3-1 入学試験が始まります
よろしくお願いします。
本当は試験当日までも色々問題が起きているのですが、話が進まないのでそちらはまた後ほど。
ジバンリン暦52年3月10日 朝
冒険者ギルドで10万ジンの資金を作った後、無事に願書の申請を提出することが出来た。
そして今日から3日間が試験期間だ。
1日目の今日は午前中、受験者全員が一斉に筆記試験を受けるので、学園の敷地内は受験を受ける子供達でいっぱいだ。
「うわぁ」
僕と同い年くらいの子から少し年上と思われる人まで居て、種族も大地人が大半を占めるけど、エルフ、獣人、蜥蜴人、巨人と多種多様だ。
ん?前のほうで人だかりが出来ているな。
なんだろう、大地人の子供が5人と獣人の子供2人が向かい合ってる。
「おいお前。
神聖なるマリアッジ学園はお前達みたいな獣風情が来るところではない!
人の言葉を理解する頭があるなら、早々に尻尾を巻いてねぐらに帰れ」
「そうだそうだ。とっとと消えろ」
あ、どうやら大地人の子が難癖を付けてるんだな。
人間至上主義の国の子供なのかな。
「そうだそうだ。目障りなんだよ」
「まったく常識ってもんが無いのか」
口々に囃し立てる取り巻きの子供達。
うーむ、常識が無いのはどっちなんだろうな。
対して獣人の子供達は特に臆することも無く泰然としている。
「ふむ。この学園は種族の分け隔てなく学べる場だったと認識しているが」
「そうでございますね。むしろ差別を無くす事こそが学園の理念であったかと存じます」
口答えされるとは思って居なかったのか、取り巻き達が顔を真っ赤にして怒り出した。
「なんだと貴様」
「この方を誰と心得る。バカバカン公爵家のバカメ様だぞ」
「その薄汚い毛皮を剥がされたく無かったら、今すぐ土下座して謝罪しろ!!」
「そうすればペットとして可愛がってやるよ」
あっ、それは駄目だ。いくら子供の喧嘩でも言ってはいけない言葉だ。
周りを見ても、見てるだけで誰も止めようとはしない。
なら僕が行くしかないね。
「ちょっとま「お待ちなさい!!」……え?」
僕が一歩前に出たのと、ほぼ同じタイミングで別方向から声が掛かる。
見ると銀髪の女性が周囲の輪から一歩出て貴族の子供達を睨み付けている。
腕に腕章が付いているから、先輩か学園関係者だろう。
「先程の発言は国際法に抵触するものよ。
今ならまだ聞かなかったことにしてあげるから、謝罪して早々に立ち去りなさい」
「何だと、女。俺を……」
「何か?」
「ひぃっ、くそっ。行くぞ」
「「は、はい」」
女性のプレッシャーに一瞬で耐え切れなくなって、貴族の子供達はすぐさま逃げるように去っていった。
それをため息と共に見送って獣人の子供達に向き直る。
「ごめんなさいね。毎年ああいう差別意識を持った子供は何人か受験に来るの。気を悪くしないでね」
「いえ、大丈夫です。気にしていませんので」
「助けて頂き、ありがとうございます」
「そっちの君も、よくあの場で前に出たわ。あなた達みたいな人が居るなら、今年の新入生は期待できそうね」
そう言って、その女性は次の騒動が起きている場所へと向かっていった。
「おい、あれリーン様じゃないか?」
「そうだわ。氷結の聖女リーン様だわ」
「かっこいい~」
そんな声が周囲から聞こえてきた。
氷結の聖女か。あれ?どこかで見た気もするけど、気のせいかな。
試験開始まで行けなかったorz
「毛皮を剥ぐ」=「殺す」なので、この場合、言った側は殺されていても誰も擁護してくれません。
そして問題発言は逐一チェックされているので、成績関係なく彼らは受験に落ちます。
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ちょっとした騒動に巻き込まれつつも、無事試験は始まります。
次回:入学試験1日目 基礎能力テスト