9-3 これは決闘ですか?
よろしくお願いします。
いつも通り、まともな戦闘シーンはありません(あれ?)
ジバンリン暦52年4月24日
決闘が決まってからあっという間に1週間が過ぎ。
とうとう決闘当日を迎えた。
僕とリーンさん、ケイとミラさんは東側選手控え室に集まっていた。
「あの、リーンさん。
結局この1週間、リーンさんに言われたとおり、いつも通り過ごしてましたけど、何か練習とかしなくて良かったんですか?」
「大丈夫よ。
ソージュ君は試合が始まったら、適当に近づいて殴り飛ばせば良いわ。
この試合は剣や魔術で戦わないといけない、なんてルールは無いから」
「はぁ。分かりました」
そんなんで良いんだろうか。
でもリーンさんが言うんだから間違いないだろう。
っと、そろそろ時間か。
「それじゃあ行きましょうか。
あ、その前に、今ソージュ君が付けている負荷魔道具は外して行ってね」
「はい、分かりました。
ケイ、悪いけど預かってて」
「うむ。任せろ」
この1ヶ月近く、お風呂の時間以外は常時付けていた負荷魔道具をケイに預けて、僕はリーンさんに付いて闘技場のリングに上がった。
リングの上には、ニックキン先輩とあの時のムキ男(仮)と体術の先生が居た。
他に観客席にはかなりの人が見物に来ていた。
先生の前には、見慣れた負荷魔道具が4つと、腕輪型の魔道具が4つ入った籠が置いてある。
そして、僕らがリングに上がったのを見て、先生が話し始める。
「それではこれから、リーン、ソージュペアとニックキン、ノーキンペアによる2対2のフォースバウトを開始する。
まず4人ともフォースバリアの魔道具を右手に装着して起動するように」
腕輪型の魔道具が配られ、起動すると、全身がうっすらと緑色に光る。
「フォースバウトは何らかの攻撃を受け、このバリアが破壊されるか、競技者が降参、もしくは審判である私が戦闘続行不能と判断した場合、敗北となる。
続いて、今回の試合の特別ルールとして、私がリーン君にモニターを依頼していた『負荷魔道具』を装着し起動した状態で試合を行う。
それでは、ニックキン、ノーキンペア。どれも同じだが、4つの内好きなものを2つ取ってくれ」
教師の指示を受けて4つの魔道具を見比べた後、2つずつを取る。
って、2つ?
「よろしい、では続いてその2つの内、好きな方をリーン、ソージュペアに渡すように」
あ、なるほど。
用意された魔道具に不正が疑われないようにする措置なんだろう、きっと。
2人から魔道具を渡されて左腕に装着して起動する。
ふぅ。この半月ずっと付けてたから、今ではこれがある状態が普通になってきたな。
「それでは合図と共に負荷魔道具を起動し、ってソージュ君は既に起動してしまっているのか。
……まあいいか。ただそれだけハンデが付くだけだからな。
では気を取り直して。全員の魔道具の起動が確認できたところで試合開始とする。
また、先に伝えて置くが、この負荷魔道具は従来の数十倍の負荷が掛かる。
なので、身体強化魔法を自身に掛けておくことをお勧めする。
それでは、全員魔道具を起動しなさい」
その合図を受けて全員が魔道具を起動する。
ズズ……ン
「う……くっ!」
リーンさんは小さくうめき声を上げたけれど、何とかその場に立ち続けていた。
それに比べて向こうの2人は……
「……!?……!?」
「……ッ……ッ」
うめき声1つ上げられずに四つん這いになって負荷に耐えていた。
それを見かねたリーンさんが先生に声を掛けた。
「先生。やはりこの魔道具は危険ではないでしょうか」
「うーむ、やはりそうか。
ちなみに今、私自身も身に付けているのだが、身体強化魔法を全力で掛け続けないと立っているのも厳しいな。
これはこれで身体強化魔法の持続力の良い鍛錬になりそうなのだが、だめか」
「少なくとも段階を踏んで負荷を上げていくべきですね。
最初はこれの1/100から始めても良いと思いますよ」
「なるほど。Sランク生徒の貴重な意見として挙げておこう」
そんな感じにリーンさんと先生は和やかに話をしている。
って、今って決闘の最中ですよね。
「あの、リーンさん。
これって後はどうすればよいのでしょう。
さっき行ってた通り、殴っちゃって良いんですか?」
そう言いながらニックキン先輩の目の前にすたすたと歩いていく。
ただそれはリーンさんではなく先生に止められた。
「いや、その必要はない。
ニックキン、ノーキン両選手。戦闘続行不能と見なして良いか。
ダメであれば首を横に振るか言葉で否定するように。
…………良いようだな。では、ニックキン、ノーキン両選手の戦闘続行不能により、リーンソージュペアの勝利とする」
そう宣言したところで観客席からブーイングがあがる。
まあ、まともに戦ってないし、その気持ちは分かる。
「あーなお、観客の中でこの結果に文句のある人は、今すぐこちらまで降りてきなさい。
今なら、彼らの代わりにこの負荷魔道具を着けて戦うことを認める」
その言葉を聞いて何人かの生徒が名乗りをあげたが、ニックキン先輩より酷く1瞬で意識を失っていった。
それを見て文句の声はなくなったので、そこでお開きになった。
えっと、結局戦ってないけど、決闘ってこんなんで良いの?
八百長にしか見えないけど、八百長じゃないんですよ。
ちなみに、リーンさんは先に何度かこの魔道具を起動させてます。
なので、どれくらいきついかは理解していたりします。
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イベントが終わった後って言えば、街に繰り出して打ち上げだ。
実際には何かをする前に終わったんだけどね。
次回:打ち上げに行こう




