43-7 帰ってきました
いつもありがとうございます。
気が付けばブックマークが着々と増えている不思議。
その後も旅路は順調に過ぎて行った。うん。旅路は。
お陰でもうすぐ学園都市が見える所まで来ていた。
「……馬車や人の往来が多い気がする。何かあったのかな」
今朝から数えて6回馬車とすれ違ったし、冒険者と思われる人にも7組会った。
東や西なら向かう先に大都市があるから分かるんだけど、こっち側は小さな村や町があるくらいのはず。
特に慌てた風ではなかったけど、確実に数が増えてるだろう。
「ん?ああ。恐らく単純にこっち移り住んできてる人が多いんだろう。この子達と同じように」
そう言ってお父さんは荷台に視線を送った。
つまり僕たちが関わったこの子達以外にも、人族じゃないからという理由で住んでた町を追い出されたり、避難してきた人が大量に居るってことなんだ。
「悪目立ちしなくて良い反面、人が急に増えるとどうしても治安が悪化するからな。
少し注意してやらないといけないかもしれない」
「うん、そうだね。警邏の人達にもお願いしておくよ」
そうこうしている間にマリアッジ学園都市に到着した。
門を潜ると、確かに以前より多くの人が道を行き来しているのが見える。
そのせいか、以前の面影があまり無い気がするな。
「ところで、行く当てはあるのかい?」
「町の南西側が比較的土地が空いてたと思うからそっちに」
「わかった」
僕の答えに頷いたお父さんは馬車を走らせていくと、町の南西角に空地を見つけた。
「みんな、到着したから降りて良いよ」
「「はーい」」
「降りてもどこか行かずに馬車のそばに居てね」
荷台に声を掛けつつ、お父さんと一緒に馬車を下りて空地の前に来た。
「ソージュの事だから持ってきてるよな」
「うん。お父さんには地ならしをお願いしてもいい?」
「ああ、任せておきなさい。『グランドインパクト』!」
お父さんが空地に魔法を放つと、地面が波打ち、たちまち整地されていった。
本当はこれ、攻撃魔法なんだけどね。敵の足元に放って転倒を誘発したり地割れを起こしたり。
まぁ要は魔法も使い道次第って事なんだろう。
それが終わった所で、僕はアイテム袋から向こうで回収した物を置いた。
ズズンッ。
「へ?」
しまった。ちょっと乱暴に置きすぎたかな。棚とか倒れて無ければいいけど。
とちょっと思いつつ、変な声が聞こえてきた後ろを振り向くと、子供たちと一緒にリーンさんが口を開けてびっくりしていた。
「そ、そーくん。さっきまでここ空地だったよね」
「そうですね」
「教会、立っちゃったよ?というか、前の街にあった教会と見た目そっくりだけど」
「はい。残しておくのも勿体なかったので、持ってきました。この方が皆も住み心地良いでしょうし」
「持ってきたって、ねえ」
呆れてそれ以上言葉にならないみたいだ。
確かに以前の僕だったら一部屋の荷物が精々だったから、ここまでアイテム袋を拡張出来たのは凄い事だとおもうけど。
それより今は後ろで待ってる子供たちとシスターだね。
「シスター。見て頂いて分かる通り、向こうの教会そのままです。
この後、移転の手続きとか諸々ありますけど、ひとまずはこれで以前のように暮らせると思います」
「まぁ、まるで夢でも見ている気分です。
ほんと、何から何までありがとうございます。
さ、みんなも皆さんもお兄さんたちにお礼を言いましょうね」
「「はーい。お兄さんお姉さん。どうもありがとう」」
「はい、どういたしまして」
お礼を言った子供たちは、シスターの先導で教会の中へと入って行った。
お父さん達も落ち着くまでは面倒を見てくれるらしいので後はお願いした。
ついでに、お父さんたちが連れてきたあの人も、ここで一緒に暮らすそうだ。
いつの間にかシスターと仲良さそうにしてるし、意外と社交性が高かったのかもしれない。
「さて、じゃあ僕たちは学園に帰ろうか」
「うん」
「そうだな。あと途中冒険者ギルドなどにも顔を出すべきだろう」
「そうでございますね。それと、商店街の方々にもご挨拶に伺うべきかと」
ケイとミラさんの意見を取り入れて、今までお世話になって来たところに、急に2か月以上も空けてしまったお詫びや挨拶をしながら学園へと戻る事にした。
行く先々で急に居なくなった僕を心配してくれたのを見てやっと『帰って来たんだな』っていう実感が沸いたのだった。
結局寮に戻ってくる頃には夜になってしまったので、そのまま自分の部屋に戻って、キーヌにただいまの挨拶をしてベッドで眠りに就いた。
……あれ?誰か忘れているような……
ひとまずこれにて本章は終わって、次の最終章へと進みます。
(終われるかな。少なくとも当初考えていたルートから大きく変化してるけど)




