう。
悪い人ではないんですけどね~。
頭も良いのですが、無駄すぎる正義感とプライドと金髪が溢れています。




