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Eランクの僕とSランクの彼女  作者: たてみん
第4章:それぞれのルーツ
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40-1 時忘れの里へ

いつもありがとうございます。

1日2更新してた過去の自分が凄いことしてたんだと改めて感じてます。

ジバンリン暦52年9月22日


商会での話の後、僕達は1日だけ観光をしてから、エリーさん(お婆ちゃんって呼ぶと拗ねるんだよね)の向かったらしい時忘れの村に向かうことにした。

ただ時忘れの村の話をした時に皆が微妙な表情をしていたのをリーンさんは気になっていたようだ。


「そーくん。エルマさん達がちょっと困った顔をしてたのが気になってるんだけど、その時忘れの村ってそんなに危険な場所なの?」

「うーん、危険というより、大変と言った方が良いですね」

「大変?どんな風に?」

「分かりやすいところで言うと、その名の通り時間の流れがおかしいんです。

とある場所では数倍の速さで時間が流れるし、そうかと思えば1つ隣のエリアでは数分の1の速さになったりするんです」


1年ぶりに村に行ったら、知り合った子供が老人になっていた、何てこともある。

ずっと中で暮らす分には問題はないんだけど、出入りを繰り返すと、自分だけ時間に取り残される危険がある。

だから、常に自分の時間がどうなっているのか知る術が無い人は行かないことをお勧めする。


「私たちは行っても大丈夫なの?」

「短時間なら、問題ないでしょう。

一応時間の流れの速さを確認する魔道具は持ってきているので、極端に速度の違う場所には近づかないようにしましょう」

「分かったわ。でも、なんでそーくんのお婆ちゃんはそんな所に向かったんだろうね」


それは直接本人に聞かないと分からないかな。

エリーさんはあの巨大な商会をほとんど1から立ち上げた凄い人だから、時々僕達じゃ想像もつかない事を始めるんだ。

しかも家族の誰よりも行動が早いものだから、気が付いたときには二歩も三歩も先に行ってるなんて良くあることらしい。

お父さんも実家に居た頃は、そんな自由なエリーさんに振り回されてばかりだったって言ってたっけ。

そんなことを考えていた時、リーンさんの驚いた声が聞こえた。


「そーくん、そーくん。雪が降ってるよ!!」

「雪?」

「そう雪。ほら、あそこ」


リーンさんが指差した先。

そこには確かに空から大雪が凄い勢いで降っていた。


「まだ9月だし、全然寒くないのに不思議だね~」

「それだけじゃないですよ。もっと近づくとはっきり分かりますけど、ある場所を境に向こう側にしか降ってないはずです」

「あ、言われてみれば。あんなに降ってるのに全然こっちに雪が飛んでこないのも変だね」


近づけばその異常性が顕著に分かる。

地面に雪が積もっているけれど、その断面が見えるのだ。

リーンさんがその境目に恐る恐る手を伸ばすと、ピトッと止まった。

まるでそこに見えない壁があるかのように。


「そーくん。さっきからあまり驚いて無いみたいだけど、もしかしてこれってどうなってるのか知ってるの?」

「えっと、原理は分からないけど、これが時忘れの里との境界です。

この見えない壁は普通にはどうやっても越えられないみたいです。

地上に出来たダンジョンだ、なんていう人も居るみたいですけど、本当の所は誰も分かっていません」

「そうなんだ。それで、これはどうやって入ればいいの?」

「この壁に沿ってもう少し行った所に入口がありますよ」


と、その時。

見えない壁の向こう側から高速で何かが飛んできた。


「キィィィーー」

「きゃっ」


白い巨大な鳥、雪コンドルだ。

壁に手を当てていたリーンさんが驚いて飛び退いたけど、幸い鳥は壁に阻まれてこちらには来ていない。

そして壁に体当たりをした鳥はこちらを一瞥した後、何事もなかったようにどこかへ瞬く間に飛んでいった。


「もしかして、壁の向こう側って強力な魔物の巣窟だったりするのかな」

「あー、多分違うと思いますよ。今のは雪コンドルっていうただの大型の鳥ですし」

「鳥?魔鳥じゃなくってことだよね。それなのにあんなに高速で飛べるの?」

「そう見えただけですよ、きっと。

どうやら、この壁の向こうはこちらよりも時間の流れが速いみたいですね」


今の感じだと5倍くらいかな。

昔来た時はこのあたりは2倍位だったから、もしかしたら法則が色々変わっているのかも知れないな。


時忘れの里はその地域を指して、時忘れの村はその中にある人の住んでいる場所を指します。

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