43-6 寄り道
いつもありがとうございます。
気が付けば今回ものんびり回です。
前回、他に掲載している作品を紹介したら一気に千近くのアクセスがありました。
皆さん、ありがとうございます。
検問を越えた翌日の昼前。
このまま行くと夜に学園に着きそうだったのと、子供達が数人、馬車のゆれで気分を悪くしてしまったので寄り道をする事にした。
あと、ここまで離れれば追手ももう来ないだろうというのが大人たちの共通の見解だ。
そんな訳で、僕達は街道を少し逸れて近くの湖へと来ていた。
「みなさん。遠くに行っては行けませんよ。
お昼には集合して、ご飯を食べて出発しますからね~」
「「はーい」」
子供達は元気良く返事をすると、我先にと湖に走り込んで行った。
今は9月末で少しずつ気温が下がってきているけど、今日はまだ暖かいから丁度良いだろう。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、早く~~」
「ああ、すぐ行くから引っ張るな」
「あらあら。ふふふっ」
ケイもミラさんも子供達に大人気だな。
シスターは馬車の木陰で数人の子供達とのんびりしている。
お父さん達は周囲の警戒出て行ったし、僕はお昼の準備でもしてるかな。
遊びに出かけた先で子供達に人気の食事って言うと、やっぱり|バーベキュー(BBQ)だろう。
僕はアイテム袋から簡易BBQセットを取り出した後、幾つかの食材を出して串に刺す大きさへとカットしていった。
「ほぅ、なかなか見事な手際ですな」
「え?」
声の方を振り向けば、お父さんが連れて来た男性が立っていた。
「いや、失礼。冒険者というのは料理など食えれば良い、という輩が多いと聞いていましたからな」
「そうですね。最近でこそアイテム袋のお陰で大量の食材を持ち運べるようになりましたけど、昔はそれこそ、日持ちして嵩張らないことが求められたでしょうからね。
ほんと最近のアイテム袋の性能には感謝してもしたりないですね」
「ほっほっほ。そう言ってもらえると頑張って研究した甲斐があったというものですな」
「え、じゃあお爺さんがこのアイテム袋も改良されたんですか?」
「さよう。もう20年も前になりますがね。
当時ようやくアイテム袋の作成方法が確立してきたころで、まだまだ時間遅延の機能すらありませんでしたからな。
どうにかして容量の拡張と機能の改善が出来ないものかと試行錯誤しました」
「そうだったんですね。ありがとうございます」
そっか。魔道具の研究者だって言ってたけど、まさかアイテム袋の研究にまで関わってる凄い人だったんだ。
と、その目が急に真剣になったかと思うと僕の腕に固定されていた。
「時に少年。その、腕に付けている魔道具を見せてもらえないかね」
「これですか?はい、どうぞ」
僕は左腕に付けていた負荷魔道具を外して渡してあげた。
受け取ったお爺さんは上から下からひっくり返しながら眺めては「ふむ」とか「ほほぉ」とか言いながら嬉しそうな顔をしている。
「あの、もしかしてその魔道具もお爺さんが作ったんですか?」
「ん?ああ。プロトタイプは、だね。
これは私が作ったものからかなり改良が加えられている。
まさか装着者の能力に応じて負荷を調整する機能を実現するとは恐れ入った」
見ただけでそこまで分かるなんて凄いな。
「ただこれを苦も無く身につけてる少年も相当な実力の持ち主と見た。
今この瞬間も大岩が圧し掛かる程の負荷がかかっているだろうに」
「ええまぁ」
返してくれた魔道具を付けつつ、曖昧に頷いておく。
今、両手両足につけてる分で、恐らく数十トンの負荷がかかっているから、岩にするとどれ位の大きさになるんだろう。
「じー」
ん?気付けば少年が食材をじっと見ていた。
「どうした?お腹すいた?」
「うん!これ、まだ焼かないの?」
「そうだね。そろそろ焼き始めようか。じゃあ、折角だから焼くの手伝ってもらってもいいかな?」
「もちろん!ねぇ、そっちのおじいちゃんも一緒にやろ!」
「はっはっは。よし、任せなさい」
そう言って腕まくりをする少年とお爺さん。
お爺さんはきっと長いこと子供と触れ合うことなんて無かっただろうから、嬉しそうだ。
僕が丁度良いサイズに切った具材を見てどれを使うか吟味する二人。
最初こそ串に具材を刺すのに手間取ったけど、慣れたら早い。
出来た串を焼き台にセットして焼き始めれば、匂いに釣られて他の子供達もどんどん集まってきて、料理を手伝ってくれた。
そうして無事にお昼も堪能して移動を再開した。
このまま行けば明日の午前中には学園都市に着けるだろう。
多分ここを逃すと魔道具職人のお爺さんとの絡みが無さそうだったので、寄り道してみました。
この人の閑話も入れたいなと思いつつ、若干暗めな話になりそうなので敬遠してます。




