13-4 村の防衛
よろしくお願いします。
相変わらず戦闘はあっさり終わる。
「ゴブリンが来ますよ」
そーくんの告げた一言を聞いて、私は椅子から立ち上がった。
周りの冒険者たちはまだ状況を把握できていないみたい。
「おじさん。ごめんなさい、ちょっと出てきます。
料理冷めても良いので残しておいてくれると嬉しいです」
厨房に声を掛けてから、冒険者の輪を抜けてそーくんの隣に立つ。
同時に広域探知魔法を発動する。
……やっぱり、そーくんはすごい。
まだ大分遠く、森の中をこちらに向かってきているゴブリンの一団の気配をこんなに早く察知できるんだ。
「お、おい。冗談はよせよ。ゴブリンが来る?
んなの分かる訳ねえだろ」
「そうだよ、まったく。寝言は寝てから言えよな」
「……」
この人たちは何も分かってないみたい。
まあ、突然年下の私達の言うことを信じろって言う方が無理なのかもしれないけど。
ただ、もう一組居た冒険者チームの方は、早々に食事を切り上げて装備の確認をしている。
30過ぎのベテランの職人っていう雰囲気だ。
「出るのか?」
「はい。村をお願いしても大丈夫ですか?」
「ああ、任せろ」
ほんの短いやりとりで終わる。
うん、この人たちなら村を任せても大丈夫だ。
私はそーくんと一緒に酒場を後にする。
「おいおい、なんだよ。
そっちのオッサン達まで。
マジで来るって言うのか?」
「ふんっ、大地のざわめきを聞けば分かるわい。
お前達も自分のケツくらいは自分で守れよ」
後ろからそんなやり取りが聞こえてくる。
きっとあの男性グループはほとんど役に立たないだろうな。
そうして私達は村の南側に来ていた。
村の出口にやぐらが立っていて、夜警をしていた村人が居たので、ゴブリンの大群が来る旨を伝えておいた。
「そーくん、どれくらい来るかな?」
「ざっと200くらいですね。間に合って良かったです」
「うん。あのおじさん達だけだと村まで守りきれなかったかもしれないね」
そうこう言っている間に、森の木々の隙間からゴブリンの姿がちらほら見えてきた。
「最初は纏まって出てきたところを私の魔法で一網打尽にするね」
「はい、お願いします。僕はその後で前に出て敵を引き付けながら戦います。
あと、これだけの数が一斉に来たって事はリーダー的な奴が居ると思います」
「うん、逃がさないようにしないとね」
ゴブリンの方も私達の姿を見つけたみたい。
ギャアギャア騒ぎながら一塊になってこっちにやってくる。
その騒ぎを聞いて後ろの村の方も、ゴブリンが来たのを確認出来たみたいね。
さて、じゃあやりますか。
両手を前に突き出して前方に魔法陣を展開する。
魔法陣は簡単な魔法なら必要ないんだけど、大掛かりな魔法を使う際には、こうして魔力を貯めると安定して発動させられる。
すぅーはぁ~。
よし、前とは比べ物にならないくらい魔力が安定してる。
これもそーくんのお陰ね。
「いくよ『アイスフラッグ』!!」
魔力が冷気となってゴブリンたちの足元に送られ、一気に剣山となってゴブリンたちを串刺しにしていく。
これで100匹くらいは倒せたかな。
氷の剣山は魔力を切ることですぐに溶けるように消えた。
それを見てすぐにそーくんが前に出て行く。
右手に棍棒を持っただけの、ぱっと見無防備にも見えるその姿に後から出てきたゴブリンたちが群がっていく。
そーくんの戦い方は、すごくシンプルだ。
袈裟切りに頭を殴る。倒れる反対側に一歩踏み出して、逆袈裟に顎を打ち抜く。
飛び出してきた相手には一歩引きつつ首を突いて引き倒す。
振り向きざまに後ろの1匹を横殴りにして、その腕を引いて壁代わりに使う。
まるでワルツのようなその動きに気が付けば死体の山が築き上げられていく。
ゴブリンとしても、相手が強く見えないから引き際を見失っているように、ただただ延々と攻撃しに行ってやられていく。
っと、そーくんの戦いに目を奪われている場合じゃないよね。
私も魔法を撃ちながらゴブリンの指揮官を探す。
あ、この状態で森に隠れて出てこない一回り大きいあいつが怪しいわね。
「『フリーズアロー』」
「ギャッ!」
よし。
見事頭を貫いて倒せた。
残っているゴブリンも、もう20匹も居ないわね。
早く終わらせてご飯を食べに行きましょう。
人海戦術をするならもう1つ2つ桁が増えないとだめですね。
リーンさんはいつの間にか人間兵器となりつつありますし。




