12-1 夢に見た味
よろしくお願いします
今回はリーンさん視点です。
Side リーン
暗い闇の中。
ゆっくりと水に沈んでいくような感じ。
……あ。そうだ。前にも一度あったわ。
そっかぁ。あの時と同じで私、死んじゃうのね。
あの時は確か、もう無理だなって諦めた時に、突然何かが口から体の中に入って来たんだわ。
そうそう。こんな感じ。もうダメだって思ってた身体に力が湧いてくるの。
やっぱりすごく美味しい。あぁ、もっと欲しいな。
どこから流れてくるんだろう。
少し上?浮き上がればいいのかな。
えっと、手はまだ満足に動かないけど、口だけなら何とかなるかな。
やった、届いた!
あぁ~素敵。もっと頂戴、もっと。もっともっと!!
えっ、今はここまで?
うぅ~、分かった我慢するわ。
でもまた飲ませてね!
え?目を覚ましてって、起きたら飲ませてくれるの?
分かった、すぐ起きるわ!!
……
…………
………………
「あ!」
暑い。それに眩しい!
え、どこここ。砂漠?
あ!そうだ。
ダンジョンのトラップに引っかかって、別の階層に飛ばされたんだっけ。
それで照り付ける太陽と、この暑さにやられて力尽きてたんだわ。
私は種族的に日差しが苦手だから、この強力な太陽の所為で倒れてたんだ。
……でも不思議ね。なぜか今は眩しいとは思っても全然辛くはないわ。
それに全身から力が漲ってくる感じがする。
これは、そう。ソージュ君のお弁当を食べた時に似ているけど、あの時の何十倍も元気だわ。
今なら何でも出来そう!!
ズドドドドッ!!
少し離れたところから激しい爆発音が聞こえる。
これは魔物?と、誰かが戦ってるのかしら。
そうだわ。きっと私を救ってくれた誰かが居るはずだもの。
その人がきっと魔物と戦ってるんだわ。
「あれは……ソージュ君!!」
爆発音の方を見れば、光る鳥の魔物と、ボロボロになりながら必死に攻撃を避けているソージュ君が居た。
なんでソージュ君が?とか、どうして逃げないの?とか色々思う所はあるけど、まずは助けないと!
「すぅぅはぁぁ、……うん。行ける!
アイスエッジ最大出力!!吹き飛びなさい!!」
私の一番得意な氷の魔法。
本来ナイフくらいの氷を打ち出すそれは、今はバリスタのような巨大な槍の雨となって魔物へと降り注ぐ。
「キェェェ」
氷の槍は最初の数発は魔物の纏う熱で溶かされるも、それ以上の速度で打ち込まれた。
それでも流石階層ボス。
翼に何発か受けつつも、まだまだ動けるようだ。なら。
「ダウンバースト!!」
風と氷の複合魔法。
魔物の上空から‐50度の冷気を叩きつける。
ダンジョン全体が涼しくなったけど、まぁちょうどいいわね。
「とどめよ。
アブソリュート・ゼロ!!」
魔物の周囲だけ一気に‐200度の冷気に包まれる。
普段はこんな上級特急の魔法を連発すれば魔力切れになるんだけど、全然大丈夫ね。
そして魔物はあっという間に氷漬けになって粉々に砕け散った。
「よし。あっ、ソージュ君!」
魔物を倒したのも束の間。
それを見て、私の姿を確認した所でソージュ君はその場に倒れてしまった。
私は急ぎソージュ君の元に駆け寄る。
「ソージュ君!」
「あ、おはようリーンさん。もう体は大丈夫みたいですね」
「私は何ともないわ。それより、ソージュ君の方がボロボロじゃない」
「僕の方はまあほら。1晩寝れば大丈夫ですよ。
それより、リーンさん。ここがどこか分かりますか?あと学園への戻り方」
「全然大丈夫じゃなさそうだけど。
ちょっと待ってね」
前に読んだ資料が正しければ、ここは学園ダンジョンの41~45階層の砂漠階ね。
そしてさっきの魔物、あれは恐らく45階層ボスのホルスよね。
ボスを倒した今なら次の階層に向かう途中に帰還用ゲートがあるはず。
「うん。大丈夫だと思うわ。少し進んだところに地上に戻るゲートがあるはずよ」
「それは良かった。なら帰りましょう。ここはなんか寒すぎます」
そう言ってふら付きながら立ち上がろうとするソージュ君。
「無理しないで。ソージュ君のお陰で私は元気いっぱいだから、後は私がソージュ君をおぶっていくわ」
「あはは、男としては情けない気もするけど、お言葉に甘えますね」
その言葉を最後に、私にもたれ掛かって来た彼を背負って、私は帰還用ゲートへと急いだ。
フルパワーモードのリーンさんによる蹂躙。
ソージュ君は血液不足でフラフラです。ダメージはそんなんでも無いのですが。
ダンジョンは特定のボス階層ごとに帰還用のゲートが用意されている仕様です。
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無事にダンジョンから帰還したソージュとリーン。
ソージュの寝ている間に事件は終息していく。
次回:家に帰るまでが事件です




