14-2 ソージュ強襲
よろしくお願いします。
おかしい。第2章はイチャラブメインで行くはずだったのに。
2時間後。
僕は南に向けて走っていた。
走りながら、リーンさんに連絡を送る。
『リーンさん。そちらの状況は?』
『あ、そーくん。
私の方は東に居たゴブリンを纏めてやっつけて、南に向かっている所よ。
あと1時間くらいで山間部に差し掛かるわ。
そーくんの方は?』
『僕の方も西のゴブリンは掃討しました。
こちらももう少しで山間部に着きます。
倒したゴブリンの規模から考えて、やはりキングが居る可能性が高いです。
奴らのコロニーを見つけたら、攻撃する前に合流しましょう』
それだけ伝えて一旦通信を終える。
「っ、いつつ」
流石にコマンダー80匹相手の大立ち回りは少し無理しすぎたかな。
クリーンヒットは無いまでも、何発か攻撃を受けてしまった。
骨は折れていないから回復ポーションを飲んでおけば、すぐに痛みも引くだろう。
それにしても、さっきから全然ゴブリン以外の魔物を見ない。
これだけ人里を離れていれば、魔物の10や20は遭遇してもいいはずなのに。
それだけゴブリンの繁殖量が異常ってことなのか。
そして更に1時間後。
そろそろゴブリンのコロニーが近くにある筈なんだけど。
あれだけ大量のゴブリンが居たんだ。
相応に大きな洞窟なり広場なりがあると踏んでたんだけど。
……見当たらないな。
リン♪
「!?」
警鐘と同時に真横に転げ飛ぶ。
ザンッ!!
ほぼ同時に剣が地面に突き立てられる。
あのまま走っていたら真っ二つだった。
「ほぉ。今のに気付いて避けやがるか」
そう言いながら草むらから出てくる男。
身長180センチ。細身だけど引き締まった体付き。
先程の一撃と、この至近距離まで気付けなかった事から、かなりの実力者だ。
「誰?」
「あほか。言うと思ったか?」
そう言ってニヤニヤこちらを見下してくる。
少なくとも会ったことは無いはずだ。何者だろう。
「今回のゴブリン騒動はあなたが引き起こしたの?」
「あほか。言うと思ったか?」
「実は人の姿をしたオウムの化け物?」
「あほか。言うと思ったかって、んな訳あるか!!」
うん、意外にノリが良いのかも知れない。
これで口が軽ければ良かったのに。
「でも、山賊って雰囲気でもないし、ゴブリン騒動と関係があるのは当たりでしょ?
そうじゃなかったら、突然襲ってくる理由がないもの」
「へっ。まあそうだわな。
じゃあ正解したご褒美をあげないとな、ソージュ・ライオネル!!」
「え?」
僕が驚いた隙を突くように、名前を呼ぶと同時に一気に踏み込んできて、袈裟切りに切り掛かってきた。
くっ、早い!でも。
僕は再び男の利き手の方に潜り込む様にして一撃を避ける。
森の中でそんな大振りをすれば後ろの木にぶつかるはず。
その隙に反撃出来れば……
ザンッ!!
「なっ!」
男の一撃は確かに僕の後ろの木に当たっていたにも関わらず、振り抜かれていた。
1拍置いて切られた木が倒れる。
「全く、避けるのはSランク級なんじゃないのか?
ええ?Eランクのソージュ・ライオネル君よ」
Eランク?ということは、学園の関係者なのか。
少なくとも学園での僕を知っているということか。
「あなたも今の一撃は、冒険者Aランクか将軍だって言われても驚きませんよ。
でも魔道士って感じじゃないですよね。
どうやってゴブリンを増殖させたり進化させたり操ったりしたんですか?
考えられるのは仲間が居るか、何かしら魔道具を使ったか、でしょうか」
そう聞く間も相手の隙を探すけど、ダメだな。
自然体でただ立っているだけに見えるのに攻めれば切られるイメージしか沸かない。
幸い男がこちらを格下だと思ってくれていることが救いか。
僕の質問に口の端を持ち上げる男。
「ほぉ。頭も回るか。まったく、これで魔法が使えりゃもっと楽しめただろうにな。
まあ、いい線行ってるから良い事を教えてやろう。
既に分かっていると思うが、今回ゴブリンキングも生み出してる。
そして、ここにはゴブリンキングは居ない。
ついでに村の方にも向かわせては居ない。
じゃあ、そいつは何処に行ったんだろうな」
まさかリーンさんの方に?
ジリッと半歩下がると男も半歩前に出てくる。
「残念だが逃がしはしねえよ。
彼女の泣き叫ぶ姿を思い浮かべながら死にな!!」
そう言って男は三度切り掛かってくるのだった。
ソージュTUEEEっぽいですが、普通に上には上が居ます。
勿論リーンさんにも上は居ます。
それにしても2章冒頭で何ゆえこんなにピンチ回が来てるんだろうか。
私が一番驚いてます。




