43-2 人族至上主義の街
いつもありがとうございます。
予想通りというか、当初考えていたルートとはまた違う分岐に流れました。
街道に出て2日目の朝。
僕達は中規模の街に辿り着いていた。
「ここは、位置から考えてヒューマニの街ですね」
「そーくん、来たことあるの?」
「はい、小さい頃に1、2回だけですけど。
両親と一緒に通り抜けた記憶だけあります」
「通り抜けた?」
僕の表現に疑問符を浮かべるリーンさん。
勘の良いケイとミラさんは既に色々と感じ取っているらしく、油断なく周囲に視線を送っている。
「ちっ、また性懲りもなく」
「犬畜生が」
ボソボソとそこかしこから聞こえてくる声に僕らは顔をしかめた。
どうやら昔と変わっていないらしい。
以前来た時も排他的というか、街全体が陰気な感じだったのを思い出した。
今では更に人族至上主義の影響も出ているみたいだ。
「宿で1泊して行こうかと思ったけど、このまま通り抜けようか」
「……そうね」
「ああ。……!ソージュ、寄り道をするぞ」
「あ、うん」
僕の返事を待たずに、ケイが一瞬で路地裏へと入っていった。
それを見て僕たちも慌てて追いかける。
向った先には地面にうずくまる小さな子供が2人と、それを取り囲む3人の大人が居た。
「フッ」
トスットスットスッ!
僕たちが辿り着く頃には、音もなく走り寄ったケイが大人たちの首筋に一撃を入れて昏倒させている所だった。
その動きはまるで凄腕の暗殺者のようで。いや、違うな。どちらかというと獲物を狩るハンターか。
まぁ今回に限って言えば前者なのかも。
っと、そんな事はどうでも良くて、今は子供たちの方だ。
見れば既にミラさん達が助け起こして回復薬を飲ませてくれている。
「大丈夫そう?」
「ええ、外傷も酷くないですし、気を失っているだけのようですわ」
「この様子ならすぐに意識も取り戻すだろう」
「んっ」
言ってるそばから、ふたりとも起き出したみたいだ。
それを見てケイが膝を突いて目の高さを合わせるようにして声を掛けた。
「気が付いたか」
「あれ、えっと。あなた達は」
「安心しろ、見てのとおり俺たちは味方だ」
「あ……良かった」
この場合の味方っていうのは、つまり獣人だって言う事だ。
良く見なくても子供たちはふたりともねこっぽい耳をした獣人だった。
恐らくはそのせいで、そこに倒れている大人たちに迫害されていたのだろう。
「君たちの家はこの近くか?良かったら送って行くが」
「ありがとうございます。えっと、あ。この道を真っすぐ行って突き当りを左に行った所にある教会がそうです」
「そうか。なら一緒に行こう。
ミラ、そっちの子を頼む」
「はい。さぁ行きましょう」
「うん」
ケイとミラさんがそれぞれ子供の手を取って歩きだす。
リーンさんも続いて歩き出したところで、僕が付いて来ていないのに気が付いて振り返った。
「そーくん?」
「僕はここの後始末をしてから行きますので、先に行ってて下さい。
皆が教会に着くまでには追いつきますから」
「あ、うん。ほどほどにね」
一瞬足元の男達に視線を向けたけど、それ以上は何も言わずに行ってくれた。
さて、この街にはこの街のルールがあるんだろうけど、まずは彼らの身元次第かな。
僕が教会に辿り着いた時には、既にケイ達が先に着いてて、シスターと思われるお婆さんと話をしているところだった。
「改めてお礼を言わせてください。
あの子達を助けて頂き、本当にありがとうございました」
「いえ、俺たちは偶然通りかかっただけですから。
それよりも、この街は以前からこうなのですか?」
「そうですね。
元々治安は良くない街ではありました。
でもここ最近は特に酷くなっています。
御覧の通り、ここに居るのは身寄りのない獣人や亜人と呼ばれる種族の子供ばかりですから」
その視線の先には、先ほど助けた獣人のふたりの他、ドワーフやエルフと言った大地人とは異なった特徴の子供たちが合計20人程居た。
「以前なら日中であれば冷たい視線を向けられるだけでしたが、今はもう通りを歩いているだけで謂れのない暴力を振るわれる始末。
出来れば別の差別のない街に移りたい所ではありますが、どこに行けば良いかも分からず、また年老いた私と子供たちが移動に耐えられるかという問題もあります」
「そうですね。
行く当てなら幾つかありますが、俺たちが全員を連れて行くのは難しい」
本来なら馬車を借りれば良いのだろうけど、この街で僕たちにまともな馬車を貸したり売ったりしてくれる人は居ないかもしれない。
居ても相当ふっかけられることは目に見えている。
「まぁまぁ、暗い話はこれくらいにして。もし宜しければ今晩は泊まって行ってください。大したお持て成しも出来ませんが」
そう言ってシスターは小さく微笑むのだった。
そんな訳で孤児院ルートになりました。
ちなみに嗅覚と聴覚は獣人族のケイとミラさんの方がソージュ達よりも1枚上手です。




