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Eランクの僕とSランクの彼女  作者: たてみん
第4章:それぞれのルーツ
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40-2 里に入る前に

よろしくお願いします。


壁伝いに歩くこと1時間。

僕達はようやく時忘れの里の入口へとたどり着いた。

その入口は真っ赤に染まった2本の木の柱を太い縄で繋いだような珍しい構造だ。

あと、柱の手前に立て札が1つ。


『これより先、時忘れの里なり。心得の無い者は踏み入るべからず』


そう書かれていた。

きっと親切な先人が書き残していってくれたものだろう。


「さてと、リーンさん。今日はここで夜営しましょうか」

「え、まだ昼過ぎだよ。中に入らないの?」

「はい。この先ゆっくり休める保障はないですから」

「あー確かに。一筋縄ではいかなさそうだね」


言いながら入口を覗き込むリーンさん。

だけど残念ながら入口の奥は外からでは真っ暗で見えない。

でも入口に向かって右側は真冬の豪雪、左側は真夏の太陽と来れば、その異常さはよく分かるというもの。


それから僕達は近くの草原や林で食べられる野草を採取したり、魔物を狩ったりして過ごした。

そして夜。


「確かそーくんは以前来たことがあるんだよね。

その時の話を聞いてもいい?」

「はい。えっと、そうですね。

あれは今からもう4,5年前です」


当時は両親と一緒に世界中を行商で巡っていた。

お父さん曰く、小さい内に多くのものに触れることで情緒豊かになるし、臨機応変に問題に対処できる力を身につけて欲しいと言っていた。

その旅の行き先の1つが、ここ。時忘れの里だ。

この入口を抜けた先は枝分かれした細い通路と大小さまざまな空間から出来ていて、外との境界と違って明確な壁は存在しない。

だから1歩足を踏み外すと、そこは全く違う時間の流れの場所だったりする。

唯一、通路だけが外と全く同じ時間の流れをしているらしい。

最初、村まで行く間は馬車に乗っていたから気が付かなかったけど、本来徒歩で歩く際にはお互いをロープで結ぶなどしてはぐれないようにしないと、あっという間に迷子になるから要注意だ。

かく言う僕も、村にたどり着いた後、ふらっと村の外に遊びに出て、別の時間軸の場所に行ってしまった。

さらに迷子になった結果、両親に再会するまで約1年掛かってしまった。


「え、でも両親と一緒に村まで行ってたんだよね。

すぐ探しに来てくれなかったの?」

「もちろんお父さん達は僕が居ないことに気が付いてすぐに探してくれたらしいです。

ただ、僕が迷い込んだ先が物凄く時間の流れが速い場所だったみたいなんです」


両親からしたら、僕が見つかったのは居なくなった日の夕方。迷子になったのが昼前だから、半日しか経っていないことになる。

村の人が言うには、落とし穴のように突然遠く離れた空間に飛ばされる現象があるそうで、それでかなり奥地に飛ばされたんじゃないかって話だった。

基本的に奥に行けば行くほど、時間のずれも大きくなるらしい。

朝に迷子になった少年が、夕方に老人になって帰ってきたこともあるらしいので、まだましだったと言ってもいいのかもしれない。


「余談ですけど、それを聞いた両親が僕の年齢を実際より1年上乗せするようになりました」

「そうなんだ」

「だからリーンさんも気をつけてください。1歩間違えると明日にはお婆ちゃんになっちゃう、何てこともありますから」

「それは絶対に嫌ね。なにか予防策みたいなのは無いの?」

「ありますよ。んーそうですね。ヒントは昼間飛んできた鳥です」

「鳥……あの物凄く速かったあれよね。

そーくんはあの鳥を見て、壁の向こうの時間のずれを予測してたから……。

なら鳥じゃなくても、石とかでも投げたら物凄い速度で飛んでいくとか?」

「はい。リーンさんなら氷弾を飛ばせば良いと思いますよ。

周囲を囲むように飛ばしておけばなお安全ですね。

そうして先に進む前にそこの時間の速度を常に計る様にしておけば極端に時間の違う場所には踏み込まずに済みます」


村に住んでる人たちは、その時間差を利用して、より遅い時間軸に居る獲物を弓矢で狩っていたのを覚えている。

ただ、逆に向こうから自分達の時間軸に飛び出してきたら急加速したように見えるので、慣れてないと危険だって言ってた。


そうしてここならではの話を紹介しながら夜はふけていった。


ソージュの年齢を数えたら1年以上計算が合わないという誤算を修正する為の回ではありません。きっと。

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