13-1 変わる日常
よろしくお願いします。
第2章リーン編スタートです。
今まで出し控えていたリーンさん視点の話が多くなります。
ちょこちょこ過去の話も出来れば良いな。
ジバンリン暦52年5月14日
Side リーン
先日の事件から1週間が過ぎた。
あの事件で主犯格とされる生徒数人は退学処分となった。
それ以外の生徒と部外者については、どうも洗脳魔法の一種を掛けられていた可能性が高いということで、厳しい処分は免れたみたい。
その人達には個人的にオハナシしておいたから、もう二度とそーくんに悪さはしないと思う。
あと、私のほうに仕掛けられたトラップ。
後日改めて、探しに行ったけど何も痕跡は見つけられなかった。
まあ、ダンジョンの中だから期待はしてなかったんだけど。
さて。
この1週間で一番変わったのは私とそーくんの関係だよね。
あのことをきっかけに、私とそーくんはパートナーになった。
そーくんは学園内の制度って勘違いしたみたいだけど、
吸血族でいうパートナーって、生涯血を分け合う伴侶っていう意味。
今のところ私からしか血を吸ってないから意味合い的にはプロポーズしただけ、みたいになってる。
いつかはそーくんにも私の血を飲んで欲しいな。
ただ、1つ分からないのはそーくんの年齢。
昔私を助けてくれた冒険者は間違いなく、そーくんだと思うの。
だって、私が血の味を間違えるなんてありえないもの。
でもその冒険者さん、当時で既にそーくんと同じか、それ以上の年齢だったから、もしそーくんだとしたら、あれ以来年を取っていないことになる。
長命種の種族なら10年くらい見た目が変わらないこともあるけど、そーくんはそうでもないみたいだし。
「……んさん」
そーくん自身が嘘を付いているとも思えないんだよね。
「……ん、リーンさん」
「ん? なあに、そーくん」
「いえ、お弁当食べながら考え込んでしまったので、どうしたのかなと。
もしかしてお弁当美味しくなかったですか?」
っと、いけないいけない。
折角のそーくんとのお弁当タイムなのに考え事してたら勿体無いよね。
「ううん。いつも通りとっても美味しいよ」
「なら良いですけど、何か悩み事ですか?」
ふふっ、心配してくれるんだ。うれしいな。
「んー、悩みといえば、お弁当が美味しすぎて、これ無しでは生きていけなくなっちゃったことかな。
ふふっ、まぁそれは冗談だけど。
あ、そうだ。そーくんって、今まで遠くの相手への対処ってどうしてたの?
ほら。この前助けに来てくれたとき、鳥の魔物に防戦一方だったでしょ」
空を飛ぶ魔物って対処が難しいんだよね。
そーくんって魔法が使えないから、どうするんだろう。
「あぁ。あの時は魔物が物理障壁魔法を展開していましたからね。
無理して突撃すれば突破も出来たかもしれないんですけど、普段使ってる投石じゃ厳しかったんですよね。でも……」
「でも?」
そこで言葉を切ったかと思ったらいたずらっぽく私のほうを覗き込んできた。
「これからはリーンさんと一緒に戦えば良いんですよね」
「っ!!そ、そうね。うん。任せて!」
う~そこで急に私に振らないでよ。
確かにそーくんのピンチの時には絶対に駆けつけるけどね!
「僕からも質問しても良いですか?」
「うん、もちろん。何でも聞いていいよ」
「リーンさんはこれまではご飯とかどうされていたんですか?」
「ご飯?」
これはあれよね。
普通の食事じゃなくて血液の方よね。
「一応私達吸血族って、普通のご飯だけでも生きてはいけるの。
常時栄養失調気味でふらふらするんだけどね」
「あ、それで最初会ったときから顔色が悪かったりしてたんですね」
「そうそう。後は狩った動物や魔物の血を精製して無毒化して飲むの。
……不味いんだけどね。
後はほら。前にそーくんがくれたブラッドベリー。
あれもなぜか血を吸うのと同じくらい活力になるのよ」
「あ、それでブラッドベリーが大好きなんですね」
「それもあるし、子供のころの思い出の味ってことでもあるのよ」
昔あの人が良く食べさせてくれたわ。
あれ以来、そーくんに会うまで、同じ味のブラッドベリーに巡り合う機会はなかったのよね。
そんな懐かしんだ私の顔を見たのか、そーくんが提案してくれた。
「それなら、今度一緒にブラッドベリー狩りに行きますか?」
「いいわね、それ。すぐでも良ければ今日でも大丈夫よ」
「分かりました。と言ってもブラッドベリーを採るなら明け方がお勧めなので、
適当に冒険者ギルドの依頼をこなしながら行きましょうか」
「ええ」
そうして私達は放課後の待ち合わせの約束をして、それぞれの講義へと向かった。
ブラッドベリー狩りは初めてなのよね。楽しみだわ。
ちょっとした後日談とソージュとの時間が増えていくお話。
まだお互いのことを知らないままですからね。




