1-2 森を抜けて近道しよう
よろしくお願いします。
学園に辿り着けませんでした。
当分の間は不定期更新になります。
ジバンリン暦52年2月29日
僕は森の中を走り抜けていた。
「ここを抜ければ半日は短縮できる、はず!!」
突き出した根に飛び越え、クモの巣を避けて、枝を払いながら駆け抜ける。
時々、薬草やキノコを採取して、木の実を取って、角ウサギを追ってって、ちがうちがう。
先を急がないと。
商業都市を出て4日が経過した。
前の町の冒険者ギルドで確認したところ、マリアッジ学園まで、この森を抜ければもうちょっとのはずだ。
と、その時。耳元で鈴の音が聞こえた。
リリン♪リリン♪
これは森の精霊からのメッセージで、この先に魔物が多数いるらしい。
すぐに僕の気配探知にも魔物の気配が引っかかった。
これは……きっとゴブリンだな。かなりの数だ。
リン♪リン♪
迂回する手もあるけれど、続いて届いたメッセージを聞いて、このまま進む事を選択する。
どうやら誰かが襲われているらしい。
それなら助けてあげないと!
僕は気配を消して走りながら手頃な石を拾っていく。
そしてアイテム袋から投石用の手拭いを取り出す。
この手拭いは両端に紐を取り付けてあるんだ。
その片側に付いている紐の輪に親指を通しつつ、反対側に付いている紐を掴む。
そして拾った石をセットして布を回転させる。
後は狙いを付けて紐を離せば、普通に石を投げるより数倍の威力で石を飛ばせる。
魔法の使えない僕でも出来る、即席遠距離武器だ。
さて、ゴブリン達は……居た!
僕に気付かず、獲物を追いかけているようだ。
追いかけられている人の気配も確認出来たけど、まだ余裕はありそうだ。
それなら、僕は最後尾のゴブリン目掛けて石を投げた。
ヒュッ!ゴンッ!!
よし、見事頭にヒット。
当たったゴブリンは声を出す余裕もなく、その場に崩れ落ちた。
前を走っているゴブリンは、それに気付いていない。
ヒュッヒュッヒュッ!
ゴンッゴンッゴンッ!!
「ギャギャッ!」
さらに3匹倒したところで、ようやく異変に気が付いたようだ。
僕は見つからないように隠れて様子を伺う。
この時点で、残り20匹ほど。
まだ少し多いけど、何とかなる。
それに、これで狙われていた人が逃げ切れれば目的は達成だ。
と、思ったのに、逃げていた人の気配が止まった。
いや、むしろ近づいてくる?
そう思ったところで、魔力の波動を感じて咄嗟に伏せた。
「アイスエッジ!!」
その声が響くと共に、氷の矢がゴブリン達に降り注ぎ一網打尽にしていく。
一瞬にして、20匹いたゴブリンは壊滅していた。
「すごい」
倒れたゴブリンの元に、先ほど追われていた、そして魔法を放った人が現れた。
……女の子だ。
目深に帽子をかぶっているので、顔は分からないが、しきりに周囲を警戒しつつ、ゴブリンから魔石を回収している。
多分冒険者なのだろう。
魔物の討伐依頼で来ていたのかもしれない。
そう考えるとさっきまでの逃走も、魔物をおびき寄せるためだったのかもしれないな。
あれ?そう考えると僕は獲物を横取りしたことになるのか。
謝りに出た方が良いだろうか。
と、そんなことを考えている内に、魔石の回収が終わったのか、女の子は周囲を警戒しつつ、移動していった。
あの様子なら怒ってはいなさそうだ。むしろ突然出て行って驚かせる方が良くないかもしれない。
もし町で会う機会があればその時に謝ることにしよう。
僕は女の子にも気配が分かるようにわざと音を立てつつ、女の子が去っていった方向とは別の方に走り去った。
ある~日♪、森の中~♪、知らない人にあったら、悪い人かもしれない。
なので不用意な接触は避けた方が無難です。
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無事に学園都市に辿り着いたソージュ。
だが、入試を受けるには多額の費用が必要だった。
次回:試験を受ける為にはお金が必要です
話の進行具合によって、後ほどタイトルが変わるかも。