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Eランクの僕とSランクの彼女  作者: たてみん
最終章:Eランクより
248/270

45-2 国境を越えて

いつもありがとうございます。

南へ向かった僕達を待っていたのは、国境線と難民キャンプだった。

街道脇にはいつの間にか作ったのか、石の砦まで出来ている。

ただ、検問をしている訳ではなく、商人の馬車とかはほとんど素通りだった。


「こんにちは」

「ん?君達は?」

「冒険者のソージュとリーンです」

「おお!君達が噂の2人組みだね。

ここに来たって事は、もしかして人族の国に向かうつもりかい?」

「はい、ちょっと依頼で」

「そうか。

依頼の内容を聞く訳にもいかないな。

だが気をつけてくれ。人族達は日に日に軍備を増強しているらしい。

治安も最悪だと聞く。

幸い君達は見た目は人族とほぼ変わらないようだから、すぐ絡まれることは無いかもしれないがね」

「それじゃあ人族と違う外見の場合……」

「酷いものだそうだ。

不当に商品が値上げされることは当たり前。

宿や店に入ろうとしたら門前払いをくらい、道を歩いているだけで石を投げられることもあるらしい。

酷い所だと他種族の血を引いているというだけで奴隷にされた人たちもいるそうだ」

「そんなに酷いんですね」

「ああ。だから毎日のようにこちら側に避難してくる人が後を絶たないよ」


見張りのおじさんと話している間にも家族連れの獣人族一家が通り過ぎていった。

その後ろにもボロボロの姿の人たちが続く。

その人たちは受付が終わると難民キャンプへと移動した。

そこで一度身体を休めてから別の地へと移り住む事になるらしい。

っと、対応を行っていた警備のおじさんが、一段落してこちらへとやってきた。


「また集落が1つ襲われたってよ」

「くそっ。ふざけやがって。元は自分達の国の民だろうに。

人族がどんだけ俺達と違うって言うんだ」

「あの、良かったらこの薬草、使ってあげてください」

「ああ、助かる。みんなキズだらけでここに辿り着くからな」


これまでの道中で採取してきた薬草をアイテム袋から取り出した。

避難してきた人の中には薬師の人も居るだろうから回復薬に加工するのはお任せしよう。

感謝を述べるおじさん達を横目に、僕達は先を急ぐことにした。

多分これ以外に今の僕達に出来るのは、一刻も早く人族の国に向かって彼らの軍事力を叩くことだけだろう。


そうして走ること半日。

人族のものと思われる街と砦が見えてきた。

恐らくここが最前線基地の1つになるんだろう。

それなら既に魔法の杖も配備されてきているかもしれない。


「リーンさん。様子を見て行けそうだったら武器庫に潜入してみましょう」

「オッケー。お爺さんの言ってたあれをやるのね」

「はい。ただし、今の段階で騒動は起こしたくないので慎重に」

「分かってるわ」


真夜中になるのを待って、僕達は砦の上空へと飛んだ。

武器庫は……あれかな。

兵舎から少し離れているのに警備が他より厳重な平屋の建物がある。

ただ、まだ戦争が始まっていないこともあって、見張りの緊張感は感じられない。

監視塔もこちら側は無警戒だ。

これなら大丈夫だろうと、リーンさんに手で合図を送って屋根の上に静かに降り立つ。

建物内部の魔力反応を確認すると、大量の魔石から発せられる魔力が確認できた。


「(ビンゴ)」


そしてリーンさんが防音結界を張りつつ剣を取り出して屋根に穴を開けて中へと侵入した。

念のため、中に警備やトラップが無いかチェック。うん、大丈夫なようだ。

倉庫になっていた建物には木箱が大量に積まれ、その1つを開けると予想通り魔法の杖が入っていた。

ここにあるだけでざっと1000本はあるだろう。


「じゃあ、リーンさん。手筈通りに」

「ええ」


僕達は手分けしてその内の幾つかに手を加えては木箱に戻す作業を繰り返した。

全部じゃないのは、そこまでの時間が無いのと、後で調べられた時に発見を遅らせる為だ。

念のため積み上げられた一番上には加工していない箱を置いておく。

そうして僕達は夜が明ける前に、再び天井の穴から抜け出し(もちろん穴は分からないように塞いでから)、砦から離脱した。



基本的に本作における人族至上主義の国は悪役です。

急激な軍国化を進めている為に兵の錬度は低く数だけ集めている状態で、近隣への略奪が横行しています。

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