43-5 国外脱出
いつもありがとうございます。
ここ数日、久しぶりに別の連載を更新していました。
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馬車が走り出してから1時間。
初めての馬車プラス旅行ということで、わいわいきゃーきゃーと賑やかだった馬車の中も少しだけ落ち着いてきた。
ちなみに馬車の乗り合わせはというと。
前の馬車の御者台に僕とお父さんが乗り、荷台にケイが乗り込んでいる。
後ろの馬車の御者台にはリーンさんとお母さんが乗って、荷台にシスターとミラさんが乗っている。
荷台にケイとミラさんが乗っているのは、外見的な特徴もあって僕達よりも子供達の受けがいいからだ。
ちらっと中を覗くと、ケイが引っ張りまわされているのが見える。後で労ってあげないといけないな。
と、荷台の端にはしゃぐ子供達を眩しそうに見ている壮年の人が見えた。
「そういえば、あのお父さん達が連れて来た人ってなんなの?」
「ん?ああ、そうだな。街からも離れたし、もう大丈夫か」
周囲を警戒するお父さん。
お父さん程の能力者が本気を出せば1キロ先の蟻の挙動さえ認識できるらしい。本当かどうかは知らないけど。
そのお父さんがここまで慎重になる案件なんだ。
「その雰囲気だと、また危険なことに首を突っ込んだんだね」
「まあね。端的に結論だけを言うと、とある国の研究機関から誘拐してきたんだ」
「……監禁でもされてたの?」
お父さん達が悪事に手を染めることはないと確信しているので、誘拐するにしても本人の同意がある時とか、見方を変えれば救出してきたって事だと思った。
案の定、僕の質問にお父さんは笑顔で頷いた。
「彼は魔道具研究の第一人者でね。
アイテム袋の普及なんかも彼の手柄なんだよ。
その技術力に目を向けた、とある国が、彼に魔道兵器を作るように依頼したんだ。
それを頑なに断った為に監禁され強制的に研究をさせられていたようだ」
「魔道兵器?」
「簡単に言うと魔石を利用した武器だね。
一般的な魔法の杖は使用者の魔力を安定させたり増幅させたりする効果があるけど、
魔石を利用することによって杖に魔力を流すだけで強力な魔法を放てるようになるそうだ」
うわぁ。なんかつい最近、そんなのにお目にかかった気がする。
僕は予備にアイテム袋に入れておいた1本を取り出した。
「その魔法の杖ってこれ?」
「ん?ああ、そうだな。なぜこれをソージュが持っているんだい?」
「それはまぁ、つい先日、それを持った人達に襲われたから、だね。
撃退した時にほとんどは魔力切れで使えなくなったけど、数本残った内の1本だよ」
「ちょっと見せてくれるか?
……ふむ。出来は良くないが、使い捨てる分には十分実用化されているのか。まずいな」
「僕が見ただけでも、国のトップでも無い人が100本位使ってたから、どこかに製造工場があるのかも」
「ああ。その可能性が高いだろうな。
っと、やってくれたな」
お父さんが視線を前に向けた。
僕らが向かう先、まだ地平線に何とか見えるくらいだけど、バリケードが構築されていた。
迂回するという手も無くはないけど、馬車が通れる道となるとかなり遠回りになってしまう。
「どうするの?」
「気にせず真っ直ぐ進もう」
「あー、うん。僕ちょっと後ろに伝えてくるね」
まずは荷台に向けて声を掛けた。
「みんな。この後少し揺れるから座ってて」
「「はーい」」
みんなの元気な返事を聞いてから、僕は後ろの馬車に飛び移った。
「お母さん、リーンさん。前に検問があるけど、真っ直ぐ進むって」
「分かったわ。それにしてもそんなものがあったら折角の景観が台無しね」
「そ、そうだね。じゃあ、僕は前の馬車に戻るよ」
「ええ、連絡ありがとう」
そうして前の馬車に戻るころには検問は良く見える距離まで近づいてきていた。
「そこの馬車、止まれ!!」
「~~♪」
検問に立っている兵士達が僕達の馬車を見て槍を向けながら声を掛けてきた。
でもお父さんは取り合おうとせず鼻歌まで歌ってる。
それにイラついたのか更に声を荒げてきた。
「止まれと言っている!!そのまま壁にぶつかる気か!?」
「そうとも」
「なっ!?うおっ」
速度を緩めることなく向かってきた馬車に、あわてて飛び退く兵士達。
僕らの馬車はそんな彼らを横目にバリケードへと突撃した。
ドゴォッ
「なんだと。バリケードが粉砕された!?
あの馬車は一体何で出来ているんだ」
いや、そもそも馬車全体がお父さんの魔法で守られてるし、うちの馬車をひく馬って軍馬よりも数段パワフルだから止めたいなら要塞を用意しないと。
ちなみにお父さんの「真っ直ぐ」は最初から「気にせず強行突破」の意味だったりする。
お母さんも当然そのことは分かっているので、そっちも粉砕されて出来た道を速度を落とすことなく通り抜けて来た。
って、あれ?お母さんが御者台に居ない?
ズドドドドォン!!
「「ぐわぁぁあ」」
瞬間、轟音と爆発と悲鳴が上がると同時にバリケードが完全に崩壊した。
それを見たお父さんはため息を1つ。
「メイラも身重なんだからもう少し抑えて欲しいね」
「それで済ませちゃって良いんだ」
「それに、ソージュの彼女も一枚噛んでるんじゃないか?」
「え、あー確かにそうかも」
崩壊跡を見れば遠くの場所は凍り付いていた。
お母さんは魔法は使えないから、あれは間違いなくリーンさんだろうな。
ふたりとも気が合うのかもしれない。
そうかぁ。将来リーンさんもお母さんみたいになるのかも。
って。あ、あれ?背中に汗が……。お父さんも苦笑いしてるし……。
ソージュの両親は今でも現役の冒険者兼行商人です。
身重のメイラさんが活発に動いているのを見て分かるとおり、自重とかはどこかに吹き飛んでます。




