14-B 救援要請
よろしくお願いします。
ソージュ達がゴブリン討伐に向った時のケイ達の話です。
……まさか1話で終わらないとは思いませんでしたが。
ジバンリン暦52年5月14日
Side ケイ
放課後。
ミラと共にギルドの討伐クエストをこなしていた。
「来るぞ、ミラ」
「はい、ケイ様。参ります!」
ミラが弾弓を構えるのを見送り、俺は盾を構えた。
視線の先にはオーガが3体。
あの事件の時、ダンジョン45階ボスをたった2人で倒してきたと聞いた。
多分これくらい余裕で捌けなくては、ソージュの隣には立てぬだろう。
先頭のオーガが腕を振りかぶり殴りかかろうとする。
その腕が降りる前に懐に飛び込みシールドで吹き飛ばす。
「オオォ!」
「ガァッ」
吹き飛ばした先は左後ろに居るオーガ。
「やっ!」
「ガフッ」
右に居たオーガのこめかみにミラの魔弾が突き刺さる。
だが、それだけではオーガは倒れない。
だから崩れたところにロングソードで首を切り飛ばす。
そうしている間に最初に吹き飛ばした2体に次々と魔弾が刺さっていく。
「ふぅ」
「撃退完了ですね」
「ああ。今回は見つけるのに時間が掛かってしまった。魔石を回収して帰ろう」
「はい」
そして街に戻る途中、共鳴石からソージュの声が届く。
『ケイ、夜遅く悪いんだけど助けて欲しいんだ』
その言葉が聞こえた瞬間、思わず口元に笑みが浮かんでしまった。
良かった。俺の事を頼ってくれるんだな。
『ああ。何をすればいい?』
だがソージュが話した内容は喜んでいる場合じゃないものだった。
ゴブリンキングによる襲撃だと!?
小さい町なら壊滅しかねないレベルの災害じゃないか。
「ミラ。走るぞ」
「はい!」
冒険者ギルドに駆け込み受付に事情を話す。
「ゴブリンキングですって!」
「はい。ソージュが言うには早ければ明日未明にも襲撃が始まるだろうと」
「そんなっ!? どんなに早馬で急いでも今からでは昼前になるわ。
今あの村にはソージュ様達の他に2チームの冒険者が居るだけ。
とても持ちこたえられないわ」
「あの、俺たちが先に行って村人の防衛をします。
俺たちなら明日の夜明け過ぎには着けますし、拠点防衛は得意です。
ソージュ達がゴブリンキングを抑えてくれるでしょう。
残りの雑魚ゴブリンなら十分に対応可能です」
「……死んではだめよ」
「もちろんです」
俺と受付のミューさんの視線がぶつかる。
ただ、それはほんの一瞬。
「分かりました。こちらも急ぎ部隊を送ります。
何とかそれまで持ちこたえてください!」
「はい! 行くぞミラ」
「はい!」
そこから俺たちは普段付けっぱなしの負荷魔道具を停止させて全力で村に向けて走る。
昔の俺たちなら、村に着く前にばてて早馬に追い越されていただろう。
これもソージュと会って研鑽を積んできた成果だな。
そうして俺たちは夜通し走り続ける。
途中、ゴブリンが多数見えたが、無視して脇を通り過ぎていく。
そして夜明けから半刻ほどが過ぎた頃。
俺たちは村に辿り着いた。
良かった。まだ村は大丈夫なようだ。
ソージュの話では、襲撃があるとしたら南側。つまり村の反対側だ。
走る勢いを止めることなく村の中を突っ切る。
途中、村の青年が守っている建物が見えた。
多分、あそこに村人たちが避難しているのだろう。
村の南側に出れば、そこにはゴブリンの壁が出来ていた。
いや、その手前に居る冒険者たちが魔法の壁を張ってゴブリンを押し留めているのか。
凄いな。数百、いや、数千匹いるゴブリンをたった数人で防いでいるのか。
「無事ですか!!救援に来ました!」
「おぉありがてえ。ってお前たち2人だけか」
「はい、後からもっと来ます。それまでこの魔法壁は持ちますか?」
「ゴブリンだけなら何とかなるがな。
見ろ。所々にファイターやコマンダーが居やがる。
あいつ等が来られるとそんなに長くは持たねえ」
確かにゴブリンの群れの中に頭が飛び出してる個体が所々に見える。
振り返り、ミラと顔を合わせる。
ああ、そうだな。
「俺たちで遊撃と攪乱を行います。
皆さんはこのまま魔法壁の維持をお願いします」
「……はぁ。分かったよ。
お前たちもあいつらのお仲間ってことなんだろう。
ならとやかく言わねえ。死ぬんじゃねえぞ」
「はい!」
『あいつら』っていうのは、恐らくソージュとリーンさんの事だろう。
ここには居ないっていう事は、俺たちがここを守ってくれると信じてゴブリンキングを討ちに行ったんだろう。
その期待、見事応えてみせようじゃないか!
ケイとミラさんもメインでは出てこないけれど、色々頑張ってるんです。
次回は続きをミラさん視点で引き継ぎます。




