15-3 虫階層と反省会
よろしくお願いします。
「すぅ~はぁ~」
私は気持ちを落ち着かせて、魔法を維持し続ける。
先日のゴブリン戦で同じ様な魔法を使ったけど、あの時とは違い、自分を中心としている分、制御は楽だ。
まずは半径5メートル。
これを無理なく維持し続けるようにしよう。
体外に放出する魔力と、体内に吸収する魔力を循環させて消費を最小限に抑える。
「すぅ~はぁ~。うん、いい感じね」
一方、そーくんはというと。
まるで散歩するように歩いたかと思うと、突然周囲の背の高い草に襲われて横に跳び退った。
植物系の魔物?
ううん、違う。あれは、蟷螂だわ。
草に擬態していた4本腕の蟷螂が近づいてきたそーくんを襲撃したんだ。
逃げたそーくんを追って蟷螂が鎌を振るう。
そーくんは1本の木剣で受け、払い、反らしていく。
一瞬たりとも止まることなく動き続けるそーくんを追う蟷螂。
遠目から見ると、同じところをグルグルと8の字を描きながら戦っているのが分かる。
それはつまり、あの蟷螂はそーくんの術中に嵌っていることを意味していた。
キンッ!
突然、逃げ続けていたそーくんの姿が消えると同時に、蟷螂の胴体が真っ二つに切られた。
あの瞬間、同じ様に退くと見せかけて踏み込み、交差する刹那に胴を切り裂いたのね。
同じ動きに慣れた挙動が、一瞬の変化に追いつけなかったんだ。
油断無く頭部に追加の一撃を加えたそーくんがこっちを見た。
「リーンさん、後ろ!」
「!!」
その声と同時に後ろに魔法の盾を生み出しながら振り返る。
ドガッ!!
「きゃっ」
盾に槍が突き刺さる。
そこには全長50センチを超える、新たな蜂が居た。
「なるほど、働き蜂の次は兵隊蜂って訳ね」
氷雪魔法に注力していたとはいえ、魔法壁を突き破ってくるなんてかなりの威力ね。
アイテム袋から剣を取り出してその1匹を倒し、改めて周囲を確認する。
私の展開した魔法の外側に、今までの10センチほどの個体に混じって50センチから80センチくらいの個体が見て取れる。
「ふぅ。流石にそこまで楽はさせてもらえないって事だね。
いいわ。魔法を維持しながら剣を扱う練習にはもってこいね」
そーくんの方をちらっと見れば、そーくんも新たな蟷螂+蜂の群れを相手していた。
こっちも負けてられないよね。
私は周囲に氷弾を生み出しながら蜂の群れへと攻撃を開始した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「うぅ~疲れたよ~」
「あはは、お疲れ様でした」
2時間ほどダンジョンで特訓をした後、私達はいつもの喫茶店で休憩しつつ反省会をしていた。
はぁ~、ミルクティーの甘みが全身に染み渡るわ~。
今日のオランジパイの酸味ともマッチしててとっても美味しい。
疲れた体にこの組み合わせは最高ね。
「今回、魔法壁と『氷雪大地』だけなら同じ空間系魔法で制御が似てるから何とかなったけど、そこに氷弾を追加するとなるときつかったわ」
「最後の方は魔力切れで逃げ回ってましたよね」
「あはは、あれはあれで走りながら氷弾を撃つ良い練習になったよ」
「なるほど。それもいいですね」
「そーくんの方はどう?」
「僕の方は通常サイズの蟷螂は問題なく捌けたんですけど、大型の個体になるとどうしても力負けしてしまいますね。
下手に受けると剣ごと切り裂かれてしまいそうですし」
「そっか。そーくんは魔力強化が使えないもんね」
ある程度魔力のある人なら、魔力で肉体や武器を強化させることが出来る。
木の棒で岩をバターのように切り裂いた、なんて事が出来るくらい魔力強化は強力なんだけど、魔力の足りないそーくんには無理なのよね。
あ、そうだ。
「ねえ、明日は図書館に行ってみない?」
「図書館、ですか」
「うん。もしかしたら魔力強化に代わる手段があるかもしれないし」
「なるほど、そうですね。あの秘密の書庫の本もまだ手付かずのものが多いですし、参考になるものが無いか探して見ましょうか」
うん、そうと決まれば今日はまず体力と糖分を回復しておかないとね。
「すみませ~ん。りんこパイも1枚お願いします♪」
部活の後に喫茶店に寄る感じですね。そう考えるとやっと学園ものっぽい?
そしてまた締めはご飯ネタという。
次回はサイドストーリーを入れようかとも思いましたが、そのまま図書館デートに行く予定です。




