41-2 襲撃
いつもありがとうございます。
そこから僕達は5割り増しのペースで採集を行い、ではなく、移動を行い、今は例の火山の麓にたどり着いていた。
「火山の影響もあって、この先は植物は少なそうですね」
「うん。というか、ちょっと採り過ぎじゃないかな」
「ちょーっと珍しい種類の薬草が多くありましたから」
「そーくんはあれらが何に使えるか知ってるの?」
「半分くらいは。残りもジルが知ってるので大丈夫ですよ」
両親と行商の旅をしている最中、解毒作用のあるものも逆に猛毒のあるものなど、見つかる度に説明を受け、扱い方をみっちり扱かれた。モノによっては触るだけで危険な植物もあるしね。
っと、それはともかく。
山を見上げれば、所々で蒸気が上がっているのが見える。
あのどこかに温泉の町もあると思うんだけど、さて……
「!?そーくん、あれ!」
リーンさんが指した先には湯煙とは明らかに異なる黒煙が立ち上っていた。
「行こう!」
「うん!」
途中走り去る100騎ほどの騎馬隊を見かけたけど、無視して先を急ぐ。
僕らが向かった先には、高さ2メートル程の石造りの壁に囲まれた町が広がっていて、その中から黒煙を上げていた。
「止まれ!!」
町に入る手前で制止の声が掛かった。
声の主は門の横の物見櫓からか。
「立ち去ったと思ったのに、また来たのか!
何度でも言うが我々はお前達の奴隷になる気は無い。
これ以上狼藉を働くなら生きて山を下りれなくなるぞ」
「ちょ、ちょっと待ってください」
これは思いっきり誤解されてるな。
状況から察するに、さっき山を駆け下りていった騎馬隊がどういう理由か、この町を襲撃していったのだろう。
まずは誤解を解かないと、今にも矢を射掛けられそうだ。
「僕達は立ち上る黒煙を見て、ただ事ではないと思い駆けつけた所です。
現状を顧みるに、火球か何かの魔法を町に放たれたのでしょう。
さっきの今で、すぐに僕らを信用しろとは言いません。
この町に薬師はいらっしゃいますか?
僕らは中級以上の回復薬になる薬草や、痛み止めのオーキューの実や、化膿止めに効くセイロの実を多く持ってきています。
それらだけでも援助させて頂けないでしょうか」
「…………しばし待たれよ」
恐らく上役か薬師に確認に言ったのだろう。
「そーくん」
「大丈夫です。まぁ、厄介事に首を突っ込んだのは間違い無さそうですけどね」
5分ほど経った所で、門が開いて10人程の武装した人?に囲まれた壮年が姿を見せた。
あ、人?っていうのは全員が全員、動物寄りの姿の狸と思われる獣人だからだ。
きっと裸で4足歩行してたら大きい狸と間違えてしまうだろう。
「君達が薬草を分けてくれるという人達か?」
「はい。僕はソージュ、彼女はリーンといいます。
まずはこちらを見ていただけますか?」
挨拶をしながらアイテム袋から薬草の詰まった袋を取り出して、護衛の人に渡す。
渡された人は袋を開いて中のにおいを嗅いだ後、薬師の人に渡した。
「ふむ、ふむ。これは……。
たしかソージュ君と言ったね。君は調薬の知識もあるのだろう?」
「あ、はい」
「よろしい。なら急ぎ一緒に来てくれ」
どうやら認めてもらえたみたいだ。
薬師の人の後を追って僕らも町の中に入ると、町は酷い有様だった。
幾つもの家が倒壊し、そこかしこから子供の泣き声が聞こえてくる。
「こっちだ。早く来い」
急ぎ向かった先には何人もの血を流した人たちが横たわっていて、まさに戦争跡といった様相だ。
「見ての通り、薬も人手も足りておらん。
君は回復薬の調合を急いでくれ」
「はい!」
「そーくん、私はどうしよう」
「リーンさんは消火作業と瓦礫の下敷きになった人の救助に向かってください」
「分かったわ」
煙の濃い方に飛んでいくリーンさんを横目に、僕は薬の調合を開始した。
ようやく本章も本格稼動です。
ちなみに補足するまでもないですが、衛兵の方が薬草のにおいを嗅いだのは毒物のチェックで、薬師の人は薬草の状態が良好なこと、毒草が混じっていないことなどからソージュのことを信用してます。
また小さな町では薬師や医者は町長以上に尊敬される存在です。




